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アンドロイドL01i(仮題)  作者: Alan Ingres


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14/14

第14回

# **ライトウェル(Litewel)**

ライトウェル(Litewel)は、アジア地区中央内海に建設された人工島であり、同島に存在する唯一の都市の名称でもある。富裕層向けの避暑地として計画され、温暖な海域にありながらも島内は冷涼な気候制御が施されているため、夏季には多くの滞在者が訪れる。都市景観は緑地と別荘群を中心に構成され、落ち着いた静養地としての性格が強い。観光産業と高級リゾート施設を主な基盤とし、季節ごとに異なる文化行事や自然散策路が整備されている。

ーーー「Omnipedia」より、冒頭部分の抜粋。


 ぼくがホテルのカウンターで手続きを済ませてロビーにもどると、ディアナはさっきまで座っていた席にはいなかった。ぼくは周りを見回した。シーズンには賑わうこのホテルも、秋も終わりに近づいた今どきは、宿泊客の姿もまばらだった。ディアナはロビーの窓際に立ち、外を見ていた。お気に入りのサマードレスが、周りからは少し浮いて見えた。ぼくはディアナの隣りに立って、彼女の視線の先に目をやった。

「IEI運送サービス」と横に書かれたトラックが、向かいの建物の前に止まっているのが見えた。荷台後部のドアが開け放しになっていて、周りには誰もいなかった。

「なんだい?」

ディアナは窓の外を見たまま、手を伸ばしてぼくのシャツの裾をつかんだ。

「さっきね、あのトラックから『TORO』が出てきたの。私、初めて見たわ」

「初めて?そうか、そういえばそうだね」

『TORO』は、運搬専用の四足歩行ロボットで、運送会社や市場、工場、空港など、さまざまな場所で使われている。もちろん、アンドロイド製造工場でも使われているはずだ。

「そういえば、ディアナ、きみがぼくのところに来たとき、『TORO』に載ってきたんだった」

 ディアナはぼくを見て驚いたような、おもしろがっているような表情を見せた。

「ほんとに?おぼえてないわ」

「それはそうだよ。まだ、きみは電源が入ってなかったからね」

 ぼくは背後に気配を感じて、振り向くと、ホテルのアンドロイドボーイが慎まし気な態度で立っていた。

「お客様、タクシーが参りました」

 富裕層向け避暑地として作られた都市ライトウェルでは、自家用車の所持は違法だった。金持ちがインテリアとして、あるいはコレクションとしてガレージで展示したり保管したりすることもあるが、それには市の許可が必要だ。市内の移動は徒歩か、アンドロイドの運転する2人乗りの『リキシャ』、そしてタクシーに限られている。市内を自由に移動するときは『リキシャ』が便利だが、目的地までまっすぐ向かいたいときはタクシーが最も効率的な移動手段だ。

 ぼくたちがタクシーに乗り込むと、タクシーは6人分の座席があり、ぼくとディアナはならんで最前列のふたつの席に座った。

「こんにちは。LTSをご利用いただきありがとうございます。どこへいらっしゃいますか?」

 ぼくの目の前のディスプレイから、『タクシー』が話しかけてきた。横からディアナが、

「テイラピッズ・トレイルに行きたいの。」

「かしこまりました。予想到着時間は47分プラスマイナス3分です」

 タクシーは音もなく走りだした。ホテルの前の一般道からすぐに専用のレーンに移ると、あっというまに巡行速度まで加速していく。

「タクシーって好きよ」

 ディアナが窓の外を見ながら言った。

「そうかい?」

 ディスプレイから、また声が聞こえた。

「わたしとの会話レベルはいかがしますか?頻度とテーマ、親密度などを設定…」

「だまっててくれ」

「かしこまりました」

 ディアナがくすくす笑いながら、右手の人さし指をのばし、ぼくの頬をつついた。

「あら、かわいそうよ。私、テイラピッズのこと、聞きたかったのに」

「データなら事前に集めてあったろう」

「自分以外の視点は、データ分析にとても大切なのよ」

「山道を歩いて自然に親しむのに、データ分析はいらないんじゃないかい?」

 ディアナは首を振った。ぼくはディアナの肩に手を回し、抱き寄せた。

「予測できないことが起こるのも、旅の愉しみだと思うよ」

 ディアナはぼくの肩に頭をもたせかけた。

「旅の愉しみにはカオスが必要ってこと?」

「カオス…ちょっと違うかな。ランダムな未知のデータの取得の愉しみ、という感じかな?」

 ディアナは前を見つめたまま、黙っていた。ぼくの言うことがあまりピンときていないようだ。ぼくは話題を変えた。

「トレイルに着いたら、軽く食事をして、それから出発しよう。レストランの予約はしてあるよね?」

「うん。席はどこでもいいって言ってたけど、窓際がひとつ空いてたからそこにしたわ」

「ほんとかい?キャンセルかな」

「そうみたい」

 綿密な計画に蓋然性をひとつまみ加えるのが、ぼくのいつものレシピだ。相手がこちらの行動をすべて把握しているとき、運命の女神にほんの少しだけ、自分のからだを預ける。そうすることで、誰にも、自分ですら予測できない状況を作り出せるんだ。その中で、自分の求める結果をその場で作り出す。この方法はぼくみたいなソロプレーヤーにしかできない。

 ぼくがトミーを出し抜くにはこれしかない。


物語が佳境に入るような雰囲気ですが、違います。もう少しディアナといちゃいちゃさせてください。

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