スキル【検索】は信用できへん
「ケン〜! この近くに川ってないん?」
手持ちの水、まだすっからかんやないんやけど。足りんなる前に汲みたい。
水入れる皮袋みっつも持っとんのに足らんてどうやねんて思うけど。やっぱ手ぇとかちゃんと洗いたいからしゃーない。
しゃーないんやけど、重いんだけはほんま敵わんわ。
もうちょいしたら私ムキムキになれるんちゃう?
ぱっと目の前に小さな画面。
あるないくらいやったら読みあげてもらわんでもいけるやろ。私かてこっちの言葉もだいぶ読めるようになってんから。
そう思てんけど、なんやえらいズラズラ文字の列が並んどる。
最初の単語はわからへんな。あ、これ知ってる。数字と単位は頑張って覚えたからな。五リッター、距離やってことはわかってんねんけど、何が五リッターなんかはわかれへん。
「あかん。ケン、読んで」
『近くに川はありません』
えらい短いな? ケン端折っとるやろ。
「五リッターて書いてるやん」
『現在地から五リッター四方の地図上に河川の記載はありません』
それが全文、てことはやで?
「ケン、いっつもちゃんと読んでへんかったん?」
『参照文献数四万八千六十一、カタルグ編最新版アミサード地方詳細地図第二百三十二項ライスシャー周辺地図三、ディクション全国地図アミサード地方版――』
なんや急に高速詠唱始まってんけど?
『――フォーンドゥと一緒に空から地上を見てみようその一アミサード地――』
「わかったわかったごめんて。これからも端折ってくれてええから」
さっきの画面、こんなに書いてへんかったはずやろに。ケンのやつ当てつけに引っ張り出してきよったな。
ほんまめんどくさいやっちゃ。
なんか異世界転移ってやつをしたらしく。ある日突然まったく知らん場所に来てた。
そこでキラキラした人型が説明してくれたんやけど。
私は【検索】ってスキルが使えるんやって。
スキルはケンて呼んでんねんけど、これがほんま思とるように使えへん。
言葉は通じるようにしてもろてんねんけど、字ぃは読めへんかったから。読み上げてて何回も言うてんのに、聞く度に画面で出してきよるし。
鑑定やなくて検索やからて堂々と間違うたこと教えてきよるし。
スキルもレベル上がるらしい、てもしかして端折ったり当てつけたりするん、レベルが上がったからできるようになったとかゆわへんよな?
ケンに聞いたけど、近場に湖も池もないらしい。
ほんなら節約せなしゃーないな。
「ぴゅい?」
足元からの鳴き声に下を見たら、真っ白のまん丸が見上げとる。
「セバスちゃんおまたせ。行こか」
「ぴぃ!」
セイバットて魔物のセバスちゃんは、懐いてくれたから従魔登録して一緒に行ってる。ちょっと大きなったけど、まだ手乗りサイズのニセエナガやな。
成長したら羽根も色変わったりするらしいけど、セバスちゃんは真っ白のまま。まだ雛てことなんやろな。
ひと鳴きして走り出したセバスちゃん。小さい割には走るの速いんよな。
うん、やっぱあほ毛と尻尾の羽根がピコピコしてるんかわええわぁ。
セバスちゃんの走り姿に癒されとるうちに周りに木ぃ増えてきた。
こっち転移したけどまだすることないから、とりあえずおっきい街目指しとるんやけど。結構遠いみたいで全然着かへん。
まぁまだ時計買うお金貯まってへんし、ええっちゃええねんけどな。
一応道は続いとるけど、やっぱちょっと足元悪なってきた。
「セバスちゃん、こっち来んか?」
ちっこいセバスちゃんにはちょっと歩きづらいやろて思て手ぇ伸ばすんやけど、セバスちゃん、なんやキョロキョロしながら止まってもうた。
「ぴっ! ぴぃっ!」
「セバスちゃん?」
急に鳴いた思たら道逸れて走り出したんやけど?
