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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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真・暗き森のマトリーシェ 9

「魔眼解放」


 カミュの行動は早かった。

瞬時にレイヴンに切り掛かりその追撃を阻止した……その結果,殺意の矛先がベルゼーヴからカミュへと移った。

速度ではまだカミュの方が勝っているがパワーは向こうの方が上の様だ…表情が伺えない分、それも怪しいと感じる。

 魔王姉妹に視線を向ければイヴがサポートに入っており回復を受けたベルゼーヴも参戦する気満々のようだ。


「良いぞ…一番理想の形の融合形態だな」


 そのレイヴンの姿にヘブラスカは満足そうに笑みを浮かべた。


「…不味いわね…最悪の結果だわ…」


 ベラドンナは呪いによる繋がりを持つ故にあの姿のレイヴンを理解していた。

あの融合に使われた個体は3つ

魔女の僕、レイヴン

かつて魔竜王とその座をかけて敗れた邪竜メギドラ

北方を荒らし回った最悪の巨人ギガース

これらがレイヴンの体にギガースの怪力、メギドラの魔力を備えた究極の個体と行っても過言では無い。


「……これは…?」


 イヴは異様な姿へと変化を遂げたレイブン中に異常な存在を感知した……


「…間違いないわね………アダムの予想した通りね」


 






 カミュは段階的に加速度を上げていった……先ほどの攻撃による負傷は既にイヴにより回復されている。

カミュの属性「風」による魔眼の効果は「敏捷性」と「回避率」の上昇だ。

今はマトリーシェの指輪の補助がある為それなりに使いこなせているが本来の効果を引き出すにはまだまだ熟練と鍛錬が足りていない状況だ。

今のその状況でも魔剣王やベルゼーヴ辺りとそれなりにいい勝負が出来るレベルである。

 しかしこの赤いレイヴン…は難なく対応してくるのだった。


時折参戦したベルゼーヴがこちらと連帯して攻撃を浴びせているが、それでも余裕を見せている…遊んでいるのだ。


「やるしか無いか…行くよマリー」

『あんまりお勧め出来ないけど…』







「くっ……ありがとうイヴさん…随分楽になりましたわ…」


 ベラドンナはゆっくり立ち上がった。


「そうか…余り無理はしない方がいいぞ」

「…無理をして勝てるならば良いのですけど」


 イヴにより回復して貰った魔力を練り上げ再びレイヴンに対抗する為の呪力を生み出した。


「お返しをしないといけませんね……姉様…行きますわよ!」

「!よっし行くかベラ!おい!カミュ!こっちは任せろ!お前の役目を果たせ!」


 その眼差しにカミュは頷くとヘブラスカへと向き直った。

 それを見届けたベルゼーヴが跳躍する。

時を同じくしてベラドンナが魔力を解放するとその肌に幾何学的な模様…呪紋が現れた。


「水の呪印『水牙(スイガ)』!」

「!?」


 彼女の宣言と共にレイヴンの体から突然水の槍が突き出した。

レイヴンは何が起こったか理解できないだろう……

ベラドンナの取り込まれた呪力から放たれた魔法はその体を濡らした。


「ようし!ベラ!いい仕事したぜ!!『雷化身(ライディーン)』!」


 ベルゼーブの姿が発光し次の瞬間には凄まじい速さで駆け抜けた……


「………がっ!?」


 遅れてレイヴンの体に凄まじい電流が流れた……


「まだですよ・火の呪印『焔火(ホムラビ)』!」


 ベラドンナの詠唱に呼応しレイブンの体から火の粉が舞い上がった。

彼女の呪印によりレイヴンの体内の温度が上昇しているのだ。


「あははは!えげつないね!『炎化身(イフリーティア)!」


 ベラドンナの体が炎に包まれた。

そして上段からの切り下ろしで炎の剣をレイヴン目がけて振り下ろした。

レイヴンはその両腕をクロスして防御する。


「ああ……腹が立つくらい反応早いなあ……」

「ふふ…でも残念でしたわね」


 その剣は両腕をすり抜けその体を袈裟斬りにした………


「!?……!!」


 レイブンの全身から炎が噴き出した……青白い炎が。

それはベラドンナの呪印の効果と相乗し想像を超える高温となっていた。

ベラドンナの呪印は相手の魂に作用する為,防御は不可能である。

 ベルゼーブは自分を魔法と同化させる特性を持っていた,六大属性全てである。

故についた呼び名が『魔皇帝』である。

しかもその妹ベラドンナの呪術との相性も良く、双子ならではの連帯も抜群だった。


「全く!忌々しい小娘たちだね!!」


 意識外の所からヘブラスカの魔法が襲いかかってきた……が

割り込んだカミュによって塞がれた。


「ぐぅっ!はっ早く!」


 ヘブラスカの力が増しているのかカミュの方もかなり無理をしている様子だった。









 戦場を駆けるヴァルヴィナスは遠くに聞こえる遠雷の音を聞いた……

隣のヴリドラを見やると楽しそうな笑みを浮かべていた。


「相変わらず恐ろしいぐらいの魔力だわい」

「だろ?こっちも負けてられねえな」


 







「よーし!行くよ!ベラ!フィナーレだ!」

「行きますわよ!『六芒結界・楔』」


ベラドンナの詠唱により、六本の鎖がレイヴンの身体を貫き大地に拘束した。

色は六色,火,水,風,土,闇,光…六属性の象徴の色だ。 


「行くぜ!『六芒転身・朧』!!」


 その声と共にベルゼーヴが六人に分裂した。

それはベラドンナの作り出した属性の鎖と同じ属性を有した魔法体だった。


「「六芒演舞・終焉」」


 二人の声が重なると同時に六人のベルゼーヴが鎖と共にレイヴンの体を突き抜けた。

蒼い炎の螺旋,絶対零度の氷塊,唸りを上げる真空の刃,超高度の漆黒の鉱物,全てを飲み込む漆黒の闇,眩いばかりの聖なる光それらが交差しレイヴンの体を通過した。

やや離れた場所でベルゼーヴが地面を抉り取りながら着地した。

それを見届けたベラドンナは疲労から地面へと崩れ落ちた。


一見無い事も無かった様にレイヴンは立ち尽くした。

その胸部には淡い黒の球体が揺らめいていた。

 それは火と水,風と土,光と闇,相反する属性の衝突により反物質…いわゆる禁呪である。

球体が弾け,その直撃を受けたレイヴンはその頭部を爆散し地面へと倒れ伏した。


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