雨水〈3/3〉
二十四節季の一季につき3話で展開していきます。
そのため、全72話になる予定です。
小説を書くのはこれが初めてなんで温かい目で見てください。
「なんで節峰が、ここにいるんだよ……」
いつも掃除をしに来ている事務室。
その床には散らかっているファイルや書類。
そこにはフードを被った男がしゃがみ込んでいた。
男が発した声は俺がよく知っている声だった。
「それはこっちのセリフだよ…………………なにしてんだよ!」
「平山…!」
フードの男は同じクラスで隣の席の平山 千冬だった。
無音の時間が続いた。
先に口を開いたのは俺だった。
「お前、岩倉の件を調べに事務室に入ったのか?」
事務室には、先生から生徒まで多くの人の個人情報が記載されているファイルや書類がある。
そのため、基本的に一般生徒が先生に言ったところで入れるような場所ではない。
それだからこそ、平山は岩倉の情報を調べるために夜の学校に侵入をしたのだろう。
「そうだよ。岩倉のやつが不登校になっちまった以上、俺が直接に会って話すことはできないだろ?」
「だから、せめてあいつの家の住所さえ分かればまた会って話せると思ったんだ……。」
「もう一度会えれば、不登校になってしまった原因も知ることができるかもだしね、」
俺は少し怖くなった。
この平山 千冬という男は会ってたった数週間のクラスメイトのために不法侵入を犯すのだ。
『不法侵入(住居・建造物侵入罪)とは刑法130条に記載されており、
3年以下の懲役(または拘禁刑)もしくは10万円以下の罰金に処される犯罪のことである。』
「確かに平山の気持ちもわからなくもない…。」
「けど、今この状況を誰かに見られてみろ?」
「事情を知らない誰が見たら犯罪者と同じだ!」
「どうしてこんな方法で情報を掴もうとしたんだ?」
平山は口を開いた。
「俺が岩倉のことを悩んでいた時、他クラスの女子が急に話しかけてきて…、」
「その女の子に事情を話したら色々手伝ってくれたんだ。」
「岩倉の住所を手に入れる方法やその手順とか考えるのを………。」
納得した。
確かに、学校侵入なんて行為は平山1人で実行することはできないだろう。
俺はすぐに聞き返した。
「おい…平山、……じゃあこの侵入は、お前1人で考えたわけじゃないんだな?」
「一体、その他クラスの女子ってのは誰なんだ?」
平山は首を横に振った。
「悪いな、節峰……。」
「俺はその子のことについて聞かれても何も答えないのを条件に手伝ってもらったんだ。」
その考えた侵入は失敗したのに、なぜ共犯者をかばうのかわからなかった。
俺は呆れた顔をした。
俺は後ろを向いた。
そこには俺が開けてそのままの扉があった。
その時、俺は一つの違和感を感じた。
「あれ…?俺、どうやってここまで来たんだっけ?」
ふと口に出したこの言葉は、なにか『核心』をついていたような気がした…。
「なぁ、平山…………………。」
「…………………白崎 彩音……って知ってるか?」
平山は驚いた顔をした。
「なっ!?」
「節峰!お前なんで白崎さんを知ってるんだ!?」
やはり、白崎 彩音が共犯者だった。
今考えてみればおかしな話だ。
急に初対面のやつに話しかけて相手に関係ある話と言い切ったこと。
都合よく俺が待ち伏せした場所に現れたこと。
塾では使うことはないであろう懐中電灯を持ち歩いていたこと。
思い返してみれば2階の窓が空いているのに気づいたのも白崎さんだった…。
もしかして、と思い平山に聞いた。
「平山、お前は昨日も学校に侵入したか?」
平山は首を傾げた。
「白崎さんと予定していた侵入日は今日だから昨日は侵入してないけど、」
すべて手のひらの上で転がされていたのだ。
しかし、なぜ白崎さんがこのようなことをしたのかは分からない。
「平山、お前白崎さんの連絡先って持ってるか?」
そう聞くと平山はすぐスマホを出した。
「あるよ。まださっき手に入れた岩倉の住所しか送ってないけど…、」
そこにはすでに既読の文字がついていた。
俺は平山に聞いた。
「白崎さんは岩倉の住所を知りたがってたのか?」
平山は答える。
「そうらしいよ。」
