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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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凍てつく心9

「…せっかく助けてやったのに…これは無いだろ〜」

「…感謝はするけど……何か余計な一言が多いのよ!」


 ニヤニヤとしながらも打たれた頬をさすりながら紫音を伴ってカイル……アーガイルが帰ってきた。


 (あの状況下で詩音様を無傷で覚醒させるとは)


 目の前の二人を見てネルフェリアスは感嘆の声を漏らした。

若干、方法は正当とは言えないが結果としては最善であった。

 精神催眠の恐ろしい所は操られて居るのでは無く暗示が掛けられているとは言え、自らの意思で行動してしまうという事だ……なのでどんなに正論を述べても本人が認めないので暗示を解く事の成功率はかなり低い。


(最初にあんな事を言い出した時は何事かと思いましたけどね……)













「お前達にやって貰いたい事がある」


 その言葉にルミナスは自分の時代の到来を感じた。


「勿論ですカイル様!この私達に出来る事なら何なりと申し付け下さい!」

「そうかそれは助かる……では早速だが…どちらでも良い…下着を脱いでくれ…勿論下の方な」

「…下着…ですか?」

「ああ……お前達なら色気のある大人の下着を履いてそうだからな…」


 そんな褒め?言葉に2人は赤面する…確かに私はいつカイル様に求められても良い様にそれなりの物を身につけている……まさに備えあれば憂いなし!先人の言葉に深く感動の念を覚えた……と同時に私は魔族だが神に感謝した。

 本日の私はお母様の用意した勝負服に追従したシルクでスッケスケでヒモのような奴だ…お値段もかなりの物だ……勝った!

それを目にしたカイル様はきっと自分の為に此処まで準備していた私に感激し、二人は幸せなキスをしてこの物語はハッピーエンドを迎えるのだ!

みなさまご愛読ありがとうございました。


「それならば私が!!カイル様!しばしお待ちください!今新鮮な物を産地から取り寄せてご用意しますので!」

「…産地?」


 ルミナスはそう言うと自らのベルトに手をかけた。


「しかし…良いのかお前はズボンだし…スカートのネルの方がハードルは低いだろうに…」

「何をおっしゃいます…カイル様に脱げと言われたら本来は全てを脱ぎ去るのが礼儀でしょうに……しかも下だけで良いなんてカイル様は優しいのですね……あ…もしかして二枚御所望なのでしょうかそれならばネルにも産地から取り寄せさせますが…」

「そ…そうか……いや…一枚で十分だ」


 どこか困惑された感じのカイル様を見て……ネルは肝心な事を思い出して戦慄した。

今まさにベルトを抜き取ろうとするルミナスに縋りついた。


「お…お嬢様お待ち下さい!」

「止めないでネル!此処で役に立てなければ本当に私は生きる意味のない女よ!!」

「いえ…お嬢様の心中は痛いほどよくわかります!!私も本来ならこんな事は言いたくは無いのですが…………お嬢様……ご自分が今何を履いておられるかお忘れですか?」

「……何ってシルクの……………え……?!……あ…ああ……ああああああああああ!!!!」


 ルミナスは自分の頭を両手で抱え込み絶叫を上げて天を仰いだ………ああ……神は……死んだ……

 ネルの言葉に思い出した!!なんて事!私とした事がなんてことを!!!!!

この時私は自分が『時間遡行(タイムリープ)』の魔法が使えない事を死ぬほど後悔した。











数時間前




「私とした事が……勝負のタイミングを見誤るなんて……」


 ルミナスはしょんぼりとしながらドレスを脱いでゆく……お母様から託された真っ白なドレスは戦場へは着て行ってはいけなかったらしい……


「大丈夫です…お嬢様…帰って来ればすぐに着替えてカイル様の所に行かなくてはならなくなりますから…むしろ今見せてしまった事でカイル様も早く帰ってもう一度着て欲しいと思っている筈です」

「!!そっそうね!ありがとうネル!あなたの言う通りだわ!」


 カイルは全くそんな事を考えては居ないだろうとネルフェリアスは思ったがこれ以上ルミナスのモチベーションを下げる訳には行かなかった……


「この後戦闘になる事も考えれば……下着も置いていきましょう…幸いにもこのアネモネの職場には替えの下着があるらしいので……」


 ルミナスの発言にネルが戸棚を漁るとそれっぽい着替えが数点見つかった。


「…しかしお嬢様…学生の着替え用なので…お嬢様が身に付けるには些か満足は出来ないかと……」

「仕方ないわ…緊急時ですもの…隠せればいいのよ…豪華さや品格など期待していないわ」


 数点渡された下着から水色っぽい物を選ぶ…無地かと思えば小さなワンポイントでひよこのイラストがついており『PIYO』などとセリフまで刻印されていた……案外アネモネの趣味だろうと考えると自然と笑みが溢れた……それを考えると残りの蛍光色や極彩色の下着も彼女の趣味なのだろうかと思わず唾を飲み込んだ。


