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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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凍てつく心10


「ぐっ!がはっ!」


 イリューシャは背後からの衝撃に吹き飛ばされた。

即座に体制を立て直し警戒するがそこには既にモネリスの姿は無い。


『どこを見ているのかな?』


 どこか楽しそうな声が響き渡る……周囲には見渡す限りの氷の柱が何本も不規則に並んで生えている。

その表面は鏡の様に磨かれており、そこには何人ものモネリスが写り込んでいた。


「そこか!」


 イリューシャが腕を振り抜くと火球が柱を直撃し根元から破壊した。


『残念でした』


 すぐ横の柱にモネリスの姿が見えたかと思うと鋭利な氷の槍が飛び出してきた。


頬に傷を受けたが皮一枚のタイミングで回避した……

モネリスの『氷の世界(フロストワールド)』により作り出された一面の氷山の様な地形の柱にはマトリーシェの『鏡面世界(ミラーワールド)』によって全方面からの攻撃が可能な凶悪な状況が作り出されていた。


『あらあら…せっかくの可愛い顔が台無しよ…ねえイリュ…今からでも遅くないわ…私たちの仲間にならない?』

「はは……魅力的な話だけど……楽しくなさそうだから遠慮させてもらうわ」

『そう……残念だわ……本当に……残念よ』


 イリュを囲む四方の柱からゆっくりと鋭い氷の剣彼女目掛けて形成された……そして高速で射出される……火球を作り出すも数が多すぎて対処しきれない。


「大丈夫か!」


 その声に顔をあげると彼女の前には伊織が庇うように立っていた。

その右手に握られた銃からは赤い炎を纏った剣が揺らめいでいた。

周囲の氷の剣が見当たらない……イリュの作り出していた火球さえも…そこから導き出される結論にイリューシャは笑みを浮かべた。


「遅かったな」

「ああ…すまん…後は任せろ」


 イリューシャはその場に倒れ込んだ…既に限界を迎えていたのである、彼女の体を覆う魔力の障壁も消え去った……そして彼女から一切の魔力を感じなくなった。

伊織はそれを護る様に数歩前に歩み出ると両方の剣に魔力を纏わせ…新たに会得した『(スキル)』を発動する。


剣閃結界(ソードサークル)』」


 伊織を中心に半径5メートルに円形に淡い光が立ち込めた……祖父より『剣聖』の称号を受け継いだ彼女の間合いである。

この円陣の中は彼女の必殺の間合いであり限界射程でもある。

 彼女の背後から氷の槍がその胸目掛けて高速で伸びてきた………が、それは即座に砕け散った……

それはイリューシャの目でしても捉える事は出来なかった……音速…いや光速を超えるほどの太刀筋であった。


 伊織の手にしたものは彼女自身ののチャットルーム……そしてその内部に祖父により仕掛けられていた伝承された技と技術…その全てであった。

 如月の家の者は全ての者がその素質を持っているが、無我の境地に辿り着いた者だけが試練を受ける資格を得る。

その試練を超えたものだけが受け継ぐ事を許される技と技術の伝承……その中の一つ「心眼」である。

自身を起点にその力量に応じた結界を生み出しその意範囲内の動き…空気、魔力、精霊などの動きを文字通り心の目で察知する物だ……伊織の場合は先天的な才能と感覚で理解しているのだが……


「お前の言ってる魔力を見るって奴……わかったぜ」

「……それは……良かったわね」


 イリューシャは一瞬何を言っているのかと思った……こんな短時間で理解できるとは思っていなかったからだ。

 魔界や神界でも子供達は最初に魔力の流れを感じる事から始まる。

やがてそれは自身から周囲へそして他人へ……徐々に『視野』を広げるのだ。

だがしかしそれは数年はかかる作業なのだ……今回の様にやれと言われてはい出来ました!

なんて事は普通ではあり得ないのである。


(……カイルが…何か仕込んだのか?それもあるが……才能があった……とい言う事か)


 イリュの推測は正解のようで不正解だった……伊織に素質はある。

それはカイルも気付いていた、だから以前の戦闘で自分の戦いを見せることで「他者の魔力」を見せた。

彼女の『相棒(スティンガー)』を使い「銃」と「剣」の両立を見せた。

無限の剣山(ヘッジホッグ)』の兄妹と行動を共にすることで魔力の循環、魔力の共有、魔力の譲渡など魔力に関するノウハウを実戦の中で体験させた……いつか彼女が道に迷った時に進むべき道が見つかれば良いね……的な親切心だった。

彼もまさかこんな短時間で化けるとは予想もしていなかったのだ。

なら後は任せても大丈夫だな……イリューシャは再び目を閉じた。




今、伊織は魔力を感じ取っていた。

言葉で説明するのは難しいが……色として識別している…様な感覚だ。

此方に敵意がある魔力は赤い色として。

味方や害意の無い魔力は白や青い色で……あの時みたカイルの魔法のように鮮やかな感覚に近いなと感じていた。

 またこの両手の中にある『相棒(スティンガー)』からも魔力を感じる……「炎王」と「蒼女」の魔力である。

 あの時、「ヘッジス」と「ホグシー」を両肩に乗せていたあの時の感覚だ。

これが魔力を感じると言う事なのか………

伊織の世界は広がった…今まで剣を捨て銃を選んだが自分はやはり剣を捨てる事は出来なかったのだ。

しかしカイルが…イリュが…お爺様がその道を示してくれたのだ。

 襲ってくる氷剣を斬り伏せ……時には打ち砕く。

一瞬の隙をついて氷の柱の『魔鏡』を打ち砕く。

伊織は今、完全に『魔銃剣士(ソードガンナー)』としての基礎を習得しつつあった。






「なんなのだ!この女!先程とは別人ではないか!!」


今のアネモネ(マトリーシェ)の戦いは魔法特化のイリューシャに対する絶対的な包囲網だった。

なので近接戦闘…伊織が単身で突撃してくれば魔鏡は破壊されこの方法は維持できなくなる。

しかし彼女はイリューシャを守るためその場から動く事は無い。

楽勝かと構えていたモネリスは自身の考えが間違いだと思い知らされた。

このサークル内では彼女の剣が届くのである……既にこのサークル内の魔鏡は全て破壊された……しかも銃撃も出来るとか……相性としては最悪の相手だ。

 また一枚魔鏡が破壊され、この作戦が維持できないほどの状況になっていた。

このままでは此方の攻撃も届かない為非常に不利な状況だ……


『私達では勝てないわね……』


 自分の口からそんな言葉が出た……マトリーシェははっと口を押さえた。

今のはなんだ?私が喋ったのか?モネリス?いやあの娘は私の管理下だ…

 そんな思考が災いして伊織の行動に反応が遅れた。

既に半数近くの魔鏡が破壊され、此方からの攻撃が難しい状況であった。

これ以上魔鏡を減らされると優位性が失われてしまう……2対1では流石に部が悪い。


「よしっ!行くぜ!タイミング合わせろよ!」


 伊織がそう叫ぶとその両手の銃を使い左右の魔鏡を立て続けに破壊する………今までにない速度での銃撃に逃げ場を失ったルミナスは仕方なく戦線から離脱して奥の魔鏡へと転移した。


「いまだ!」


 その伊織の声に反応し彼女の背後にあるすべての魔鏡が炎とともに融解した。

と、同時に今自分の居る魔鏡が結界により固定された……文字通り閉じ込められてしまった。


「いやーここまでうまくいくとは思わなかったな」


 伊織の足元からゆっくりとイリューシャが立ち上がった。

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