シン・暗き森のマトリーシェ 7
「何故……ネアトリーシェ様は大丈夫なのですか?」
「むっ…」
初期の患者がベッドの中からそう聞いてきた………それはネアトリーシェ本人が教えて欲しい位だった。
その患者は数日後、昏睡状態に陥った。
既に半年以上ここに滞在しているが、病気の研究は一向に進展を見せず、完全に行き詰まっている様な状態だった……
幸い事に未だに死者は出ていないが、重篤な状態で昏睡する患者が増えており、感染者も爆発的に増えていた。
同じ時期に共に診察に関わった者たちは皆感染し、病院のベッドに横になっている状態だ…感染拡大を恐れて、随分と森に帰っていないが一緒にこっちに来たミミルも未だに元気である。
お陰で一部では『暗き森で作られた細菌兵器ではないか』と言われてしまった。
「そんな事をして私にどんなメリットがあるって言うんだよ…」
「どうせそんな事を言っているのは、ネアト様の才能にやっかんでいる連中ですから……お気になさらず」
「勿論そのつもりただが………森に残してきた娘たちに悪い影響がなければ良いのだが」
マトリーシェとは定期的に手紙のやり取りを行っている…
向こうにはウルファンとラビニアが居るから問題は無いとは思うが……マリー成分が圧倒的に不足している…森の生活も気にはなるがカミュとの仲の進展具合も気になる……魔の一族と交流を持った事も気がかりだ…もう帰ろうかな?
「ぐぬぬぬぬ」
「…ネアト様…本日はお疲れでしょう…たまには早くお休みになってください」
研究員に気を遣われてしまった。
部屋に戻り本日届いたマリーからの手紙を開く……手紙には彼女の近況や日々の出来事などが綴られており、最後は私に会いたいという言葉で締めくくられる…
あぁ…マリー……私の愛おしい娘……本当はすぐにでも空間転移で帰りたいのだが、この訳もわからないバッチい病気を持ち帰ってもいけないし…。
今すぐにマリーを抱きしめて全身に私の匂いをマーキングしてやりたい衝動に駆られるが、母親としてそこは我慢だ…我慢だ!我慢なのだ!!
しかし、この数ヶ月で予想外の事が多く起きすぎた…私の居ない間に、本来のマトリーシェの実の親である魔の一族と接触するとは思ってもいなかったが……いやそれは詭弁だ。
私が考えない様にしていただけで、前世の記憶の時とは違い今世での彼女は家族に愛されているのだ。
居なくなった娘を探す為に党主自らが、暗き森近辺のワイバーンを狩りまくった話は有名だし、魔界全土に使い魔を放ち捜索したと聞いている。
前世の記憶では「デビール」みたいな感じだったガノッサの頭髪は、今では落ち武者のような感じになっているらしい。
母親であるリリシェールも体調は崩しているが存命である。
あの状況で警備の者や残された妹を守るためにそれこそ命懸けで守り抜いた末に体調を崩したと聞いている……
これが真の母親の姿なのだと自分との差を突き付けられている様でいつも無力感に苛まれる………
双子の妹も、前回のような闇落ち、ヤンデレ令嬢ではなく素直で華麗な令嬢であると聞いている…
本当の家族の元に返してやることが彼女の為になるのではないだろうか?…彼女と共にありたいと願うのは私自身のわがままに過ぎないのだから。
答えの出せぬままネアトリーシェは思考を手放した。
「暗き森の魔女により作られたスペシャル魔法兵器だと言う噂が広がっています」
「…なんだ、その頭の悪そうな名前は……森の魔女ねぇ」
ヴァルヴィナスの脳裏にモウカリーノの店で出会ったあの少女が思い浮かんだ…そんな事を考えつく様な人物では無いと思うのだがな……瞬間、足を踏まれた…両足だ。
「ヴァルがなんかよその女の事考えてる気がする」
「気のせいだ…」
「ヴァル様が頭の中で浮気してます」
「勘違いだ」
ヴァルヴィナスの執務室の机にはいつの間にか新たに椅子が設けられ、ベルゼーヴとベラドンナと並んで仕事をする事が増えていた……
例の病の影響で、近隣の町や村から避難してきた人々が難民となって王都に雪崩れ込んで来たのだ。
勿論ヴァルヴィナスは全ての民を受け入れて王都での生活できる為の手配を行なってきたのだが…日々、難民は増え続け、仕事に忙殺されるヴァルヴィナスを見かねた姉妹が補佐をする形となっているのだ。
