『沈黙の輪郭』
私の目には実際に、薬の副作用で冬の光が妙に突き刺さってくる。ステンレスに反射したような妙な眩しさを感じる。それをなんらかの形にしてみようと思ったのが本稿である。
Ⅰ 〜眩しさの輪郭〜
冬の陽の光には、馴染めない。
冬の陽の光は、妙に眩しい。
真夏の、燃えるような暑さはない。
ただ、眩しいのである。
鋭く、冷たく、空の裂け目から滲んでくる。
私のまわりの世界は、銀箔で覆われたようになっている。
夕刻になれば、本来なら空は鉛色に沈むはずなのに、
この世界では、凍てついた銀の光が
壁や窓や空気に跳ね返り、
乱反射しながら、私の目を覆っていく。
硬質な光が、静かにすべてを包み込む。
冷たいはずなのに、どこか美しく、
その眩しさの中で、私は立ち尽くす。
沈黙の中に、冬の声が響いている。
Ⅱ 〜記憶の反射〜
銀色の光が、無意識の奥に差し込んでくる。
あの日の声が、意識のうちに戻ってきた気配が、静かに漂っていた。
過ぎ去った日の声──、あの声までもが光の中で揺れている。
その過ぎ去った言葉たちの反響は凍りつき、
時間は混濁に沈んでいった。
今でも、冬の光を見るたびに、
あの日が、私の中で反射する。
Ⅲ 〜境界の溶解〜
鈍色の、鋭いまぶしさは、皮膚の下にまで入り込んでくる。
目を閉じても、光は瞼の裏の沈黙を破るように差し込んでくる。
冷気が、肺の奥で微かに響いていた。
私は、私の輪郭を見失いかけている。
銀の光が、私の境界を溶かしていく。
世界と私のあいだにあったはずの膜が、
静かに、しかし確かに、剥がれていく。
私は、光の中に溶けていく。
それは痛みではなく、
ただ、境界のない静けさだった。
Ⅳ 〜沈黙の声〜
光は、語られぬものの声だった。
語ろうとするたびに、
その静けさが、私の声を封じ込めた。
沈黙は、拒絶ではなく、
ただ、光のほうが、語られぬものを語っていた。
時間は、沈黙の叫びのように流れていた。
時計の針ではなく、
窓辺の影が、少しずつ形を変えていく。
私は、その変化に気づかぬふりをしていた。
気づけば、なにかの終わりが訪れてしまう気がした。
私はもう語らない。
語るはずだった言葉は、すでに光の底に眠っていた。
冬の光が、すべてを語っていた。
私の沈黙も、記憶も、境界も──
その眩しさの中に、すでに刻まれていた。
やや表現が象徴的過ぎたかもしれない。ただ、私が感じる冬の光の印象というものは、具体的に説明すべきようなものではないと考えているので、これで良かったように思う。