「思ったより履き心地は悪く無いわね……しま…む……ああ…駅前にあったお店かしら?」












「あああああああああああああああ!!!!わ……わだじ……の……馬鹿ーーーー!!」


 ルミナスは頭を抱え込み悶絶した……その鬼気迫る状態にカイルもネルも何も言えないでいた。

血涙を流している様に見えるのは幻だろうか……幻であって欲しい。


「…だ…大丈夫か…ルミナス……無理はしなくていいぞ?」

「……はあ…ぐううううう…カイル様…もうじわげ…ありまじぇん……わ…わだし……し…しま……しまむ……らめえええええええええええええ!!」


 ルミナスは一際大きな絶叫を挙げると意識を失いその場に崩れ落ちた……間一髪ネルとカイルがその体を支えた為大事には至らなかった。


「お嬢様……なんと嘆かわしい!!」

「いや……何かすまんな………仕方ない……ネルお前のパンツをくれ」

「ふぁ!?」

「もうお前しかいないから頼むよ」

「くっ……きのこ男に……こんな屈辱を受けるとは……」


 それに先程のルミナスの時と違ってなんか……軽い

 そう思いながらも座り込んだネルが何かモゾモゾと動くとその手をそっと差し出した……


「……ありがとう…ネル!お前の優しさがほんのり暖かく感じるぞ」

「!!余計なことは言わなくていいです!!くれぐれも変な事には使わないでくださいよ!履いたり…被ったり……テイスティングもお断りですからね!私はお嬢様と違って正常なんですからね!」

「……もっと派手かと思ったが……これはこれで俺は好きだぞ」

「!!!!!いいから早く用事を済ませて返してください!!!」


 赤面して一気に捲し立てるネルを見てアーガイルはおやっと感じた。


(こいつ…いつもカイルにキツく接するのは願望の表れか……また楽しみが増えたな)















「……災難…でしたね…」

「ええ……全くあんなきのこ男に辱めを受けた事は犬の噛まれたと思って忘れてしまいましょう……しかし紫音様が無事にお戻りになられたので安心しました…あとはアイリス様だけですね」


 まだ何処か顔から赤味の抜けないネルだが…此処で全員を守る役目を果たしてくれそうだ。

もはや自分たちの出る幕は無いと理解しているマードック達が完全に空気の様になっているので感謝しておいた。

それを確認するとカイルは再び前を向いた。

 いまだにテーブルに座るマトリーシェとその傍に佇むアイリス。


『さて…俺が出来るのは此処までだ……あとは頼むぜカイル』

「……もう感謝すればいいのか…後のことを考えたら恨めばいいのか……」

『でも紫音無事で帰ってきたからいいだろ?感謝されてやるよ』


 後ろからの刺す様な視線に耐えながカイルが独り呟いた。

いまだに合流できないイリューシャと伊織も気になる所だが…なんだかんだとあの二人なら相性が良さそうな気がする……

再び中央まで歩み寄ると再びマトリーシェと対峙した。


「さ…試合再開と行こうか」

「……やってくれたな…カイル」

「まあな…さて今度はアイリスを返して貰おうか」

「…出来るかな?アイリスにお前の言葉が届くとでも思っているのかな?」

「……ま、どちらにしろやる事は変わらないしな!」

 

 マトリーシェが横目でアイリスを見る……アイリスは小さく頷くとゆっくりと立ち上がった。


「カイル……次は私が相手よ」

「…アイリス…」

「ふふふ…そんなに悲しい顔をしないで……私は怒ってなんかいないわ…私を救おうとしてくれていたのよね?嬉しいわ……だから今度は私の番よ」

「…アイリス?」

「今度は私が貴方を救ってあげる…貴方を殺して…永遠に私だけの物に……ずっと二人で……」


 何かに取り憑かれた様に病的な笑みを浮かべる彼女の顔に彼女が異常なある事を察知した。


「……お前……アイリスに何をした!!」


 カイルはマトリーシェを睨みつけた。

マトリーシェは不敵な笑みを浮かべている…

これは『精神催眠(マインドパス)』などとは比べ物にならない程の『呪い』とも呼べる状態だ。



「だから言っただろう?お前の言葉は届かないのだよ」





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