「こちらの書類は大丈夫ですよ」
「はーい、こっちもオッケー」
2人が山のようにある書類にハンコをどんどんついていく為、ある意味非常に助かってはいるが逆にヴァルヴィナスは手持ち無沙汰となった。
「それは俺の仕事……」
「はいはい、こんな簡単な仕事は私たちに任してヴァルにしかできない仕事をどんどん進めて進めて」
「私達でよければ、ヴァル様のお力になりますので」
「お前たち……」
2人の気遣いにヴァルヴィナスは感動した…いつもふざけて振り回されているような気がするが、それでもちゃんとこういうところは頼もしい存在だと改めて感じた。
「ではヴァルヴィナス様はこちらの書類にサインをお願いします…王の許可が無いと進まない案件ばかりですので……」
「よし!任せろ」
マクガイアの差し出した書類の束に次々にサインを書き込んでゆく……それを三人はにこやかに見つめた……
たいして、内容も見ずにサインを書き込んでいくヴァルヴィナスだが次の書類を手に取った時、違和感を感じその内容に視線を落とした
『婚姻届 契約者は下記の者を妻として生涯愛することを魔導契約申請書にてここに申請する…』
そこには、既に配偶者の欄にベルゼーヴとベラドンナの名前が記入されていた。
「おいなんだこれは?!危うくサインするところだったじゃないか!!」
「「「チッ!!」」」
ヴァルヴィナス以外の三人が舌打ちした。
マックお前もか…
「もう少しだったのになぁ…」
「マック…詰めが甘いわね」
「申し訳ありません…奥方様…こういう時妙に勘が良いのも困りものですね」
最近、外堀が埋められて来ていると感じ始めていた。
「さて…こいつは何なのかしらね?」
戦闘後にオークの集落で検証を始めた……発見した時はその体が黒い痣に覆われていたオークだが……
そこに残る死体は特に変わった所は無かった…
「魔法によるバフかしら〜」
「いや…そこまで強く無かっただろ…」
死体を検証するウルフェンとラビニアはマトリーシェの作り出した『防護服』なる全身を包み込む白いスーツに身を包んでいた。
『得体の知れない病原菌とか感染すると大変だからね』
これはイリスの知識による産物でカミュとマトリーシェも着込んで周辺を調査していた。
二人が朽ち果てた建物を覗いた時、その存在に気がついた。
「マリー!生き残りが居る!」
それは崩れた木材の下敷きになっている様に横たわっていた……
「…ウルママ…ラビママ……うーんやっぱりメッセージの魔法が届かないわ…魔素が乱れている?」
「呼んでくる」
カミュは建物の外に出ると持っていた盾と鞘を打ち鳴らして合図を送った。
その間マトリーシェはオークを観察する…その体は黒ずんで全身に赤い線が走っている…
特筆すべきは心臓の上であろう場所に生えている真っ赤な薔薇の存在だ。
真紅の薔薇は仄かに輝きを放ち、その周囲を火の粉の様に赤い魔素が漂っていた。
「…何……これ……」
『イリスでの検索結果……該当する項目は見当たりません……類似する現象の検索結果…1件該当…『破滅の魔女』による『世界の破滅』』
「…『破滅の魔女……」
その言葉にどこか引っかかりを覚えた。
「検索…『世界の破滅』」
「…はい……検索結果……」
「ん…ありがとう…イリス…」
チャットルームで彼女の前に座るイリスは感情を持たない少女だった。
彼女により、手元に出された資料に目を向ける。
『世界の終わり』
「破滅の魔女」ワルプルギスによる限定的な隷属スキル。
魔女属性に対して『刻印』を刻むことにより催眠状態で隷属させるスキル。
原動力となる魔力は旧帝国時代の魔女狩りによる命を落とした魔女たちの怨念。
家族を守るために命を問わず戦う先兵となる。
『鎮魂歌』を使用することで、禁呪指定の儀式型戦略魔法『七つの大罪』を引き起こすことが可能。
「…とても物騒なスキルだわ」
「…ええ…とても危険で悲しいスキルよ」
感情を持たない筈のイリスが憂いを帯びた瞳でつぶやいた。
今のマトリーシェでは見る事が出来ない、彼女の記憶に何か関係があるものなのかもしれない。
「なんだこれは……」
「こんなの見た事ないわねぇ〜」
カミュの連れてきたラビニア達も、この薔薇の現象を見た記憶が無かった。
