第1話:目覚めの魔王と最初の配下
灰色の空。
亀裂の走った黒い岩盤。
焦げた土の匂いと、どこか焦燥を誘うような静けさが支配していた。
呻き声が響く。
「ぐっ……っ、がはっ……!」
岩肌に叩きつけられた神兵が、苦悶の表情でのたうっていた。
その肉体のほとんどが焼け爛れており、内臓の一部さえ露出している。
しかし、それでも彼は動こうとした。
「器……貴様……魔王の器か……!」
主人公は混乱しながらも、直感的にこの異様な状況を察していた。
(ここは……オレがいた場所じゃない。あいつも――あの神兵も、転移の衝撃で身体が……)
そう、彼は肉体ごと過去――三億年前のパンゲア大陸に転移したのだ。
神兵は完全な存在ではなく、霊と肉の中間――半霊半人の存在。
本来、転移に耐えうる器ではなかった。
主人公の身体が自然と反応する。
指先から黒き光が走り、目の前の神兵に直撃した。
「うああああああッ!!」
光の中、神兵の身体は蒸発するように崩れ、光の粒となって消えた。
直後、彼の内に流れ込んできた情報と、熱い力の奔流。
【スキル《神墜》を習得しました】
【スキル《解析》を習得しました】
【ダンジョンポイントを獲得しました:1000DP】
「……ッ。これが……魔王の……力か」
眩暈が走るほどの情報が脳内に押し込まれてくる。
世界の理。ダンジョン運営の知識。支配の仕組み。反逆の手段。
彼の背後で、漆黒の魔核――魔王のダンジョンコアが鈍く脈動した。
⸻
【ステータス画面】
•名前:???
•種族:魔王
•Lv:1
•階層:第一階層
•MP:210/210
•属性:空
•スキル:
•【ダンジョン創造】
•【契約招来】
•【神墜】
•【解析】
•加護:なし
•所持DP:1000
⸻
「……よし。まずは“兵”を揃えるか」
掌をかざし、コアに語りかけるように念じると、魔力の奔流が膨れ上がる。
【配下召喚モード起動:使用可能DP=1000】
•成長型魔人(ランダム特性):1000DP
─ 選択しますか?
「選択だ」
石床が割れ、光の繭が現れる。
数秒後、繭が割れ、中から一人の少女が現れた。
白銀の髪に、淡紅の瞳。背には黒く短い角があり、魔力の膜のような衣が揺らめいている。
【成長型魔人“ユラ”が配下に加わりました】
【戦力ランク:D】(成長型)
【スキル:《魔力弾》《魔力視》】
【加護:魔王の加護(強化成長)】
「ご主人様……?」
「……ああ、そうなるらしいな。お前、名前は?」
「ユラ、です。ご主人様が名付けた名……ですか?」
「いや、今ので決まりだ」
ユラは嬉しそうに微笑んだ。
Dランク――まだ弱い。だが、これから成長していく存在。
そして、彼女は唯一、この世界の外と繋がる存在の目となる。
「ユラ。悪いが、外の様子を見てきてくれ。この場所が、どこなのか」
「はい、主。すぐ戻ります」
ユラが駆け出し、彼はただ黙って空を見上げる。
灰色の雲の向こうに、三億年前の神々の支配が待ち構えている。
(――ここがオレの始まりか。なら……ここから全部、変えてやる)