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魔眼の使徒  作者: vata
第一章 始まりの詩
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ヤミノフルヨル4


「…ふむ……こんなものかな?」


 結界を張り終えたイリューシャは一番高い雑居ビルから周囲を見下ろした。

今回召喚されたのは(ワイルドキャット)…低級妖魔だ。

個体での能力は高くないが奴等の強味は群れる事だ。

魔界で異常発生したワイルドキャットに村が一つ滅ぼされた……なんて話もあるくらいだ。

……気配を探ると…50匹程度か……ん?…んん~?

妖魔の気配に混じって違う気配を感じ取った……一般人が紛れ込んでるぅ?!

あわわわ!また彼に怒られちゃう~!


 イリューシャが妖魔と戦い始めたのは2ヶ月前。何者かにより

町中のあちこちに召喚の魔方陣が書き込まれていた。

それに気付いた彼が結界で空間を隔離して人知れず処分していた。

それに気付いたイリューシャが手伝いを申し出た。


 イリューシャはそのまま空中にダイブした。彼女の周囲に炎が具現化した。

(魔装)と呼ばれる魔力の鎧だ。

その身体は強化されあらゆる外敵からの攻撃を半減、無効化させる。

アスファルトにクレーターを作る程の衝撃で着地してもイリューシャには何のダメージも無かった。

起き上がり様に周囲のワイルドキャットにファイアボールを見舞う。

一瞬で灰となり崩れ落ちて行く哀れな妖魔に一瞥をくれてやると気配の元に急いだ。


「……くそっ!こいつらキリがない!」


 召喚用の魔方陣が未だに働いている為が次々と現れるワイルドキャットのせいでなかなか気配の元に辿り着けないでいた。

先ほどから感じる気配が自分の知る物に類似している事に若干の焦りを感じていた。


(あの角を曲がれば……くそっ!)


 眼前に現れた群れに後退を余儀なくされた。

向こうに向かおうとしている一匹にファイアボールを放つ…くそっ!かわされた!

イリューシャの周りに殺到した妖魔を「フレイムの剣 (ブレード)」で両断する。

先程の逃がした妖魔に向けて三発のファイアボールを放つ。

三発目は(特別製)だ。これで危険を察知して上手く逃げてくれたら良いのだが……模倣結界は私が作り出したものだが、十二使徒の魔鏡は彼が作り出したものだから抜け出す事はまず不可能だろう

。………?おっ? 僅かな魔力の流れにイリューシャは驚いた。

紛れ込んだ訪問者は戦うつもりらしい。

この状況でこの機転の切り替えの早さは好感を覚えた。

それは自分が戦闘種族である為か、感じる魔力が心地好いものだからなのかはわからないが………


 側面から襲いかかる妖魔を再び炎の剣で切り伏せる。

あちらはなんとか切り抜けてくれた様だ。

どちらにしても早く救助に向かわなくては……??

ここでイリューシャは違和感に気付いた。

魔力の流れによれば…ソニックブーム……ニードルバインド……アイスピック……か……風 土 水……属性もレベルも関連性がなく出鱈目だ。

属性には相性が存在する。

火は水に弱く 水は土に弱い 土は風に弱く 風は火に弱い。

この流れからいくと訪問者は最後のアイスピックの精度の高さ、魔力の濃縮率をみれば水系列に属していると推測する。

ならば土属性は成功率は限り無くゼロに近い筈だが?イリューシャ自身水系魔法は全くと言って良い程成功しない…………いや…まさかね……

 イリューシャが一番気になったのは二番目の魔法ニードルバインドだった。

基本土属性の植物を操り敵の動きを封じるものだが……僅かに闇属性の働きを感じた。


(……しかし魔導リングの属性補助もあるから…この場合の属性感知は余り意味がないかもな)


 魔導リングはあくまでも術者の補助をするアイテムだ。

たとえそれが術者自身の不得意とする魔法であったとしても……

そう考えている間に訪問者に動きがあった。……こちらに向かってきてる?!

……この状況下で迂闊に動き回る事は危険きわまりないのだが……どうやらこちらが味方だと判断したらしい……本来ならば結界内を駆け回り、敵を引き付けるのはイリューシャの役目だったのだが……


(結果としては好都合……利用させてもらうわよ!)


 訪問者のサポートをしながらその目的達成の為に動き始めた。……

周囲の敵を排除し終えた頃には訪問者は広場に追い詰められていた。

もとい計画通りの展開に彼の計画かと思わず疑いたくなった。

……いや、彼と私の間には嘘や偽りはない。だから今回は恐ろしい偶然なのだ。


イリューシャは知らなかった。これは偶然ではなく必然であったことを……


 訪問者は追い詰められ、妖魔に取り囲まれていた。遠目に見ても女性だとわかった。

……この魔力の感じは…いやまさか……ね。

精霊の動きが活発になる……炎の壁か……なかなか良い判断をしている。

残念なのはこの魔法が失敗した事だ。術式が上手く精霊に伝わっていない様だ。

……惜しいな。

 イリューシャは新たに炎の壁の術式を再構築する

訪問者の失敗した炎の壁に更に自分の炎の壁を重ねる。

結果としてそれは巨大な炎の壁を作り出した。訪問者は驚き尻餅をついた。

今頃(何これ?!私SUGEEEEE!)とか思ってるのかな?そんな彼女に声をかける。


「あなた大丈夫?……って紫音?!」


やっぱり先程感じた魔力は紫音だったのか……でも何故?


「?!イリュ?……燃えてるっ!」


私の魔装の炎を見た紫音が慌てて髪をはたいた……かわいい奴め。


「あはは…紫音大丈夫だよ。それは私の魔力の現れ……体の一部だよ。」

「はっ?」


 まぁこれが普通の反応だわ…魔装なんて一般的には知られてないからね……

ふと紫音の腕に巻かれたハンカチに気がついた。


「……それよりも紫音……その腕…」


「あはは…さっきあいつらに……?イリュ?」


ハンカチに滲む血を見て自分の中に激しく渦巻く魔力の奔流に気がついた。

この感情は…怒り…そう……許せないのだ!

彼女を傷つけた存在が!


「よくも……よくも私の可愛い紫音に傷を………!!」


 怒りの感情が私を支配する。

あああ……ヤバイなぁ……体から漏れ出す魔力が制御できなくなり、魔装が怒りのせいで(魔身化)しているのがわかった。

彼に怒られるかなぁ……紫音……きっと驚くだろうなぁ……しかし 親友であるはずの彼女を傷付けられた事はイリューシャにとっては我慢ならなかった。


「下等な妖魔の分際で我が逆鱗に触れた事を後悔するがいい!!我が名はイリューシャ‐ハイヴァリエル!誇り高き焔魔族最後の戦士なり!」


 熱い炎が体中を駆け巡る様に本能の囁きがわたしをしはいする

……ちからのかぎり、てきをなぎはらい、そのからだをひきさイてヤれ!

わがちからハむてきナリ。

おそれルモノはナイ。

ワガコエにシタガイソノチカラヲカイホウセヨ!

メニウツルモノスベテハカイシロ!コワセ!モヤセ!コロセ!



……にげて……しおん……


押し寄せる暴力と破壊の感情に薄れゆくイリューシャの意識の中でその言葉は彼女に届くことは無かった。




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