しばらく観察を続けていると、淡く立ち込めていた赤い魔素の粒子が消え、赤い薔薇はオークの体ごと崩壊を始め、黒い粒子となり消え去った。
「…ネアトの言っていた病気はこれが関係しているのかしら?」
「シルヴィア達も北の国でも病気が出始めたと言っていたね」
「王都でも〜戒厳令が発令されるかもって噂になっていたわね〜」
「てことは…巣ごもりだな」
「………来るわね…巣ごもり特需が……」
「「!!」」
四人はそのまま家に帰ると徹夜で商品の増産体制に入るのだった
モウカリーノの商会は多くの客でごった返していた。
戒厳令が出るかもしれないと言う噂に加えて
「1ヵ月ぐらい家に閉じこもっても大丈夫!最強の巣ごもりセット」の販売が始まった為だ。
(もうこれは戒厳令待ったなしー!)
そう受け取った王都の民は、我先にとモウカリーノの店に押し掛けた。
平民に対しては、『通常セット』が通常の1割ほどお買い得になっているのだが
貴族に対しては、『ロイヤルセット』2割増とふっかけてあるので非常に大儲けである。
「…混乱を招くから……戒厳令は暫く発令しない予定だったんだが…やってくれたな」
「えっ?何ですか?ただ私達は1ヵ月ぐらい巣ごもりできますよーって言う商品を販売しただけですけど?」
「確信犯だろ?!」
帳簿に記載するマトリーシェの横でヴァルヴィナスは世間話をするように話しかけてきた……
初めて店で会って以来、頻繁に出会う様になった……その度に話しかけられて困っている。
適当にあしらっていたのだが自ら『魔剣王』と身元を明かしついにはこの店の執務室にまで入り込む始末だ。
魔剣王だろうが研磨王だろうがマリーにとっては別にどうでもいいのだ。
「聞けばカミュとは姉弟ではないらしいな…」
「ええ…そうですが何か?」
前回カミュに応対を任せたのだが一緒についてくる双子姉妹と仲良くなって根掘り葉掘り聞かれていた……
チヤホヤされて鼻の下を伸ばしているカミュを見てイラッとした…べ…別に…カミュがああいうのが好きなら好きでいいじゃない?…年上だし……胸も大きかったし……そう言って自分の胸を抑える……ワタシは今から成長するのよ!見てなさい!やたらとモヤモヤする感情を抑えながら業務をこなしていく……どうせ向こうでまた鼻の下を伸ばしてるのね!帰ったらお仕置きだわ!!
日々の生活の中でカミュの努力は確実に身を結びつつあった…
マトリーシェのそれは「嫉妬」と呼ばれる感情だが、まだ恋愛経験の少ない彼女にはその気持ちが理解できていなかった。
「リリシェールの薬は君が作っているんだろう?小さな『森の魔女』さん?」
「は?こんな可憐で可愛い美少女を魔女だなんて……年はとりたくないわね…おじさん」
「おじさんちゃうわ!ワイまだ25歳やで!」
「え…?そうなの?ごめんなさい……おっさん」
「なんで言い直した?!同じだよな!言い方悪化してるけどな!」
そう言いながらもまだ余裕を残しているようだ……仮にも王なのだ…こんな小娘に振り回されたりはしないのだろう……
「お茶をどうぞ!研磨王様!」
「お、おう……カミュありがとう……後、研磨王ではなく魔剣王な」
ヴァルヴィナスの目の前にお茶が勢いよく置かれた……見ればカミュが怖い顔で二人の間に割って入っていた。
「カミュ…いきなり…研磨王様に失礼でしょ?」
「何度も声をかけましたけどね!楽しそうにおしゃべりされていたのですみませんでした」
「む……」
カミュったら感じが悪いわね…仮にも研磨王様はそこそこのお得意様なのに……先程まで自分が同じく『嫉妬』の感情を拗らせていた事を知る由もないマトリーシェはカミュのそんな態度をそう判断した。
「……いや、カミュ、お前の気持ちを知りながら……申し訳ない……あと研磨王ではなくて魔剣王な」
「!!研磨王様!私に謝罪など必要ありません!」
驚いた…仮にも王たるものが平民同然のカミュに頭を下げるなんて……
「いや…お前の口の聞き方も十分失礼だからな……これは王ではなく、男同士としての問題だ……何度も言うが、魔剣王だからな?」
「い…いえ…私こそすみません…」
何か男同士仲良くなっちゃてるし……やっぱり男の友情とかってやつかしら……
お互いに握手なんかしちゃって…………………………あれ………?
