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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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真・暗き森のマトリーシェ 8


 マリファの決断は英断だった。

意思を持つ(インテリジェンス)(ソード)に興味を持った男だったが、二人の説明と懇願を聞いて「面倒くさい」と切り捨てた。

何かの合成素材に使えるかもーと、仮面の男……アダムの手によりそのまま破壊されかけたが,その後現れたイヴ様によって無事に救出された。

 更にそこに居た魔竜王の一行の中には何とカミュとミネルヴァがおり、再会を喜びつつも、マトリーシェ本体の辿った結末を聞いた。

その後、一緒に魔剣王の元にやっと辿り着いた。

 そこで残り僅かなマクガイアの思念は無事にヴァルヴィナスに真実を伝え、息子カエサルに別れを告げ魔剣の中へと吸収されていった。

ヴァルヴィナスのスは魔剣の所持を申し出たが、マリファ達はカミュによる所持を願った。


マリファとマリータは並行意思ではあるがマトリーシェそのものであった。

本体では叶うことのなかった二人で戦う事に本体の奪還を誓い合った。






「おのれっ!厄介な!!」


 ヘブラスカは先程の余裕を失いつつあった。

彼女の使う魔法はマトリーシェの物だ…それ故に全てあの魔剣に存在するマトリーシェの配列思考体によって解呪、吸収、無効化されてしまっていた。

僅かしか発現できないヘブラスカ自身の魔力では足止め程度も苦労する程だった。


『レイヴン!!私を守れ!!』







 魔王姉妹と激戦を繰り広げていたレイヴンの脳裏にヘブラスカの指令が響く…


『!!オマモリセネバ!!』


レイヴンは対峙する姉妹に背を向けヘブラスカの元へと駆け出した。


「ありゃ?こらー!待ちなさーい!!」

「魔女さんも余裕がなさそうですねぇ…」


それを見た姉妹も後を追う。







「貴女を殺してしまうわけにはいかないのです…どうか引いてはもらえません?」


 イヴは目の前で牙を剥くスノウに対して交渉を行っていた。

既にスノウは地面に押さえ込まれ完全に詰んでいる状況ではあったが。


「そうですか…こんなにお願いしてもダメでしょうか…?仕方ありませんね」


 イヴは意識を目前のスノウにのみ集中する

僅かに仮面をずらし僅かに…ほんの僅かに魔力を解放しその一点にのみ集中させた。

(主人様より与えられた魔力封じの仮面だが……ちょっとだけなら大丈夫だよね?)

 突然スノウは雷に打たれた様に体を大きく跳ねさせるとその場に気絶した。

イヴはその首に手を当てて生きている事を確認してホッと安堵の溜息を漏らした。


「全くこんなに可愛らしい生き物に対して心が痛むわ…」


ゆっくりとスノウの頭を地面に横たえるとカミュの元へと駆け出すのだった。








 刹那の瞬間、魔界全土に衝撃にも似た魔力の余波が走った。

ほぼ感じ取れるものはいなかった筈だがそれでも理解してしまう者も居た。


ヴァルヴィナスとヴリドラは戦場で一瞬体をこわばらせ

ベラドンナとベルゼーヴも一瞬、追走の足を止めた。


ゴーレムを切り伏せたアダムは不機嫌そうに森に視線を向けた。


「何やってんだよ「ミカイル」世界を崩壊させるつもりかよ」







森の中で激戦を繰り広げていたヘブラスカ、カミュ、マリファ達もその余波を感じ取った。


『な…何?この魔力!?』

『あわわわ!術式の構成が乱れる!!』


動きを止めたカミュを見てヘブラスカは距離を取った。


『えええい!レイヴン!!まだかっ!』


 ヘブラスカは防戦一方であった。

マトリーシェの魔力では決定打に欠ける為,今は自然に存在する魔力を取り込んでの魔法で対抗していたが,効率が悪い上に威力も落ちる為カミュに決定打を与えられないでした。

しかもヘブラスカの使う氷雪系魔法はカミュの風魔法とはすこぶる相性が悪かった。

マトリーシェであればまだ聖霊魔法も使用できたのだが

適性を持たないヘブラスカでは使いこなす事は困難であった。


そんな焦りの為かヘブラスカが足元をもつれさせた。

それをカミュが見逃す筈は無かった。


 彼女を拘束するために動き出したカミュの側面から突然黒い物体が現れた…


『へブラスカざまぁ!』


 木々を薙ぎ倒し現れたのはレイブンであった。

完全に不意をつかれた形のカミュはとっさに受け身をとったがその剛腕から繰り出される拳を正面から受けてしまい背後の巨木へと叩きつけられた。


「レイヴン!!」

「おまタせしまジタ!」



 見れば魔王姉妹、怪しげな仮面な女もこの場に集まっていた。


「これまでか…レイヴン!その命を私のために差し出せ!」

「オオセノママニ」


 レイヴンが自らの胸に埋め込まれた制御水晶を砕いた……

その体に埋め込まれた生物たちが唯一無二の生存をかけてお互いを攻撃し喰らい最後の一つになるまで争い続けた……それは闇の様に黒く、鮮血の様に紅く,やがて混ざり合い一体の生物へと姿を変えた。


 全身黒ずくめだがその眼とそれぞれの体を覆うプロテクターは赤くかつての騎士の姿のレイヴンを彷彿させた。



「うぐうっ!」

「ベラっ?!どしたの?」


 突然ベラドンナが苦痛に呻いた


「あいつ私の魔力を上回ってる!!呪力が押し戻されてる!」

「てめえ私の妹に何すんだ!」


 ベルゼーヴが土煙をあげてレイヴンに切りかかった

次の瞬間にはベルゼーヴはカウンターで蹴りを受け,そのまま森の木々の中に吹っ飛ばされた。

本人は何が起きたか信じられない様な顔をしており…その衝撃に吐血した。


「姉様!」

「ぐっが…くっそ……」


 もがくベルゼーヴを見てレイヴンは口元にニタリと笑みを浮かべた。

 最早その行動原理は殺戮と破壊衝動のみ、

創造主であるヘブラスカ以外が全て対象となる。

ベルゼーヴを獲物として認識したレイヴンは身構えると狙いを定めた。




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