慌てて追いかけてったら、なんかちょっと開けたとこに出た。
真ん中に二メートルくらいの広さの池なんか泉なんかわからへんけど水があって。底見えるくらいきれいやから、湧き水なんやろか。
飲めるんかな思てたら、セバスちゃんが水面をツンツンして大丈夫やて教えてくれた。
「ありがとうな、セバスちゃん」
「ぴぴぃ!!」
セバスちゃん、絶対ドヤ顔しとるよな、これ。
なんにせよ助かったわ。これなら水も汲めるし水浴びも洗濯もできそう、やけど――。
「ない言うたやん」
ケンて呼んでへんから応えてくれへんのはわかっとるんやけど、愚痴ってまうのもしゃーないよな。
まぁ多分言うたところで『地図には載っていません』とかなんとか返されるだけなんやろけど。
ほんま言うこと信用できへんわ。
水汲んで、洗濯の前に水浴びとこか。
前にどうせ洗うんやして思て服のまんま水に入ってみてんけど、脱ぐのめっちゃめんどかってん。ほんまは服着たまま入りたいんやけどな。
いつ誰が来るかわからんとこでマッパで水浴びせなあかんとか道中のトイレとか。もうほんま今まで通りの羞恥心のままやとやってられん。
ラノベやったら都合のええ浄化魔法とかそもそもトイレ事情とかまるっとないことにされとるけど。実際そういうわけにもいかへんもんな。
こんなけ羞恥心なくなってもうたら、私あっちに戻ったらもう怖いもんないんちゃうか。
「ぴいっ!! ぴぴぃ!!」
「どうしたんセバスちゃん?」
あほなこと考えとったらなんかセバスちゃんが騒ぎ出した。
うら若き乙女やねんから恥じらいを持てて言われとるわけやなさそうやけど。てゆうかそもそもうら若くはないんやけど。なんやろか。
タオル代わりの布で身体拭いてさっさと服着て――て、ポケットなんか入っとんねんけど?
手ぇ突っ込んだらもふっと柔らかい。
覗き込んだらなんかと目ぇ合った。
白いもふもふに、真っ黒の目ぇと鼻。
じぃっとこっち見てんねんけど。
「……ケン、これなんなん?」
ポケットの口広げて中見せて聞いたら、目の前に画面が出てきた。
あぁもうほんま気ぃきかんやっちゃな。
「読み上げてて」
『これはアーミーバードです』
「ほんならアーミーバードについて」
『アーミーバード。魔物。適応能力が高くどこにでも生息できるが、木や地面の穴にいることが多い。雄は茶色、雌は灰色の体毛で、稀に白色の個体がいる。主にその愛らしい姿から従魔として人気だが、戦闘能力はない』
魔物やけど襲ってきたりはせんてことやな。ほなよかったけど。
「咬んだりせえへん?」
『該当する項目がありません』
咬めへんみたいやな。ほならいけるか。
掴んで引っ張り出したら、手のひらサイズの毛玉が出てきた。
急に宙ぶらりんになってびっくりしたんか、なんやわしゃわしゃ脚動かしとる。
ちっちゃいけど見た目は超短足の子犬みたいやな。おでこの辺りから背中はグレー、ぺったんこの顔からお腹と脚は白、尻尾は見当たれへん。
わかっとったけど、全然軍隊でも鳥でもないやんな。
てゆうか、なんかこんな犬おったな。もっふもふの子犬が転がってんの動画で見たわ。名前なんやったかな、なんちゃらパラシュートみたいな感じやってんけど。あかん思い出されへん。てゆうかもう向こう帰るまでわからんままやん。どないしよ、めっちゃ気持ち悪いやんか。
脚わちゃわちゃさせとるん見ながらそんなこと考えとったら、アーミーバードが急にピタって止まった。
「なー」
なんか気ぃ抜けた猫みたいな声で鳴いとんねんけど。
「んなー」
名前鳥で見た目犬で鳴き声猫かいな。わけわからんなるわ。
てゆうか首根っこ掴まれて宙ぶらりんなっとるもんな。はよ放したらな。
「ごめんな、はよ帰り」
そう言うて地面に置いたってんけど、なんやちっとも動かへん。
「ぴぴっ! ぴぃっ」
ちょこちょこセバスちゃんが寄ってきて、なんかアーミーバードに向かって鳴きだした。
「ぴーっ! ぴい、ぴぴぴぃ!!」
「なー」
「ぴぃぃっ!!」
「んんなーん」
なんか話しとるみたいやねんけど、何喋っとんねやろな?
