夢 第一夜
「待つでがんす〜」
必死に逃げる……私の後ろから、男が追いかけてくる。
相手は、ただの男ではない……全身は指の先まで毛むくじゃらで、その爪は鋭利に尖っており、耳まで裂けた口に恐ろしいほどに尖った牙を持っている狼男だった。
しかし、脅威はそれだけではなかった。
「待つざますよ」
追手は一人だけではなかった。
もう一人の男は空を飛んでいた。
漆黒のマントをはためかせながら私の目の前に降り立った。
「さぁ!もうあきらめるざますよ!」
はさみ込まれてしまった!
私は横道に入り、その角を曲がると行き止まりだった。
「そんなっー!、」
その時、横の壁が音を立てて崩れ、その向こうから屈強な男が現れた。
「ふんがー」
もう逃げ道がない!どうしたらいいのだろう……
『えっ?これって怪物く……んな訳ないか〜』
突然、背後から声がした……
振り返ると白いワンピースを着た白髪の女の子がそこにいた
(あれ?この子誰だっけ?)
『何?あなたこんなのが怖いの?』
「ふ、ふんがー」
少女はそう言って、壁から現れたフランケン男をペチペチと叩いた。
凄く勇気がある子だわ!!
しかし……おかしいなぁ…いつもだとここでモンスタープリンスが登場するはずなのに。
狼男もドラキュラも戸惑っているようだ
「あなたは誰?これって私の夢でしょ?」
『えっ?私の事が見えてるの?』
少女に話しかけると少女は驚いたようにこちらに振り返った。
「普通に見えてるけど……?こんな展開は初めてだわ…」
「こら〜お前達!!俺の出番が台無しじゃないか〜!」
「坊ちゃま!暴れないでくださいでがんす」
自分の登場を遮られたモンスタープリンスが癇癪を起こしたようだ……
周囲の景色が歪み崩壊を始めた…目覚める前触れがある
周囲がまばゆい光に包まれた
『あなたの夢、面白かったわ』
耳元で少女の声が聞こえた。
「ふみゃ?!」
律子はベッドからずり落ちた。
なんだろう?なんだか夢を見ていた様な気がするが……夢の内容は今ひとつ思い出せないが……白い少女と会ったことだけが記憶に残っていた。