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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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真・暗き森のマトリーシェ 7

 「オオオオオオ……」


 ゴーレム達が響く様な轟音をあげて起動した……開戦である。

それをやや小高い丘の上から見下ろしていたヴァルヴィナス達も行動を開始した。


「魔道士部隊!結界を!」


 ヴァルヴィナスの号令と共に魔道士達が呪文を完成させ、彼らの目の前に幾重にも結界が張り巡らされた。

数体の獅子型のゴーレムより閃光が吐き出されそれが魔王軍を襲い結界に阻まれた…重ね掛けの効果により破壊されても次の結界によって今の所被害は出ていない。


 側面から接近して居たアダムはその閃光を見て口角を吊り上げた。


「気合十分だな!血が騒ぐぜ!」


 手始めに目の前に居た小型のゴーレムを一刀の元に斬り伏せた。

更にそれを足場にして跳躍し後方の大型ゴーレムの上に着地するとその閃光を吐き出す砲門を切り落とした。

内部で魔力が暴走し、巨体諸共爆散した。

その光景を前にヴァルヴィナスをはじめとして魔王軍にざわめきが起こる


「なんて馬鹿力じゃ」

「敵対した時は生きた心地がしなかったが……味方になれば頼もしいな…さあ俺たちも負けてられないぞ!」

「やれやれ……年寄りをもう少し労わるって事を学ばなかったのかいの」


 ヴァルヴィナスとヴリドラもアダムを追って戦場へと駆け出し、後続する兵士達も雄叫びを上げて戦場へと駆け出した。




 カミュ達四人は森の中を疾走していた……やがて目指す彼女の家が見えて来た為警戒しつつ周囲を伺った。

……彼女の家はあの日炎に焼かれたままの無惨な姿を晒していた。


「むっ!」


 何かに気づいたイヴが後ろの三人を手で制した。

その瞬間、皆の眼前を黒い衝撃波が襲った……


「よクカワしたタなぁ!」


そこに現れたのはレイヴンであった………がその見た目は大きく変貌していた。

以前のような全身を黒い甲冑で覆っているがその歪な巨体は以前の姿とは大きく掛け離れていた

更に鎧の隙間から何か黒いものがうごめいているのが見える。


「アハハハ!効いてる効いてる!」


 それを見たベラドンナが嬉しげな声を漏らした…その表情は恍惚とし……普段の物静かなイメージとは正反対だ。


「きザま!!許さンぞ!」


 彼女の姿を見たレイヴンが今までと同一人物とは思えない程の殺気を滾らせた。


「ねえ……あんた何やったの?」

「んふっ……ベルを泣かしたんだもの相応の償いをしてもらわないとね……ちょこっと「蛇の呪詛」を叩き込んでやったのよ」

「うはは!まじで?!さすが私の妹!」

「しかも解呪に失敗したみたいね……暴走を抑える為にゴーレムと融合させて呪核として無理やり安定させてるみたいだけど…」

「あはっ!めっちゃウケる!」


 それを聞いたベルゼーヴが軽快に笑い声を上げた。


「ぎざまぁ!ゴロス!」


 彼女達の憶測は正解だ 『蛇・呪印捕縛呪(ジャ・ジャジュアン)』は相手の魔力に呪いの楔を打ち込む術式であり彼女の有する固有魔術である。

解呪はほぼ彼女にしか出来ないであろう。

ヘブラスカも解呪は不可と判断した……故にレイヴンを母体とした英霊憑依型のゴーレムにしようとしたのだが……ベラドンナの呪いが魔力の融合を邪魔をした為完全な融合が失敗と終わってしまったのだ。


「全く物騒な呪詛(シロモノ)をプレゼントしてくれたモノだね」


 崩れ落ちた家の中から漆黒のドレスを纏ったヘブラスカがゆっくりと歩み出てきた………


「我が騎士として有能だったのに……貴様たちのお陰で使い潰さねばならないではないか……レイヴン……大義であった!後は好きに暴れろ」

「ありがタキおコトバ!!きザまだヂ!かくゴしろ!」


 その巨体からは想像出来ない速度でレイヴンが迫ってきた……ベルゼーヴが腰から抜いた剣でその剣を防いだ。


「こっちは任せてお前たちは魔女を!」

「あら?あなたたちの相手はこの子よ」


 ヘブラスカの声と同時に上空から何かが地面に着地した……

それは白銀の鱗に身をまとったホワイトワイバーン…スノウだった…その姿は最後に見た時よりも禍々しい姿になっていた。

マトリーシェの最後の言葉を忠実に守りこの場所を守っていた事でヘブラスカに見つかりこの様な姿にされてしまっていた。

その額部分には見たことのない水晶が着けられており改造された事が一目瞭然であった。


「!!貴様どこまで!」


 この女は…どこまでマリーを穢せばば気が済むのだろうか?カミュの中の思い出が黒い感情によって塗り潰されてゆく。


「さぁ踊りなさい!」


 その声に反応してスノウが襲いかかって来た。

カミュとイヴは距離をとり身構える……魔王姉妹とレイヴンの戦いはここより反対の場所で展開している為そちらは気にしなくても大丈夫そうだった。


 スノウが氷のブレスを二人向けて吐き出した……周囲の木々が凍りつきあたり一体が樹氷と化す。


「どうしますか?私が力を解放すれば瞬殺も可能ですが?」

「…できれば殺したくはありません」

「……了解…ではこの子は私が引き受けますので貴方はあちらの方を…」


 瞬間イヴの姿が消えてと思えば次の瞬間スノウの頭を殴りつけていた。

警戒していたスノウの意識がイヴへと向けられた。


「あなたのお相手は私です…さあおいで」

「グルルルルル…」


 イヴの言葉に反応した様にスノウがその後を追いかけた。

森の奥に消えゆくそれを眺めながらヘブラスカはゆっくりとカミュに振り返る。


「おやおや…そんなに二人きりになりたかったのかい?………最後にもう一度だけ聞いてやろう私のものになる気は無いのかい?」

「何度も同じ事を……今度こそ彼女を返してもらうぞ!」

「ククク……あれ程力の差を見せてやったのにまだ挑もうというのか?」


 ヘブラスカの嘲笑を聞き流しながら背中から背負った袋より1本の剣を取り出した……

漆黒の刀身に根元には赤い宝玉が埋まっている。


「そんな物騒な物で私を倒そうと言うのか?」

「……いくよ…マリファ」


カミュに声に反応して剣が炎を纏った。


「……魔剣か…そんな物でわたしに勝てるとでも?…残念だよ…愚か者め」


 ヘブラスカが指を振るうと氷の刃が四方からカミュを襲った……筈だった。


「?!」


 彼女の魔法がカミュを切り裂く寸前に彼の剣の一振りで忽然とかき消されていた。


「……馬鹿な…貴様何をした?その剣か?」


 ヘブラスカがカミュの持つ剣に目をやった

中央に嵌め込まれた赤い宝玉が鈍い光を放った。


『残念でした!本体(わたし)を返してもらうわよ!』


 カミュの肩に小さな人形が現れた……見る人が見れば分かる……それは小さな少女…小さなマトリーシェだった。

先の戦いでマクガイアと共に爆散した筈のマリーの擬似人格『マリーアルファ』その人であった。






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