「どないしたん?」
「ぴい!」
声かけたらセバスちゃんが鳴きながら近寄ってきた。
手ぇ出したら乗っかってスリスリしてきよる。
アーミーバードはそんままやけど、まぁそのうちどっか行くやろ。
なんや間違えて入ってもうたんやろしな。
火ぃ熾して洗濯して。森ん中やけどちょっと開けとるし、服乾かな重たいし、今日はここで泊まることにした。
せっかく火ぃもつけたしな。ライターも着火剤もあらへんから、毎回一苦労やねん。
ほんま、水と火ぃ、もっと楽に使えるようになってくれたらありがたいんやけどな。
アーミーバードはいつの間にかおらんなってた。移動してんの気付かんかったわ。あんな短足やのに、動くの結構速いんかもしれんな。
「セバスちゃん、食べよ」
「ぴぃ!」
いつもの干し肉と乾燥野菜の汁物をセバスちゃんと分ける。
携帯用のパンて普通に食べられへんくらい硬いから、汁物必須やねんな。
味噌か醤油あったらええねんけど。そのうちどっかで見つからへんかな。
同じもんばっかやのに、嫌がらんと食べてくれるセバスちゃん。ちっちゃいわりには結構食べよる。
セイバットのことも知らなあかんと思て、ニワトリ――やなくてコーケコウの書いた観察日記もちょっとずつ読んでんねんけど。
セイバットだけやなくて、大抵の魔物はいろんなもんから魔力を取り込んでるんやて。
そんで従魔は主人の魔力をなんぼかもろとるらしいねん。
私は魔法なんか使えへんから、セバスちゃんは食べもんとかから魔力もらわなしゃーないんやろな。
そう考えたら従魔にして悪かったんかもしれんけど。せめて好きなだけ食べてもらおか。
「ぴい! ぴぴぴぃ!」
朝はいっつもセバスちゃんが起こしてくれる。
もうちょい寝てたい時もあるんやけど、まぁ目覚ましないのに起きれてんのはセバスちゃんのおかげやしな。
「おはようセバスちゃん」
「ぴぃっ!」
セバスちゃん、朝から元気やなぁ。
簡単やけど朝ごはん食べて、出発すんのに荷物なおしとって気付いた。
干しといた服のポケット、なんか膨らんでんねんけど。
近寄って中見る。やっぱそうやよな。
白いもふもふ、黒い目ぇと鼻。
昨日の子、やんなぁ。
「ケン。これて……」
目の前に画面。だからほんまなんでこっちは学習してくれへんねやろな。
「読んでて」
『これはアーミーバードです』
「それはわかっとんねん。なんでまたここにおんの?」
『アーミーバードは体躯に合った穴に潜る習性があり、木や地面の穴のほか、貝や壺、建物の隙間などに居着くこともある』
自分で掘るてわけでもないねんな。
「適当な穴ないからここに入っとるてことなん?」
『その可能性もあります』
ほんならちょうどいい穴空けたったらいいんか。
そう思てケンに向いてる場所聞いて、木の根元に穴掘ってその前に引っ張り出したアーミーバードを置いたるんやけど、全然入らへん。気に入らんのかな思て何個か穴掘ってみても全滅。そのうちなんかプルプル震えだした。
「ケン、なんかプルプルしとんねんけど? 読んでや」
『アーミーバードは長時間外に出ていると死ぬことがあります』
「死ぬん??」
慌てて穴に入れようとするんやけど、イヤイヤするみたいに短い脚をバタバタさせてもがかれる。あんたの命懸かっとんねんからそんな場合やないやろに。
あかんわ、もうしゃーないな。
とりあえず今着てる服のポケットに頭突っ込んだら、バタバタすんのやめて自分から入ってった。中で器用に反転して呑気にポケットの口からこっち見とる。
地面の穴はあかんのに、なんでポケットでええねん?
