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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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混沌の魔女 6

「……ちゃ!……ん!……ネ……ん!…ネルお姉ちゃん!」


 ルミナスの声にネルは我に返った……意識を失っていた様だ。


「お姉ちゃん大丈夫なの?」

「大丈夫よルミナス…お姉ちゃんは…強いんだから!」


 嘘ですけどね…もう立っていることが不思議な位です

もしもマトリーシェ様がここに居られたら私は今頃一息ついていたのに…

こんな想像絶するような痛みがいつまで続くのか.…あれ?さっきよりあまり痛くないですね?

慣れでしょうか?いえ気のせいではありませんね……この結界のシステムに順応していますね……私……

本当にこの子達のお姉ちゃんなのでしょうか?ちゃんとこの結界も安定していますね……心なしか先ほどよりも体力も魔力も少しばかり回復している様な気がします……

私には物心ついた時には既に父親は居ませんでした…

母も父についてはあまり多くを語りませんでしたね…ええ〜本当にあの男が私の父だったらどうしましょう?


「あの……ネル様?」

「何かしら?ミナ…」


 思考の海に沈みかけた私にルミナリスが声をかけてきました。


「…確認なのですけど……その…その下着は一体……」

「……?下着?」

「ネルのパンツすっごい光ってるー!!」


 モネリスの言葉にギョッとした私は下に視線を向けました……私のメイド服のスカート部分が淡い光を放っていました……この位置的に……彼女の言う様に……件の下着ですね……

感覚的に…「常時回復効果(リジェネ)」でしょうか……そりゃ色々と回復しちゃいますね!


「!」


 背中に振動が走りました……「脳内通信(シナプスコール)」ですね……しかも「秘匿通信(ステルスコール)」です。


(もしもし)

(おう……調子はどうだ?プレゼントは気に入ったか?)


予想通りのアーガイル様から秘匿通信でした……

なぜ秘匿?オープンチャンネルで通信してこない辺りに悪意を感じます。


(お前の事だから無理するだろと思ってな)

(あ、悪趣味です!)


しかし効果は最高である。

体力回復、魔力の適合アップ…魔力の回復効果…エリクサー級ではあるまいかと動揺してしまう位に……


(此方も戦闘に入る…頑張ってくれ…)

(…そうですか…アイリスお嬢様の事…お願いいたします)

(任された)


 通信が途切れると同時に何やら安堵の溜息が洩れてしまいました…

視線を前に向けるとルミナス様が此方を見ていました……光を宿さない瞳で。


「ネル……その下着はどうしたのかしら?」

「!!こ…これは…」

「何かアーガイル様の魔力的なものを感じますが…貴女は何か知ってるのかしら?」


ルミナス様のの恐ろしいまでの感知能力に冷や汗が止まりません…

秘匿通信ですよ?


「奥様…見れば我々の傷が癒やされています…おそらくは旦那様からのささやかな贈り物では?」

「そう言えば…ああ…アーガイル様…」


 ルミナリスがこっちにウインクしてきた…

あんたええ子や…さっき踏んでごめんね!


「っっつ!」


突然下着から感じる波動に身をよじった。


(こんな時に変な波動を送るのはやめてください!)


な、…なんですかね?…このいけないことしてるみたいな背徳感は…


「そう言えば…ネル…先程の下着の件話がハッキリと聞いて居なかったのだけど……その発光現象と何か関係があるのかしら?」 


 あかん…詰んだ…何故今それを聞くのですか……


「奥様…ネル様だけではありません……私もです」


そう言ってルミナリスがスカートをチラリとずらすとその隙間から光が溢れていた。


おい!なに新しい燃料投下してくれてんの!


「ルミナリス…これは一体…モネリス…まさか貴女も…!」

「私?私は下着はつけない派だよ!」


モネリスはそう言うと自分のスカートを全部捲り上げた……

隠しなさいっ!!


「あ!でもアーガイルがさっきでもこの指輪くれたよ!」


見れば指輪が光っていた…!左手の薬指に!

なぜそこにつけた!


「皆んな…良いわね……私だけなんもない…」


 そういったルミナスの瞳から光が消えた……同時に結界に軋む様な音が響いた……この高度な結界術は術者の精神状態に左右される……

実は先程からルミナスの後から光が溢れている…おそらく髪留めが発光しているに違いない。

あえて見えない場所に…絶対わかっててやってる!!

そこにルミナリスが遠慮がちに声をかけた。


「奥様…実はこれは恥ずかしながら私の下着は自前のものでは御座いません…あの魔女には下着を用意する事に魔力を使用しませんでしたから…なのでこれはアーガイル様贈られたものです……おそらく…実験されているのでは…」


「どゆこと?」


どゆこと?



「全て試作品なのでは…奥様への贈り物の……私は…色々と奥様と同じですから」


瞬間ルミナリスと視線が交差した。

ありがとうミナちゃん…あんたほんまええ子や。

生き残るためにも乗るしかない……このビッグウェーブへ……


「もう…ルミナリスったら…仕方ありませんね…お嬢様…聞かなかった事にしてくださいね…そうです…全ては試験的なものなのです………お嬢様へのサプライズのね…後で使用感を報告する様に連絡を頂きました…勿論お嬢様には内緒で…」


「ささささささすぷらいず!!!魔界で…女性に下着を贈るのって……」


余計なことを言わないかモネリスを見ると…笑顔でニコニコしてますね…よく見ると冷や汗かいてますね……

やっとこの場の危険性を理解したのでしょうか?


「カイル様?アーガイル様?私に下着を?!」


 魔界に置いても異性に装飾品を送る行為は好意の表れである。

更に魔界の古い習慣に女性に下着を贈るというものがあったらしい……その意味は……


「そ、それって…『お前は俺専用』ってことよね?」


ルミナス様鼻血出てますよ…あと今の顔を見せたらカイル様もアーガイル様もドン引きしますからやめた方が良いですよ……


「お嬢様……いわばこれはご褒美のサプライズなのです…なのでこの結界を維持しなければなりませんよ」

「!!わかったわ!行くわよ!皆んな!絶対にこの結界からあの魔女を逃さないわ!」


なんとか生命の危機を乗り越えた様だ……溢れる疲労感と絶えず送られてくる心地よい魔力波動に新しい可能性に目沙汰しまいそうになる…癖になったらどうしてくれるのでしょうか?

親友の目を盗んでその彼氏といけないことをしているようで……

ああ……後で絶対に文句を言ってやらなければ……


そう心で思いながらも何か期待する様な笑みを浮かべるネルフェリアスだった。


彼女の受難の日々は続く







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