ワカクサノニワ3
目覚めるとベッドの中だった。
自分の部屋だと認識するまで時間がかかった。
……記憶を手繰り自身に起こった事を思い出して行く。
(ここに帰ってきたって事は…全部終わったって事か……ああ……最悪だ……)
暴走した内なる魔性が紫音と対峙した事を思いだし嫌になる……
親友に対してなんて事を……暴走したとはいえ、この手にかけようとするなんて……
今もこの手に紫音の首を掴んだ感触が思い出される……最悪だ。
一人で唸って枕に顔を埋めた。
(……そう言えば紫音はどうしたんだろう?)
アーガイルが彼女の住まいを知っている筈はないし、紫音も怪我をしていたから……流石にそんな状態の女性に何かするとは思えないが……
此処に連れてきたと考えるのが妥当だった。
一体、自分はどんな顔をして会えば良いのだろうか?
(あはは…殺しかけちゃってごめんねっ!)
………ないな………それにこんな自分をどう思うだろうか?
故郷では化物と呼ばれ忌み嫌われていた自分の正体を見せてしまったのだ。
頭を掻きむしりながらベッドを跳ね起き、室内をうろうろし始める…
(…もう以前の様には出来ないかも)
そんな考えがイリューシャの気分を更に落ち込ませた。
思い起こせば、紫音が転校初日にイングリッドのドS口調に困惑していた所に声をかけたのがきっかけだった。
……普段ならそんな事はしない筈なのに……どこか頼り無く周囲を気にしている様な態度はかつての自分を思い出させた。
彼女は魔界でも屈指の戦闘種族 炎魔族の1人でありながら他とは違うその戦闘力の高さとその身に封じられた一族の御神体のお陰で魔界でも畏怖の目で見られていた。
他者を常に気にする生活はその心を蝕んだ。
そんな状態からアーガイルに救われこの世界にやって来たが……やはり自分の存在意義を見いだせずにいた日々が続いていた。
八つ当たり的に始めた彼との討伐も紫音と出会ってからは気持ちに変化が現れていた。
――守りたい。
紫音やクラスメイトのいるこの世界をこの学園を…
私の力は破壊してしまうものだけど……それでも私はこの瞬間を守りたいと願った 。
しかし ……
「…駄目だなぁ…私は……」
再びベッドにダイブすると同時に何処からか悲鳴らしきものが聞こえた。
「?!紫音!!」
イリューシャは飛び起きると部屋を飛び出し声の主の元に向かうのだった。