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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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閑話 資料室の悪魔



 シオリスの騒動から数日…シオリスは全ての魔力を使い切り紫音の中から居なくなった……たぶん

あの後,アイリスからも説明を受けてオルタが犯人だと教えられた。

その時の私には一切の記憶がなかった……カイルを問い詰めても『感謝された……それだけだ』としか答えなかった。

感謝?全裸で?あんなに密着して?……ううううううううう〜!!!!

この件は忘れる事にした。


 あれからアイリスも学園に復帰し、暫くはカイルと紫音が見守られる様な雰囲気が続いたが今は落ち着いている。

アイリスの中のマトリーシェは完全に彼女のスキルとなり表に出てくる事は無かった。

アイリス自身も魔素を安定して生成する段階には至っていないものの、以前のような命に関わる様な大事に至ることは当面回避された様だ……今は毎日をゆっくりと過ごしている……のだが今だにカイルが魔力補給をせがまれるのは何故だろう?


そんな普段の日常を取り戻しつつある日、紫音はイングリッドに職員室に呼び出された。


「前にサボったよな?今日から一週間、二人で準備室の掃除な」


 一瞬何の事か解らなかったが……以前、アイリスが体調を崩し、保健室に行った時の事を思い出した…

忘れてたのに……悪魔っ!

……あ、悪魔か……


 あれは私の意思ではなくアネモネ先生に拘束されていた為で……アネモネ先生も弁明してあげるとか言っといて……忘れているに違いない!などと文句を良いながらも準備室にちゃんと行く自分が憎めなかった……



  『イングリッドの準備室』



それは生徒達の間で囁かれるこんな噂がある。


―貴族の出身であるイングリッドは………片付けが出来ない。


―準備室に迷いこんだ者は……生きては戻れない。


―気に入った生徒はそこにコレクションされる……


……やけに現実味のある噂に嫌な汗をかいてしまった……

ごくりと息をのみ……そのドアを開けた………………………………………………そしてドアを閉じた。

前略…お母さん、今度こそ紫音は駄目かもしれません……世の中には見てはイケないモノが実在していました。


「……何やってんだよ…」


後ろにはカイルが居た……その表情からして寝耳に水だったのだろう…その気持は良く解る!


「そっか……アンタもここの掃除要員だったわね……」


確かイングリッドが言っていた。


『二人で準備室の掃除な』


「…力仕事…得意でしょ?」

「まぁ…お前よりは……な」


私はドアの横に移動し、両手で『お先にどうぞ』のポーズをとった。


「……じゃあ」


何も知らないカイルはそのままドアを開け……………閉じた。


「…無理」

「…私だって……」

「どうやったらこんな魔窟が……隣の宿直室はまともなのに……」

「何だ貴様達…まだ始めていなかったのか」


気が付くとイングリッドが腕組みしたままこちらを見ていた……


「……先生……無理です」

「…諦めるな!お前達ならきっと出来る!」

「…お前が片付けが出来ないだけだろうが!」

「……仕方ない…ではこうしよう……先日の魔法構成戦略分析のレポートは二人とも良く書けていたな……掃除してくれたら、S評価にしてやろう……勿論サボりの件も不問にしよう」

「!?」


二人は黙ったままお互いの顔を見た……S評価……だと?!

それはもうこの科目の単位は確実と言っても過言ではない……今後の学園生活における優位性は間違いない……


「……本当に…S評価をつけてくれるのか?」

「…完璧に掃除をしてくれるなら、約束しよう」

「……」


その言葉を聞いて二人は互いの顔を見合わせた………そして意を決してドアを開くのだった……







     2時間経過




そこには抜け殻のようになった二人の姿があった……


「お、だいぶ綺麗になったな…じゃあ続きはまた明日で」

「?!お前…明日もこれをしろと?!」


カイルが抗議の声を上げた……私では無理っぽいからここは彼を応援しよう。


「当然だ準備室全てが片付いて初めて掃除が完了したと言えるのだからな」

「ぐぐぐ…職権乱用だ…」


カイルの言葉にイングリットは彼の耳にそっと耳打ちした……紫音に聞こえないように。


(ねぇカイル……本当は私だってこんな事したくないの……でも紫音だけにさせるわけにはいかないでしょう?それに彼女が一人でこんな事やらされてるってクラスの男子が知ったら必ず何人かは手伝いたいって言うわよね……こんな可愛い娘と密室で二人っきりだなんて…何かあってもおかしくないでしょう?いえ、なければおかしいわ?おかしくなくなくない?その点貴方なら安心よね?私とかイリュとか……他にも沢山だもの、今更こんな青春イベントなんて嬉しくもないでしょ?話は変わるけど、私も色々忙しくて…例の事件の報告書に手を加えたり、校長への報告も毎回ごまかしたり早退、欠席、遅刻の改竄とか……ね?バレたら私どうしましょう?不安で準備室の片づけがなかなか出来なくて……)


「そもそも…罰を与えなくて良いのでは?」

「………」

「………ワカリマシタガンバリマス……」

「そうか!じゃあ明日もお願いね」


 カイルが言いくるめられたので逃げ場は無いと悟った……

その日は二人は無言で帰宅した………









  二日目


「勢いだ…勢いしかない」


 準備室の前でカイルが言った……勢いに任せる為か、アーガイルテイスト多めの黒髪に成っていた。

そして彼は声を張り上げて室内に突入した………

言うだけあって勢いで見る見る片付けていった……せめて足手まといにはならないようにと紫音も片付けに参戦した………


 昨日で慣れたのか、割とスムーズに片付き、準備室本来の姿が見え始めた……が、そこで思わぬ強敵が現れた……


「………!!!!!!!!」


 それを目にした紫音は金縛りの様に動けなくなっていた……彼女ににじり寄るその生物は女子の間では禁忌とされていた物だった……

その姿、その触手、その黒光り……女子は畏怖の念を込めてこう呼ぶ……『G』と!

しかし、この個体は、一般的に知られるものとは、かなり大きな姿をしている…


『どうやらこの汚部屋…いえお部屋に魔力溜まりが発生しているようですね…その影響で魔物化しかけているのではないでしょうか?』


 ニトロが丁寧にも解説をしてくれた…嬉しくない情報をありがとう。

その『G』が彼女目掛けて飛んで来たのだ!!!!


「いっ………いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 紫音の周囲が光の螺旋を描き魔眼が発動した……紫音は酷く混乱していた……勿論シロンとクロンも慌てていた……

この年頃の女子が『G』と遭遇して冷静で居られる筈も無い……この窮地を脱出すべく三人は一つの魔法を選択した。


『戦略的広域殲滅魔法『爆心地グラウンド・ゼロ


 瞬時に室内に魔方陣が展開し、中心となる高密度の暗黒球体が現れた……


「なにやっとんじゃああああああああああああああ!!!!!!」


異変に気付いたカイルが『解呪ディスペル』を行う……

校舎の外では魔力を感知した『ビット』が集結する……


外に逃れた紫音はドアを閉じ衝撃に備えたが一向に衝撃は起こらず変わりに鈍く小さな爆発音が響きドアの隙間から煙が立ち込めた……

やがてゆっくりとドアが開き昔テレビで見たコントのような姿のカイルが現れた………『解呪』が間に合った事と『ビット』の『解呪』もいくらか間に合った様だ。


「……お前…何て事を……」

「……だって……Gが……」


紫音のこれ以上の参加は不可能と判断しこの日はカイル一人でGとの戦いで幕を閉じた……


「たかが虫程度に禁呪を使うとは…」

「うるさいわね……アレを滅ぼすには最適だったのよ!」

「そんなわけあるか!」

「っ!!だって!!」

『そうよ!カイルちゃん!女の子にGの存在は許されないのよ!我々にとっての使徒と同じぐらい存在を許してはいけない存在なのよ!』


 突如ミカイルの声が紫音を擁護する……コイツは美人に弱いからな…


「そうなのか?!……いや,そんな訳ないだろ!」

「だってえええええ〜」

「せめてもう少し危険の無い魔法を選択するとか……いや,魔法を使用する自体が……」

「他にどうしろって言うのよ!怖いの!キモイの!嫌なの!」

「もっと危険の無い最適な魔法を……」

「……だって…私の魔眼じゃあ出来ないもの!」


 カイルはしまったと思った……今の言い方は、どうやらシオンの地雷を踏んでしまったらしい。

 

「私だってうんざりなの…魔眼なんて欲しくなかった……普通に生まれて普通に生活したかった!!」


 彼女の瞳に大粒の涙が滲んだ……


「……すまん……失言だった」

『……カイル…貴方にはデリカシーってものが足りないわね』

『紫音様大丈夫ですよ?今は私がサポートしますのでどんな魔法でも成功させてみせますよ……気の利かないきのこ男には弱りましたね』

『んん?派遣賢者が随分な良い様だわね?全く機能していないみたいだけど?雇用契約見直した方が良いんじゃない?』

『これはこれは…ポンコツ天使様…咄嗟の事で対処が遅れてしまい申し訳ありません…しかし今は最高の雇用主の所で仕事をしていますのでお気遣いなく』

『誰がポンコツですって?!』

「お前達…少し落ち着け……おかしいな…俺の依頼で送り出した筈なんだけど…」

『まさに飼い犬に手を噛まれるって奴ですね』

「お前が言うのかよ…」

「ふふっ…全く貴方達ってば……」


 そんなやりとりを見て、思わず紫音から笑いが溢れた。

こちらを意図を理解してフォローを入れた賢者に僅かに感謝をする……演技だよな?本心じゃ無いよな?


 そこにタイミング悪くイングリッドがやって来た。


「……なんか昨日より散らかってないか?」

「………色々あったんだよ」


 イングリッドの言葉に内心イラッときたが顔には出さずに答えた……事実言葉通り、散らかっただけだから……


「まぁいい…明日も頼むぞ」

「……いや……明日はもう…」

「カイル」


 最早戦意喪失の紫音とカイルはもう断ろうという結論に達していた……がイングリッドはそれを察してか、こう言い放った。


「先ほど校長から『先程…小火騒ぎがあった様だが?……』と連絡を受けた……勿論私はお前達の為に間違いだったと報告しておいた」

「ちょっと待て!情報早くないか…?いや何故隠蔽する?!そもそもここの掃除を俺達に…「カイル」……」


 イングリッドは昨日と同じ様にカイルにだけ聞こえる様に耳打ちする……


(私だってこんな事をさせて申し訳ないと思っている…まぁS評価の話も無かったことにして明日からは掃除もしなくていいかと思っているんだ……あぁしかしどうしよう?私はお前達はきっと掃除を完遂してくれると思い昨日この学園のマザーコンピュータにハッキングしてお前達のサボりの事実を改竄してしまったんだ……仕方ない今日、もう一度ハッキングして元に戻しておくとするか……しかし二日続けてのハッキングはばれやすいと聞くし……大丈夫だろうか?もしばれたら過去の改竄もばれてしまうかもしれないな……まぁお前はともかく紫音は良い子だから明日も掃除に来るだろう…しかし紫音が一人で掃除していると知ったらクラスの男共は放って置かないだろう……こんな可愛い娘と一週間も二人っきりだなんて…しかも今日みたいにGが現われでもしたら?颯爽と退治したらカッコいいと思うんだ……いや思うね絶対!それって何かのフラグだと思わない?フラグ以外にはありえなくなくなくない?その点貴方なら安心よね?私とかイリュとか……他にも沢山だもの、今更こんな恋愛フラグなんて嬉しくもないでしょ?話は変わるけど、私もこんな恋愛に憧れた時期もあったんだ……普通に恋愛して…やがて結ばれるなんて未来を想像し…『すんませんでした!明日もがんばります!』…おいおい何故土下座なんてしているのだ?私は君との関係に不満など無いと言うのに……まぁ明日も頑張りたいと言うなら私は喜んで応援しよう)