でもまぁポケットに目鼻あるもふもふ詰まってんのはかわええな。しゃーないから暫くこれで行こか。
「町まで行ってもうたら従魔登録せなあかんやろけど、途中でどっか好きなとこあったら行ったらええからな」
「んなー」
一応声かけたらええ返事された。
わかっとんのか知らんけど。
ライスシャーて町に着くまでの三日間、アーミーバードは結局ポケットん中入りっぱなしやった。
「もううちん子なるか?」
「なー」
わからんけどええんやろ、多分。
夕方に着いてからギルド行って従魔登録してもろた。これせな宿泊まられへんのよな。
仕事は明日探そかな。
アーミーバードもセイバットと同じで、私が食べるようなもんをちょこっとだけ食べて、あとはどっかから魔力をもろてるらしい。
ギルドの調査職も稼げる仕事やあらへんけど、こんくらいなら食い扶持増えたてほどのもんでもないわな。
「まぁよろしゅうな」
「なー」
「セバスちゃんも仲良うしてな」
「ぴぃっ」
どっちからもええ返事もらえたし。あとは名前決めんなな。
セバスちゃんと同じ感じでつけるとアバちゃん……おばちゃんかあめちゃんみたいやな。
ほんならうしろ取ってミド……ならミドリでええんやない? 雌やしミドリさんで。ミドリちゃんよりはミドリさんやもんな。なんとなく。
「ミドリでええ? ミドリさんで」
「んなー」
それんしても、戦闘職ちゃうのに従魔ばっか増えとるな、私。
次の日は朝からギルドで仕事探して。
まぁできそうやったんが『資料作成の手伝い』てやつ。ケンの出番はないやろけどな。
指定された場所は町の外の、なんも植わってない畑の中にぽつんとある小屋やった。そういや町の周りは畑だらけやな。何の畑か知らんけど。
依頼主は若い夫婦。てゆうか、私より若いんちゃう? 異世界てやっぱ結婚するん早いんかな。
「こんなところですみません。家だと親に見つかってしまうので……」
人の良さそうな旦那さんがそう謝ってくれたけど。
親に見つかるてどういう意味やろか。
奥さんもめっちゃ感じいい人やったから、親御さんに怒られるようなことしとるようには見えんくて。
詳しく聞きたい言うたら教えてくれた。
ここライスシャーは小麦の生産地で。
ふたりともこの町の出身やねんけど、お互いの家の栽培方法が違とって困っとるんやて。
てゆうか、鶏肉みたいにこれも私の知っとる小麦やないかもしれんけど。パン作るやつではあんねんな。
てか小麦の産地がライスて。やっぱあっちの言葉わかっててふざけてつけてるやろほんま。
「僕たちは自分の家の育て方にこだわるつもりはないんですが、親の方が気にしていて」
「自分たちの方法が一番だと信じているので、顔を合わせてはケンカばかり。私たちもどちらかを選ぶのが難しく……」
ふたりは今年結婚したばっかりで、畑は次のシーズンからやるつもりやねんけど、どっちの家のやり方でするんかで親同士がモメとんねんて。
ふたりとしては仲良くしてほしいから、両家に納得してもろたうえで選びたい。けど自分たちふたりが調べただけやと説得力に欠けるからギルドに依頼出して、それを私が受けたてことやな。
やったらケンにも出番あるかもな。
小屋ん中にはふたりが集めた資料が分けられて積まれとった。
「私の父が北方の産地の土づくりと肥料を参考にし始めたのが十年前なのです」
「うちはこの地域の昔ながらの方法で栽培していて」
奥さんとこが他地域、旦那さんとこがこの地域、資料はそれぞれ実家のやり方と十年分の大体の収穫量が書いてあるんやて。
「とりあえずリストにして比べてみますね」
「リスト?」
「並べて書くってことです」
ふたりが畑の準備やらしてる間、ここ使ってええて言われた。
新しい紙もろて、フリーハンドで縦横線引いて。ケンに読んでもらいながら書き出してく。
大体旦那さんとこの収穫量の方がええねんけど、十年前と五年前と二年前は奥さんのとこがめちゃくちゃ多くて、逆に旦那さんとこはがくっと下がっとる。
普通で考えたら、この年になんかあったてことなんやろな。
「ケン。十年前と五年前と二年前に共通して起こったことてなんかある? 読み上げてな」
『新年の祝いの日の儀、今年の抱負会議、挨拶の日』
「そうゆうんやなくて、もっと自然現象ちゅうか」
そもそもそれほかの年もやっとるやろし。なんやねん抱負会議て。会社の新年会か。