なんか………閃きそう…………ヴァルxカミュ………いえ、カミュxヴァル……これは売れ……!!
「「その発想はやめろ!!」」
「!!な、何よ…そんな大声でして……びっくりするじゃない……」
二人の声に驚いて今頭に浮かんでいた小説のアイデアが吹き飛んでしまった……
「ともかく…研磨王様…これ以上…ぼ…僕のマリーにちょっかい出すのはやめてください!」
「!!」
「ほう…誰の入れ知恵だ?ベルか?ベラ?そうかそうか…ここは勇気ある騎士殿に免じて退散するとしよう……マジで研磨王じゃないからな…魔剣王だからな」
「……ヴァル様…本日は色々と失礼しましたわ……お詫びにこれをどうぞ……」
「…これは……」
マトリーシェは机の引き出しから小さなラッピングされた包みを取り出した。
引き出しから出したと見せかけて亜空間収納から取り出したのは禁断の試作品のクッキーである。
「…!!…マリー…それは……」
「次回作の試作品なのですが…今、色んな人の意見を聞いているのです、よければ研磨王様にもご意見を頂戴したと思います」
「ほう、新作か…それは楽しみだな……魔剣王な」
「希少材料ですので…皆様の分がないので申し訳ないのですが……ゆっくりと味わえる就寝前にお一人でご賞味くださいね」
「よし!では今夜にでも早速いただくとするか……では失礼する」
「またのご来店をお待ちしていますわ」
退室するヴァルヴィナスを見送るマトリーシェとカミュ……扉が閉まるとカミュはマリーを見た……
「マリー……あれは……」
「う、うるさいわね…仕事の邪魔をするからお灸を据えてやるだけよ!」
そう言ってカミュから顔を逸らした……この後の出来事に顔を青くするカミュだったが……
顔を見られまいとするマトリーシェの耳が真っ赤になっていた事には気が付かなかった。
(…僕のマリーって……)
どこか胸の奥が暖かくなるのを感じるのだった。
翌日、寝室の床で気絶しているヴァルヴィナスを見たマクガイアが悲鳴を上げた。
「リリシェール!しっかりしろ!リリシェール!」
ガノッサはベッドに横たわる妻の手を握り締め声を荒げていた……
彼女は今朝方ベットで苦しんでいるところを発見されたのだった……そのそばにはファルの渡した小さな薬瓶が転がっていた。
その体にはうっすらと黒い痣が浮かび上がっていた。
「……報告にあった南部で発生している疫病の症状に似ていますな……」
「そんな……ファル!あの薬はなんだ!どうしてこんな事を!?」
宮廷医師が呼ばれ母の診断を行った……原因は不明だった……
父ガノッサの今まで聞いた事がない様な大声にファルミラは体を竦ませた……
「あ…あれは……」
「言いなさい!あの薬はどうしたのだ!!」
「あの薬は………」
マトリーシェから渡された『準・神霊薬液』であり、母の病を完全に完治させる為の物だった……
(そんな……マリーが……こんな事……)
『あの娘はこの家を狙っていたんだ……それでお前に近付いたんだ』
(違う…マリーは…そんな事しない!)
