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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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秘密の記憶部屋ーシークレットチャンバー

「あれっ?」

 

 紫音は急速に自我を認識した……さっきまで隣に感じていたアイリスやマトリーシェの気配を感じない……

自分を認識するといままで色あせた映画の様だった過去の記憶が色彩を帯びてより現実的になった…


 そこは先ほどの回想にも出てきたマトリーシェの部屋だった。

しかしそこには先客が居てしかもその二人は生まれたままの姿でお互いを激しく貪っていた。


「!?っっっっ!!」


 紫音は急いで背を向けると出口から出ようとドアに手を触れた……が、触れる事は出来なかった。


(な・・・なんで?!)


 耳まで真っ赤にした紫音はその場から逃れようと試行錯誤を重ねたが、不可能と判断しその場にうずくまると耳を押さえて考える事をやめて情事が終わる事を祈った。












(この人達……猿なの?)


紫音の体感時間にして、数時間が経過し、ようやく彼女は解放された様だった。

この空間は先程の記憶の再生と同様の物らしく、マトリーシェ本人によりプロテクトがかけられていた様だ。

………「結界破り」には効果は無かったが。

 

(……結界を張っていたって事は……やはり大事な記憶なのかな?)


 内容が内容だけに見せられないと言う事も考えられるが……

そんな紫音の耳に二人の会話が聞こえてきた。







「……マリー…魔剣王は貴女を危険視しています…」

「…?何で?私は頼まれたから戦力を提供しているだけなのに…」

「頼まれた?…魔剣王にですか?」

「レイヴンよ…最初はカミュの為にって……今は正式に彼を通して提供しているわ」


 マトリーシェの言葉にカミュは考え込む……


(おかしい…話がかみ合わない……)


 カミュはモウカリーノと懇意にしていたためその辺りの情報も掴んでいた……

彼によればマトリーシェが戦争を終らせたい事を理由にモウカリーノを通してゴーレムを提供している……そう言っていた。

戦線の状況に応じて彼の所に要請が入る……彼の使者がマリーに要望を伝え彼女がそれを製造し提供する……

その凄まじい戦闘力に彼女がもしも敵になった場合を考えて魔剣王は彼女を要注意人物に指定しようとしている……そうモウカリーノは言っていた。


「モウカリーノ殿と取り引きしているのでは……」

「最終的には彼が扱うと言っていたけど……商品の注文と受け渡しはレイヴンよ」


その言葉にカミュの中の違和感が全て一つの結論をはじき出した。

レイヴン…彼が何かを企んでいる…


「…今戦線では貴女のゴーレムの活躍で魔皇帝の帝都寸前まで攻め込んでいると聞きます……これ以上戦力を提供してはいけません…」

「…そうなの?……うん…貴方がそう言うなら……」

「…それとレイヴンには気をつけて…彼は何か隠しているような気がします」

「そうなのよね……胡散臭いから色々探りを入れてみたんだけど……上手くいかないのよね」

「………彼とは私が話をします……マリーはもう恐ろしい兵器は作らないでください」

「……ん…カミュがそう言うのなら……」


 二人の会話を大人しく聞いていた紫音だがここで再びピンクな空気が漂い再び耳を塞いだ。






「……なのですよ」

「うふふ…ホントに?カミュったら…」


 耳を塞ぎ先日習った百人一首を必死に思い出していたら再び二人は会話をしていた……


「……マリー……私は貴女には感謝しています……奴隷である私を解放し……感謝しても仕切れません……魔剣王は私が説得します……だから私を信じて待っていてください……」

「…うん…」

「……よく聞いてください……『カミューリア・ウェルディアス・アルヴァレル』私の『真名』です」

「?!真名……あなたなんて事を!!」


 真名とは個人につけられた隠れ名…魂そのものを支配する『呪名』である。

真名に命令されるとそれを拒否する事は出来ない……命を握られる事と同様なのである。


「……貴女の信頼を得るにはこれ以上の方法はありません…貴女は私が命を懸けるに値する女性だ」

「カミュ………私……『魔猫族』の『咆哮』って技を知ってる?鳴き声で相手の魔法を『解除』する猫族の限定魔法よ……」

「?そうなのですか……それが…?」

「ネアトは魔猫一族なのよ……彼女も私の力を恐れて…彼女の因子を私に埋め込んだの……私の魔法は『魔猫の咆哮』で無効化できるのよ……」

「……マリーそんな大事な事を私に……」

「同じなのよ…私も貴方に命を懸けているの……」

「マリー!!三日後…三日後に私は貴女を迎えに来ます!!」

「…待っているわ……カミュ!」


 再び月明かりの中二人の影が重なった……

またかよ…と思いながら耳を塞ぐ紫音は何故か笑顔であった。

彼女の記憶は暗いものが多かったが……それでも暖かい確かな記憶が……こんなにも素敵な記憶があったのだ。

何故この記憶に結界を張ったのか、紫音は判った気がした。





記憶は終わり 紫音の意識は再びマトリーシェ達の元に戻った。

結界と同じく張り巡らされた『記憶破壊メモリーブレイク』の効果により紫音はこの記憶を覚えていないだろう。

それはここに何度も訪れるマトリーシェにも同様の効果をもたらす………

彼女にとってこの記憶は最も幸せであり……最も残酷な記憶なのだから。





遅くなりました……すっごく遅くなりました……

仕事も一段落してまた時間が取れましたので

執筆を再会します……

亀更新ですが 待って下さってくれた皆様ありがとうございます。

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