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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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失われた記憶~初恋~

私は今、恋をしています。


 物心付いた時にはこの『魔』の貴族の娘でした。

本当は双子の姉がいたらしいのですが、生まれて直に亡くなった様です……

だから私がこの屋敷の時期当主なのです……

なので毎日が勉強でした……私が頑張ればお父様も、お母様もお喜びになられます……誉めてくださいます…だから私は頑張りました…

でも何年か続けるとそれ以上を求められる様になりました。

 苦痛な日々が続きましたがそれを助けてくれたのはお父様の側近のレイヴンでした。

『お嬢様は頑張りやさんですね』

私の警備の仕事に就いたとき…そう声をかけてくれました。

 小さな頃から彼の存在は知っていましたが……何か内に秘めているモノがあるように思えて……一言で言えば『怖い』存在でした。

そんな彼から思わぬ言葉を聞き…張り詰めていた私の心が涙になって溢れ出ました。

涙ながらに話す私を宥めるようにゆっくりと最後まで傍に居て話を聞いてくれました。


 後日、私の勉学の時間や稽古の時間が見直され時間と心の余裕が生まれました。

レイヴンがお父様にアドバイスをしてくれた様なのです。

あぁ……いままで怖いなんで思っててごめんなさい!……貴方はこんなにも優しいのに……



それが『私の初恋』………そう思っていた時期が私にもありました。


 私は幼いながらも好意を持って彼に接していましたが、レイヴンは結局私の事など見ては居なかったのです……

『ファルミラ』ではなく『お嬢様』としてみていたのです。

仕えるべき主人の家族、貴族の娘、次期当主………それが彼の中の私でした。

それからは理想の娘を演じて来ました……心を殺し理想の貴族の娘を演じていたのでした。

考えても見れば私はこの家を継ぐ為に魔道を極めるか、極めた者を婿にしなければならないので…騎士であるレイヴンとは一緒になる事など出来る訳なかったのだ。

そう考えると心は氷の様に温もりを失っていった。




 カミュという奴隷上がりの人間が私の専属騎士になりました…

この頃は異性になど興味はありませんでした。

年上の癖にどこか落ち着きの無いと言うか……自信の無さそうな雰囲気が伝わってきます……

護衛大丈夫なのでしょうか?

彼は綺麗な『眼』を持っていました……魔眼と呼ばれるものです…見る角度によっては宝石の様に輝いて見えました。

彼がいままでの護衛の騎士達と違う事に気付いたのはその翌日からでした。








「…大変…そうですね」


 そう声をかけられて彼の存在を思い出した。

今は書斎で魔道書で課題の魔法形成公式の論文を書いていた。


「…えぇ…大変そうですよ…それが?」


 今まで私の護衛をしていた者が作業中に話しかけるなど無かった事だ。

昨日はお父様の手前『お嬢様』を演じていましたが私自身はこの男に護衛をしてもらう事には抵抗があり、ついキツイ態度を取ってしまっていました。


「…お茶…でも入れましょうか?」


 何故かそんな事を言ってきた……一体何を言っているのかと思ったが……メイドの姿は見えなかった。


「先程他の方が呼びに来られて……忙しそうなので私が許可しました…あ…駄目でした?」

「……そうね…本来なら私に一声…」

「あぁ…そうですよね!すいません…でも忙しそうだったので……」


 一体何なのだこの男は……お父様の命令だったので了承はしたが……礼儀の一つも出来ていやしない……


「…それに……一生懸命にされていたので…喉が乾いたのでは…ないかと思いまして」

「……そうね」


 そう言われて見れば喉に渇きを覚えた……

そう告げるとカミュは嬉しそうにメイドの残したティーセットを用意し始めた。


『…変な男だ…』

 

 そう評価した。


 暫くすると室内にいい香りが漂った……嗅いだ事の無い香りだが…上質な香草であることだけは理解できた。

以外にも彼のくれた紅茶は美味しかった……作法云々はこの際目を瞑る事にした。

『美味しい』と感想を漏らすと『慣れてますから』と言われた。

騎士の癖に紅茶を嗜む趣味があるのだろうか。

その後の作業は不思議と捗った。






 二日後、馬車で移動している際に外見ると同年代の娘達が出店で何かを買い、食べながらお喋りをしていた。

私自身一人で出歩く事もなければ友人と呼べる様な存在も数える程であった…ましてやこんな街中で庶民の食べ物を食べる様な存在など居ないが。


「食べたいですか?」


馬車の中、向かいに座っていたカミュがそう言って来た。

先日に続き何なのだ…この男は?専属騎士になったからと言っていい気になっているのだろうか?