 それだけ言うとイングリッドは満足げに帰っていった……


「……あんたって……」

「何も言わないでくれ……」


二人ともそのまま無言で帰宅した……



   三日目


 どうにか昨日のボヤ騒ぎとGで散乱した室内は大した事無く簡単に片付ける事が出来た。

片付けも快調に進み窓際に辿り着いた……まだ室内には箱が山ほど積み上げられているが……


「…なんとかここまで片付いたか………後は…」


 ふと窓際の紫音に視線を向けると気持ち良さそうにうとうとしていた……天気良いもんな。


「…おい紫音」

「…………え?なに?」

「……今、寝てたな」

「……いや……別に寝てなんか……」

「全く…寝る暇なんかあったらさっさと片付けろよ…」


 正直この男のこの言葉には流石の紫音もカチンと来た。


「…大体あんた…夕べ遅くまで何やってたのよ…」

「…何って……」


 そう言われ昨夜を思い返してみる……帰宅した後は呼び出しがありイリュとマードック達と合流した。

昨晩は魔方陣の反応も少なく早めに切り上げて後はマードック達に任せた。

最近この掃除で疲れていたからイリュの『手当て』が出来ていなかったので『手当て』した……夜中まで。


「あ」

「……何」

「…いや…すまん」

「…なんで謝るのよ…」

「…なんとなく…」


 防音の魔法結界を張ったかどうかは自信が無い……この紫音を見れば張っていなかったのだと確信できた。

あぁ……そう言えば紫音は今朝から機嫌が悪かったな…体調も優れなかったのだろう……


「そうよ!寝不足よ!お隣の部屋がうるさいからですよ!このきのこ男!」

「ぬっ……そうか…それはすまなかった…いや…これは完全に俺の落ち度だ…申し訳ない……純情なお前には刺激が強すぎたか…キスもした事無い様なお子様には早すぎだな」

「む……馬鹿にしないでよね!キスの一つや二つなんてとっくに卒業してますから!」


 本当は子供の時のお礼の一つだけだが。


「は?お前が?いやいや…無理はやめとけやめとけ…初めてのキスは大事な人のために取っておけ」

「は?残念でした〜私のファーストキスは既に大事な人に差し上げたのよ!残念でしたー」

「残念?俺が?いやいや…なんで俺がお前のキスを欲しがってるみたいな認識なんだよ?言っておくが乙女では俺のキスは耐えられないぞ?」

「はぁ?どんだけ自意識過剰なのよ?…大体イリュもアイリスも過保護すぎるのよ…大したキスでもないのにきっと大袈裟に表現してるだけでしょ?」

「おまえ……ウブそうな見た目だが…まさか…いやそんな……」


 何か変なテンションでとんでもない事を口走っている気がするが……シロンもクロンも同様に黄色い悲鳴を上げて駆け回っているので既に冷静な判断できる状態ではない……

ニトロに関してはもふもふのぬいぐるみなので感情も何も読めないのだが……楽しんでる?


『そうかそうか……純情な生娘だからと遠慮していたが……これなら我慢しなくてもいいな』

「!!アーグ!おまっ」


 声が響いたかと思うと,一瞬でカイルが黒髪に変貌した……


「アーガイル……」

『名前を呼んで貰えるとは光栄だな…紫音……』


 近づいてくるアーガイルに思わず後退りする……


『では俺が大人のキスを教えてやろう』

「いいです,遠慮します」

『ちょっとアーガイル!貴方私の紫音ちゃんに何するのよ!!』

『ぐぐ…ミカイル!封印状態なのに邪魔を……!!』


 アーガイルの体から2種類の魔力が立ち上りその体を拘束した……カイルとミカイルだ。


『甘いぞお前達…これしきの拘束なんぞ……!!』


 アーガイルの魔力が二人の魔力を弾き飛ばした……


『くっ!このエロ魔人が!!』

『ははは!ご馳走を前にして逃げ出す腰抜けとは鍛え方が違うんだよ!』

『言ってる事はカッコいいけど……エロを前提にしている時点で締まらないわね』


 アーガイルが再び紫音に迫って来る……気が付けば紫音は壁際に追い詰められていた。

すり抜けようとしてその手を掴まれ彼の正面に引き戻された……身体ごと押し付けられ今にも触れてしまいそうな距離だ。


「近い近いっ!!……嫌…!」

『何だよ?今更だろ?』

「アンタはまだ信用出来ないわ…アンタとする位ならカイルの方がマシよ!」

『ほう…言ってくれるな…ではお望み通りに……』


 壁際に押さえつけられた状態でその姿がカイルへと変貌した。


「!!」

「っ!!」


 至近距離で見つめ合う状態の二人…互いの目に吸い込まれそうな感覚を覚えた。


「お前達掃除はどう……」


 突然ドアが開かれてイングリッドが入ってきた。


「「…………」」

「っと…いや…すまんな……ところで明日も掃除なだからな?」

「「……はい」」


 言い訳のしようの無い状態を見なかった事にしてくれた彼女の言葉に二人は大人しく従うしかなかった。












「なんだなんだ…やればできるじゃないか!」


 翌日、見違えるように綺麗になった準備室を見て、イングリットは満面の笑みを浮かべた。


「次からはちゃんと片付けてくださいね」

「うっ…わかった…善処する」


 紫音から感情の籠っていない視線を向けられて一瞬たじろいでしまった。


「ありがとう紫音大変だっただろう…まぁソファーに座れ…お茶でも飲むか?美味しいお菓子もあるぞ?」

「……いただきます」


 この娘は鋭く厳しいところがあるが、意外と甘いものに目がないからな……これで私の評価は安泰だろう。


「……とか思ってるんじゃないかな?」

「?!カイル!何を馬鹿なことを言っている?そそそそそんなわけあるか!!」


 すぐ隣で胡散臭いものを見るような目でカイルがこちらを見ている…怒っているな……やばっ…今夜にでもいっぱい甘えて許してもらおう❤︎


「しかし見事な手際だな…壁の汚れすら消えているじゃないか」

「……ま…まぁな」

「…ソウデスネ」


 なぜか2人の反応がぎこちない…大規模な魔力の反応は感知されなかったが……

カイルの事だ…おそらくあのかわええラプラスなる存在を使ったに違いない……これは掃除と言うよりもリフォームだ……部屋を丸ごと入れ替えたに違いない!私の記憶が確かならば……こんな所に椅子やソファーは無かった筈だ!


「さて、頑張った2人にはご褒美をあげなくてはな」

「S評価だろ?忘れるなよ?頼んだからな」

「それはもちろんだが……想像以上の出来栄えに追加で報酬を出してやろうと思ってな」

「なぜか面倒事の予感がするんだが……」

「来月の連休を利用して、『野外活動先』への下見を行うのでな……何人かの同行者を選定しようと思って他所だが………お前達2人を招待してやろう」

 「「……」」

「あれ?反応が薄いなぁ……何かこうもっと喜ぶところじゃない?」

「…それはただ単にお前の手伝いについて来いと言うだけだろう?」

「そんな事はないぞ?既に日程やスケジュールは組まれているからな……宿泊施設や滞在する街の視察と言う名の観光だ」

「…観光…」

「おっ?紫音は興味があるみたいだな?今年の候補地はは綺麗だぞ?空気もうまいし食べ物もおいしいし……こことは一風変わった楽しみが満載だ」

「おい!紫音目を覚ませ!これは罠だぞ!」

「失礼な…これは本来成績優秀者に送られる褒賞なのだぞ?」


 そう言って、イングリットが2枚のチケットを取り出し、目の前でフリフリと振ってみる…だめだ。紫音の視線が釘付けだ。


「…はぁ…それでその野外活動の行き先はどこなんだ……」

 

 イングリットはなぜか誇らしげにこちらを見ると、胸を張ってこう告げた。


異世界(イヴァリース)だ』




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