神様を作る方法
投稿者:二年D組 平石萊志
いとこが小学校のとき「神様を作る遊び」というのが流行ったらしくて、誰が言い出したのかはわからないけど、男子は当時流行っていたマンガか何かのノリで「俺が作った最強の神様」をイメージして自由帳にデザインを描いたりし、女子は占いやおまじないの類として盛り上がっていたらしい。
その方法というのが、まず白い砂を探す。
公園の砂場とか空地の地面とか校庭の隅っことか、とにかく白い砂を取ってくるんだけど、いい砂が取れる場所は結構取り合いになって縄張り争いみたいなことがあったらしい。
次に、白い砂を丸めて球にして、ちょっとだけ濡らして黒い砂で包んで固める。
黒い砂は畑とか林に行くといっぱいあるけど、勝手に入ってそこの持ち主に怒られることがあってから、誰かの親とか知り合いの畑に一言断ってから取らせてもらうのが恒例になったらしい。
もともと泥団子を作って砂の山に掘ったコースを転がす遊びが流行ってたらしくて、「どこどこの黒土がさらさらしてて質がいい」「あそこの砂はダメだ」「○○さんの畑が解禁になった」とかの情報網がフル活用されていた。
そしてできた白い砂と黒い砂の球を、何か大切なものと一緒に缶とか茶筒とか金属製の容器に入れて、最後にお札を入れ、家の外の誰にも見つからない場所に一週間放置する。
このお札というのは、テキトーな小さい紙に決まった文字を書くんだけど、とにかく画数が多く線が波打ってる謎の漢字で意味も分からず書いていたらしいが、いとこは大人になってからどこかの寺で見た護符? に似たような字があるのを見たらしい。
もしくは古い映画のキョンシーのお札じゃないかとも言っていた。
みんなそれぞれに写しを持ってたらしいけど、オリジナルはどこから来たのかわからないらしい。
箱を放置する期間は、本当は五〇日間放置しなきゃいけなかったらしいけど、小学生には長すぎて飽きてしまったり忘れてしまったりするし、あるとき誰かが案の定待ちきれなくて一週間で見に行ったら、なんと成功していたらしい。
一週間の成功例ができたことで、みんなも一週間でやるようになったらしい。
成功したときは、箱を振ると中から水の音がする。
それが新しい神様の体らしく、それ以降は開けると死んでしまうので、開かないようにガムテープなどでとめる。
それを持ち歩くことがその地域の子供たちのステータスだったらしい。
お守りのように持ってるといい事があったとか、夢に神様が出てきて未来を教えてもらったとか、色々な噂があったらしい。
ときには、カバンの中でふたが開いてしまい、神様は死ぬし荷物はべちゃべちゃになるという大惨事もあったとか。
ちなみに振っても水の音が聞こえなくなったら、神様が寿命で死んでしまったということで、また作らなければならないらしい。
いとこは自分では成功できなかったらしいけど、半信半疑ながら一つ持っていたことがあった。
神様を大量生産しているやつがいて、そいつから三〇〇円で買ったらしい。
そいつは一人で同時に一〇個以上も作ってて、いとこが言うには「あれはたぶん自分で水を入れたニセ物だった」そうな。
だけどそいつは小遣い稼ぎだけが目的じゃなかったらしい。
最初はそうだったかもしれないけど、普段目立たないそいつはみんなから「神様職人」とか呼ばれて人気になって、だんだん神様作りにハマっていったらしい。
いとこがそいつの家へ神様を買いに行ったとき、一〇〇均にあるような手のひらサイズの缶の箱を一個買った後、「特別にいいもの見せてやる」といってその家の裏まで連れていかれた。
そこには昔その家で焼却炉として使っていたというドラム缶があって、そいつは「最強の神様を作ってる」と言いだした。
なんとドラム缶に大量の泥団子と飼っていたインコとヘビとカナブンとセマダラコガネ、そして近所の野良猫を入れたと言っていたらしいが、いとこは「さすがに嘘だろう」と信じなかった。
ただ、そいつがドラム缶をゆすると、大太鼓を軽く叩いたようなボンボンという音と、チャポンチャポンという水の音がしたらしい。
なんでこんなことをするのか、いとこが聞いたら「本物の神様に教えてもらった」「こうすればみんなが助かる」とよくわからない思わせぶりなことを言っていたとか。
もともと嘘つきなやつだったらしいけど、いとこは気味が悪くて、帰ってからもドラム缶の内側を水が叩く音がしばらく頭から離れなかった。
だけど子供なので、やがて忘れていき、神様作りのブームは去ったらしい。
ちなみにその神様職人も元の目立たないやつに戻り、六年に上がるころに引っ越していったそうだ。
噂ではそいつの父親の会社が火事で倒産したので田舎に帰ったとか、妹が性被害にあって病んでおかしくなったからとか、もともと好かれていない一家だったので色々言われてたらしい。
しばらくして、供米田のそいつの住んでいた家が取り壊されて新しい家が建ったんだけど、いとこは通りがかりに偶然見てしまったらしい。
解体中のその家から例のドラム缶がトラックに乗せられて運ばれていくのを。
すっかり錆びていたが、運ばれるドラム缶からはかすかにジャポンジャポンと水の音がしていたらしい。