「私はそんな事など……」


 言い終わらないうちカミュは外に飛び出し出店に駆け込んだ……そして両手に何かを買って戻ってきた。



「果実の砂糖漬けの様ですね良かったらどうですか?」


そのうちの1つを私に差し出してきた。


「私は欲しいなんて言ってないわ」


 思った以上に大きな声が出てしまい、これでは欲しいと言っている様な物ではないか……


「…いえ…買い過ぎましたので…良かったら食べて貰えませんか?」

「……し…仕方無いわね…貸しなさい」


……そう言われては仕方ない……仕方なく食べてあげる事にしました。


「…!……おいしい…」


 庶民の食べ物など……と、馬鹿にしていたのですが……これは素晴らしい美味しさです…

三種類の果実の甘みを詰め込み風味を失わない程度の甘さでその食感も失われていないなんて……

気がつくとカミュがにこにこしながらこちらをを見ていた…


「何よ」

「いいえ…美味しかったですね…買いすぎた時はお願いします」

「……仕方ないわね…その時はまた付き合ってあげる」


『変わった男だ』

そう評価を改めた。







 周辺貴族の集まりでそれぞれの魔法を披露することになった。

そのような話は聞いていなかったのでいつも使っているロッドを持って来て居なかった……まぁ問題は無いけど。

借り物のロッドでは調整が難しいが適当な魔法でも見せておけば問題は無い………筈だった。


「おお!!次はガノッサ殿のご息女ではないか…さぞや素晴らしい魔法を見せて下さるのだろう!」


 空気の読めない貴族共がとんでもない事を言い出した……このタイミングで家の事を出さないで欲しいものだ……

しかし私は『魔』の貴族、ガノッサ・ギゼルヴァルトの娘!ファルミラ・ギゼルヴァルトだ!家の名誉の為にもやるしかないのだ!

私の目の人が『火炎陣フレア・サークル』を使ったので…その上位を行ってみようと考えた。


「全てを滅する炎獄の魔竜よ!『炎獄魔竜陣フレイム・ドラゴニカ』」


 詠唱に呼応して足元から巨大な炎の竜が螺旋を描くように現れ上空駆け上っていった。

しかしながら若干、制御が難しく左手に魔竜の尾が当たり、火傷を負ってしまった……プライドが許さずその手を後ろに隠した。


「おお!素晴らしい術であった!流石は『魔』の一族!」


 なんとか家の面子は保てた様だ…… 

ふと後ろ手に隠した左手に冷たいものが握らされた。

振り返るとカミュが濡れたハンカチを当てていた。


「氷水で冷やしてあります…手を冷やして下さい」


 周囲には聞こえない小さな声で囁いた…私はそれに驚いた。

皆は魔法に釘付けだった為気付いた者はいなかったであろう………勿論、魔法を見ていればの話だが。

では何故カミュは気付いたのだ…それは魔法を見ていなかったからだ。

魔法を見ていない……では何を見ていたのだ……それは……

私を見ていた。

カミュはいつも私を見ている…貴族の令嬢…とか『魔』の一族の娘としてではなく……一人の娘…ファルミラとして……!


「あ……ありがと…」


 その事に気付いてしまい急に気恥ずかしくなった…いつもの余裕のある態度が取れなくなってしまった。


「どういたしまして」


それでも彼はいつもと変わらぬ笑顔でそう言った。


『彼は良い人だ』

そう評価を改めた。



 先週、隣町からの帰りに襲われた。

魔皇帝の放った刺客らしい…この時は知らなかったが、以前から魔剣王の側近が何人も襲われていたのだった。

勢い良く走る馬車の揺れが馬車内のファルミラを不安にさせる……


「お嬢様を何としても逃がせ!」

「二騎残れ!足止めしろ!」


 併走する騎馬から護衛の兵士の怒声が聞こえる……状況は良いとは言えない様だ……

不安を駆り立てられ隣の人物の手を握る……


「大丈夫ですよ……」


 その声は…カミュではない……いつも一緒のメイドのカリナだ……大丈夫と言いながらも彼女が震えているのが伝わってきた。

今日はカミュはいない……今日はお父様に付き従い王城に出かけている……

だから今日は今までと同じと様に護衛の騎兵を連れて……用事を済ませて帰る……それだけの事だったのに………


「!!ぎゃあ」


 御者がやられたらしい…馬車は大きく跳ねると街道沿いの木に激突し、止まってしまった……





「…様…お嬢様!!」

「…う……!カリナ?」

「お嬢様!ご無事で!」


 見ればカリナも額から血を流していた……外からは剣と剣のぶつかる音が激しく聞こえていた。

彼女に手を引かれ馬車の外にでた……反対側なので戦いの場所からはこちらが見えない様だ。

八人いた護衛は最早あと三名……今そのうちの一人が切り伏せられた。

敵は五人……暗殺者アサシンの様だ……


「…ファルミラ・ギゼルヴァルトだな……お命頂戴する!」


 刺客がこちらに気付き襲い掛かってきた…


「お嬢様!お逃げくだ……がふっ!」


 間に入ったカリナが蹴り飛ばされる……暗殺者アサシンの手には鋭い短剣ダガーが握られておりそれは今、まさに振り下ろされる所であった。


『あぁ……死んじゃうのか……』


 そう考えると不思議と心が穏やかだった……


『もう一度…彼の紅茶…飲んでも良かったな……』



強い衝撃に顔をしかめた……痛みは………無い。

目を開けると空を飛んでいた……隣には私を抱えた黒い鎧の騎士が居た……その目は赤く禍々しい。

振り返ると先程襲い掛かった暗殺者アサシンは両断されていた。


「……味方?」

『お嬢様…遅くなりました』

「……カミュ!?」


着地するとふわりと私を地面に置いた。


『すぐに終わらせてきます』


 そう言うが早いかその姿は掻き消えた。

次の瞬間には残りの四人の刺客が……刺客だった物がその場に次々に倒れこんだ。


「………」


 私はその場にへたり込んだ……何なのだこの力は…圧倒的ではないか!

魔皇帝の暗殺者アサシンと言えば過去の歴代の要人を悉く闇に葬ってきた殺人集団な筈だ……

この圧倒的な戦力差は何なのだ……


遅れて数騎の騎士が到着した……このタイミングでは私は既にこの世には居なかっただろう……

カリナは意識を失っていたが命に別状は無かった……残りの二人の騎士も負傷はしていたが命には別状は無かった。

馬車は車軸が破壊されていた為この場に乗り捨てる事になった。


「……他にも刺客が居ないとは言いきれません…素早く撤収しましょう」

「……わかりました……」


 騎士の言葉に頷くと立ち上がる……カリナと負傷した騎士は増援の騎士の馬に乗り運ばれてゆく……


『お嬢様…帰りましょう』


 その言葉に振り返る…そこには黒騎士カミュが居た……黒馬に乗って。


『黒馬の王子様』


 そんな単語が脳内を埋め尽くした……幼い時に呼んだ御伽噺…黒馬に跨って颯爽と姫を救い出す黒装の王子の御伽話を思い出した。

彼に横抱きにされる形で馬に乗り込み屋敷に向う……


彼の顔を見上げた……黒い鎧に包まれていて表情は窺えないが……と思った瞬間に彼の鎧が砂のように崩れ去った。

鎧自体が魔素で出来ていると後から聞いたがこの時は驚いたものだ。


「もう…大丈夫ですよ」


 その視線の先には街の城壁が見えていた……


(あぁ……そうか…そうだったんだ…)


 私は理解した…そして評価を改めた。


『彼は運命の人』






俺はやれば出きる子でした!


次回は来月です。

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