「岩倉くんとは仲良かったからまた話したいって言ってた。」
俺はすぐに平山からスマホを奪い取って送信を取り消した。
平山は俺の腕を掴んだ。
「節峰!俺のスマホだぞ!返せ!」
俺はスマホを返した。
その時スマホが振動し始めた。
白崎さんから電話がかかってっきた。
平山はすぐに出た。
「ごめん白崎!同じクラスの節峰にバレちゃったんだけど、」
スマホの奥から聞こえてきたのは一言だけだった。
「ありがとう。さようなら…ー」
そうして電話は切れてしまった。
この時すべてを察した。
「平山、岩倉の住所を俺にも送ってくれ!」
平山は少し戸惑った。
「いいから早く!」
平山はすぐに送った。
「おい!どーゆーことなんだよ!節峰!」
平山はまだ白崎さんに利用さていただけということに気づいていない。
俺は平山から送られた住所をマップ検索にかけた。
「平山!逮捕されたくなかったらちゃんと事務室を元通りにして、鍵を職員室に戻して帰れ!」
そう言って事務室を出て清掃部の部室に行きマスターキーを元の場所に戻し部室の鍵を閉めた。
最後に2階に上がり職員室に清掃部の部室の鍵を戻して来た道と同じく窓から校舎の外へ出た。
そして俺はすぐに岩倉の住所へと急いで向かった…。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
「やっぱり、ここに向かうと思ったよ、」
白崎さんは微笑んだ。
「思っていたより早かったね?走ってきたのかな?」
岩倉の家に着くとそこには白崎さんが立っていた。
時計を見たが、時間はとっくに20時を過ぎていた。
でも、今はそんなことはどうでもいい…。
「白崎さん…色々聞きたいことはあるが、まずはこれから聞かせてくれ。」
「白崎さんがそこまでして岩倉の住所を知りたかった…いや、岩倉に会いたかった理由はなんだ?」
白崎さんは顔を近づけてこういった。
「それはもう、なんとなく感づいてるんじゃない?」
俺は深呼吸をして呼吸を整えた。
確かになんとなくだが察しはついていた。
不登校になった岩倉に会いたがる理由はきっと…
「岩倉が不登校になった原因が白崎さんでそれを隠蔽しようとしたから…だよね?」
白崎さんは両手の人差し指を立てた。
「半分正解で半分不正解って言ったところかな。」
「岩倉さんの不登校になった原因を隠蔽しにきたのは事実だよ、」
「けど、原因は私にはない。」
俺は聞き返した。
「白崎さんが岩倉を不登校にしたわけじゃないのになんで隠蔽しようとしているんだ?」
白崎さんは上を向いた。
都会の灯りのせいで星などはまともに見えない。
「話をするのはここまでだ。」
「私がするべきことはもうしたから帰らせてもらうよ。」
そうすると急に背後から光が指した。
タクシーが背後から通過し、目の前で止まった。
「ここまでお願いします。」
行先が書いてあるであろうメモをドライバーさんに渡し白崎さんはタクシーの後部座席へ乗った。
「じゃあね、節峰くんまた話そうね。」
俺は呼び止めようとしたがすぐにタクシーは動き出し行ってしまった。
スマホを見ると平山から電話がかかってきていた。
「もしもし!節峰!お前、今どこだ!?」
「とりあえず、ファイルとか書類とかは元の場所に戻してぞ!」
「鍵も職員室に戻しておいたからな!これで捕まらないよな?逮捕は嫌だぞ!」
平山は本当に利用されていただけで何も知らなかったようだ。
「あぁ、大丈夫だよ。ありがとう。」
電話を切ろうとしたら平山が聞いてきた。
「あっ!後、岩倉が不登校になった原因はわかったのか?」
話そうとしたが今日はもう疲れたので平山と話す気にはならなかった。
「すまん、事情は後々説明する。」
平山は珍しく察したのか納得してくれた。
「わかった。じゃあまた明日な!」
平山はいつも通りのテンションだった。
「うん。また明日」
そう言って電話を切った。
結局何もわからないまま終わってしまった。
白崎が岩倉にしたことも原因がなにかもわからないままだ…。
夜に噴いた暖かい風は少し湿っているように感じた。
72話のラストまで
ゆっくり読んでいただけると幸いです。