『判っているんだろ?あいつはお前から全て奪い取るつもりなのさ』
(そんな……)
ファルは疑心暗鬼に陥る……
『あんなに信頼していたのにマリーがこんな酷い事を…』
(いいえ…マリーはそんな事しない!何かの間違いよ!)
『いい加減目を覚ませ……判っているんだろう?あの娘が何者なのか……』
(だからこそ…こんな事をするなんて!!)
混乱しているからこそ気が付かない……いや、誰も気づけない…今ファルミラが精神攻撃を受けている事に……
「ファル!黙っていては……うっ!……」
目の前で父ガノッサも呻き声をあげてその場に膝をついた……
「お…お父様!?」
「こ…これは……ガノッサ様?!…同じ症状……急いでベッドに!……うっ!」
続いてその場にいた宮廷医師、護衛の騎士、母の侍女が次々にその場に倒れ込んだ。
「えっ?何が……お父様?みなさん?」
ファルは混乱する自分の周囲の人間が皆、倒れてゆく……
(これもマリーの仕業だというの?!)
『なんと恐ろしい!このままでは皆んなあの子に殺されてしまう!!』
(そ…そんな……)
ファルの心が揺らぎを見せた……もう少しだ…もう少しで
「お嬢様!?これは…!?大丈夫ですかお嬢様!」
そこに駆け込んできたのは侍女のカリナだった……
「カ、カリナ……貴女…大丈夫なの?」
「皆様はどうして……?……はい私は今の所大丈夫ですが……」
(何故…何故私とカリナだけは無事なの?)
『それは…お前達には利用価値が……』
(主であるお父様もお母様も倒れた今、この私のなんの価値が?)
『ええと…他の家に対して……』
(私、特に他の方々との面識はありませんけど?まだ社交会にもデビューしてませんし…特に価値はないかと?)
『あるの!多分!何か企んでるんだよ!貴族令嬢の貴女を使って何か良からぬことを……』
(カリナは?私の侍女ですが…彼女にはどんな利用価値が?)
『えーと…えーと』
カリナの登場でファルミラは冷静さを取り戻した……何故、自分とカリナはこの症状が発生していないのか?
今この場の苦しんでいる皆と自分達の何が違うのか……それはマリーとのお茶会だ……
「カリナ!すぐに皆んなをベッドに!…どうにかしてマリーと連絡が取れないかしら?」
「はいすぐに……皆様は私の『ゴーレム』で運びます…モウカリーノ様の店と王城には使い魔を送ります」
カリナはゴーレムを呼び出すと手分けして倒れた人たちを安全にベッドに運び込む……
新たに誰かを呼ぶ事で新たな犠牲者を増やす訳には行かない……
『とにかくマリーは危険で危なくてデンジャラスな存在なんだよ!』
(……ところで先ほどから私に語りかけてきている貴方は誰ですか?……もしかしてマリーの言っていた『使徒』様ですか?)
『!!』
(その反応は当たりの様ですね……しかも『精神隷属』なんて物騒な術式を仕掛けくるなんて……失礼な方ですね)
以前のファルミラであれば不安定な心理を突かれ、操り人形にされていたかもしれないが……今のファルミラは精神的に大きく成長していた、それを正しく導いたのもまたマトリーシェであった。
『何故私の存在を知っている?どこまで聞かされたんだ!!』
(知りませんよ、貴方のことなんて……『使徒』と名乗る変質者がいるから気をつけるようにアドバイスを頂いただけですわ……流石はマリーね…では皆さんを手当しないといけないのでそろそろお帰りくださいませ)
『!!』
ファルミラが魔法陣を展開させると館全体を覆う巨大な結界が張り巡らされた。
『聖域』
聖なる波動が結界内を包み込み、清浄な空気で満たされた……すでに先程の使徒の声は聞こえなくなっていた。
「…ふむ…この結界で消滅するとなると……やはり変質者でしたか……後でマリーに報告しておきましょう」
今世においては彼女達の絆は本物であり強い信頼関係が出来上がっていたのだった。
「まずはみんなの安全を確保して……魔剣王様にも報告を……後はマリーに聞いてみよっと」
ファルミラの表情は明るく、悲観した様子はどこにも見当たらなかった。
みなさん あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします。