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アンドロイドL01i(仮題)  作者: Alan Ingres


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第8回

# DICE(統合住宅管理環境)


DICE(ダイス、Domestic Integrated Control Environment)は、住宅内の環境制御・生活支援・安全管理を統合的に行うために設計された家庭用人工知能システムである。各部屋に配置された「Warashi ワラシ」と呼ばれる小型端末と、住宅中央に設置される制御ユニットによって構成される。DICEは政府主導の住宅統合インフラ政策の中核として普及し、現在では一般家庭の標準設備となっている。


ーーー『DICE(統合住宅管理環境)』 - Omnipedia(最終更新2247年02月09日、閲覧2047年04月11日)


 ぼくはまだ少し濡れている髪をタオルで拭きながら、まだ薄暗いリビングに足を踏み入れた。

「ディアナ?」

 ぼくはいつも朝の9時に起きるとシャワーを浴びてから、リビングでトーストとコーヒーだけの朝食をとる。ぼくがシャワーを浴びている間にディアナも着替えをすませて、リビングで待っているのが毎朝のルーティンだ。しかし、今朝はソファには誰も座っていなかった。ぼくはウォール・ディスプレイの時刻表示を見た。

「09:06」

 ぼくは足早に廊下に出て寝室に行こうとしたが、ふと思いついて足をディアナのドックのある部屋に向けた。ドアを開けて中に入ると、やはり彼女はドックに横たわっていた。ドックのディスプレイを見ると案の定アップデート中のメッセージが表示されていた。ぼくはため息をついて、椅子に座った。ディスプレイにはIEIの広告が流れていた。

「最新モデルL02a、来春発売…OSアップデートも同時配信の予定…」

 ぼくはテーブルの上のワラシに呼びかけた。

「デイジー、ディアナのメンテナンスはいつだっけ?」

「来月の21日の13時の予定です」

 手のひらサイズのディスプレイが淡く光り、いつもの声が答えた。ぼくはドックのディスプレイの操作パネルに手を触れた。スリープが解除され、ディスプレイにディアナのステータスが表示された。大項目だけでも108個あるアンドロイドの制御項目は、ぼくのように多少知識のある人間にとっても手におえるものじゃない。主な項目に目を走らせながら、

「何か気になることはあるかい、デイジー?」

「アンドロイド・ドックにアクセスして、データを分析します。少々お待ちください」

「オーケー。コーヒーを作ってくるよ。終わったら知らせてくれ」

 ぼくはディアナとの半年を思い返した。ナーキーがあきれたように、ぼくはディアナのセクソロイドとしての機能を(ほぼ)全く使用しなかった。ときにはちょっとした「手伝い」を頼むことはあったけど、誰もが考えるような「行為」は、ぼくとディアナの間には一度もなかった。ぼくは、ディアナがただ、そばにいてくれるだけでよかったのだ。ぼくの「もの」であるという事実だけで、ぼくの心は満たされていた。

「それは単に、おまえが不能なだけだよ。論理と言葉でうまいこと包装して心のショーケースに飾っただけさ」

 ナーキーはぼくにそう言ったが、たしかにそうかもしれない。でも、ぼくには自分の精神構造なんて何の興味もなかった。自分の好きなようにするだけだ。「ふつう」の人間のふりをするのは外にいるときだけでじゅうぶんだ。

「タスクが完了しました、マスター」

 ぼくはコーヒーの残りを飲み干して、ソファから立ち上がった。

「何かあったかい、デイジー?」

「CPUレスポンスに関して、3つほどエラーログがありましたが、特に問題になるようなものではありませんでした。人工体液の損耗率も通常の範囲内です」

 ぼくがドックのある部屋にもどると、すでにアップデートは終わっていた。ディアナはちょうどドックから出てくるところだった。彼女はぼくを見ると、にっこり微笑んだ。

「おはよう、アラン。ごめんね、急なアップデートだったみたい。臨時のセキュリティプログラムの更新だったの」

 ぼくはドックのそばの椅子に座り、片手を上げた。ディアナがその場で立ち止まり、はにかんだような笑顔のまま、両手を後ろにまわした。ドックから出てきた彼女は何も身につけていなかった。ぼくは手を振って部屋の照明を明るくした。セクソロイドは所有者の表情だけから自律的にその場に最適化した行動をとることができる。ぼくにはディアナのSPUが駆動する音が聞こえるような気がした。彼女は両手を頭の後ろにまわし、コントラポストの姿勢となっった。ぼくの眼前に、ドミニク・アングルの『泉』をそのまま具現化したような、完璧なプロポーションの少女像が出現した。しかしそれは冷たい彫像ではなかった。ぼくは立ち上がってディアナのそばに行き、ひざまずいて彼女のおへそにキスをした。内部ヒーターによって37.8℃に保たれた「体温」が、なめらかな人工皮膚の口触りとともにぼくの唇に伝わってきた。ぼくは両手でディアナのおしりをつかんだ。ディアナはそっと両手でぼくの頭をつかむと、やさしく下に押し下げていった。


この小説はマイクラみたいな感じで書いてますので、特にオチは考えてません。

いや、オチらしいものは用意してますけど、特にそこに向かって書いてないというのが本当ですかね。

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