『日昇日没、天候気温変化、地殻変動、海面低下』
「そんな毎年当たり前のことやのうて、この地域でその三年にだけ共通するようななんかあらへん?」
当たり前やないえらいもん混じっとったような気ぃもするけど、とりあえず今は関係あらへんしな。
『天候不順』
お、なんやそれっぽいの出てきたわ。
「不順の内容は?」
『少雨、気温の低下』
ケンにその三年の降雨量と平均気温を出してもろて書こう思てんけど、さすが異世界、きっちり降雨量や気温測っとらんみたいで該当ない言われた。なんかの観察記録や日記やらで「いつもよりも雨が少ない」「暑くならない」とか書いとった程度みたいやな。
てことはやで。奥さんの実家が参考にした地域の名前……どこやったかな。
「あったあった。ほんならケン、ターウサン地域の気候てここと比べてどんな感じ? 読んでや」
『ライスシャーのある内陸地より雨が少なく涼しい傾向がある』
やっと見っけて聞いてみると、案の定やった。
多分奥さんとこの育て方は低温少雨の場合に向いとんねやろ。で、普段は旦那さんとこの昔からのやり方が合っとる、と。
いちいち読んでもらわなあかんから、資料からデータ抜き出すんはそれなりに時間かかったけど。まぁそれらしい結果出たからよかったわ。
……てゆうか。ケン、これ読んだんやったら全部検索できるんちゃうか。
奥さんとこの資料を持って。見せたてしゃーないてわかってるけど、これやて示すのに振ってみる。
「……ケン。この資料に書いてあった、肥料の参考にした土地ってなんてとこ?」
目の前に画面。ああもうそうやったなほんまに。
「読んでて」
『ターウサン。大陸北部に位置する小麦の産地です』
「収穫よかったのいつ?」
『十年前、五年前、二年前です』
一瞬やん。
私何っ回も読んでもろて書き出してんけど。
できるならできるて早よ言うてほしいわほんま。
見やすいようにリスト整えて説明したら、ふたりともなんかすごい感激してくれた。
「ありがとうございます! 両親たちにもこれを見せて話してみます」
「土づくりは考えるとして、肥料は気候の様子を見て途中から変えてもいいかもしれませんね」
「それが上手くいったら、この地域全体の収穫量が上がるかも」
なんや盛り上がっとる。若いってええよなぁ。て私もまだ二十代やけどな。
「毎年の雨の量とか気温とか、調べて残しとくとあとで役に立つかもしれませんよ」
蓄積データは大事やからな。
よければリストの作り方を教えてほしいて言われて。お昼もごちそうになって。
なんやかんやで宿に戻ったんは夕方やった。
「これで親御さん同士も仲良うやってくれたらええなぁ」
きっと親御さんもふたりも、どっちもお互いのこと大事に思てんやろなぁ。
……親、なぁ。
向こうへは元の時間に戻れる言うとったけど。私の体感やったらこっち来てからもう結構経つもんな。
「ぴい、ぴぃぴぃっ!!」
「なー」
テーブルの上のセバスちゃんと、ポケットん中のミドリさんが同時に鳴き出す。
なんや、慰めてくれとんかいな。
「ありがとやで」
セバスちゃんとミドリさんを順番に撫でて。
私的には長いこと会うてないけど、元々家も出とったし、そこまで寂しいわけやない。五人姉妹弟の真ん中なんかそんなもんやで。
今はセバスちゃんもミドリさんも、あと一応ケンもおるし。
せっかく異世界来たんやから。ちょっと……やなくてかなり不便なこともあるけど楽しまんとやな。
もうできそうな依頼もないし、次の町目指すことにした。
「ケン〜。こっからシューマウンターまでの道沿いで、次の町までどのくらい?」
目の前に出た画面、二百三十リッターて書いてんな。
「一応読んでや」
『約二百三十リッターです』
お、合うとった。
「どんくらいかかる?」
『約四百六十メッターです』
「それ休憩なしで歩いたらてことよな?」
普通何日かかるとかやんな? なんで時間で返してくるん?
一日が五百メッターやから、ほぼ丸一日。
歩けるわけないやん。
「もうええわ。行こか、セバスちゃん」
「ぴぃっ!」
いい返事して歩きだすセバスちゃん。
「んなー」
「ミドリさんはそこおりや」
ポケットの中でもぞもぞしてるミドリさんに声かけてから、私も歩き出す。
結局何日かかるかわからんままやけど、そのうち着くやろし。
まぁ、気楽にいこか。




