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ゆるい日常

作者: 踊るマグロ


 高校○年生、冬。学校を休んだ。


 目を覚ますと、明るい部屋が視界に広がった。なんだか今日はよく寝られたな、グッと伸びをしてスマホを開く。


_現在時刻午前8時42分。


 やらかした。完全に遅刻だ。すっかり太陽が登っている。一度は持ち上げた頭をふただび枕に叩きつけた。カーテンから漏れ出る朝の日が目に染みる。よく見ると光の筋のなかに、小さな埃がきらきらとして宙を舞っていた。それを見ていたら何だか胸がきゅっとした。なんて世界は美しいんだろう。ふとした瞬間、何気ない光景に感動するときがある。それが今だった。


 寝坊した日は気分がいい。時間や規律から開放されて、自由な自分を取り戻せた気がするから。

 

 両親は朝早くに家を出る。だから起こしに来る人はいない。そのおかげで寝坊を責められる心配がなく、ゆっくりと優雅に支度ができる。敷いたラップに白米を乗せ、さらに上からウインナーをトッピングする。ついでに昨晩の残りの唐揚げも乗せる。もちろん味付けはマヨネーズ。そしてちまちまと白米で包んでやれば、爆弾おにぎりの完成だ。誰にも文句など言わせない。もはやここは私の城なのだ。


 満腹になったお腹を撫で、私は唸る。学校へ行くべきか、休むべきか。そう考えつつもすでに天秤は後者に傾いていた。そんな日があっても良いだろう。人はもっと自由に生きるべきだ。人生なんて楽しんだもの勝ちだ。忍び寄る罪悪感を振り払うため、自分を正当化する。私はうんうんと頷いた。結論が出たところで、次の思考に移る。何をしよう。せっかく休むのだから、臨時休暇を有意義に使いたい。満腹になっている私の身体は、二度目の睡眠を訴えかけている。眠気に抗いながら行く先に思考を巡らせていたが、宇宙進出を考え始めた辺りで考えるのをやめた。やはりこういうときは欲求に従うのがいちばんだろう。自室へ戻りベッドへ飛び込む。私のすべてを包み込んでくれるような幸せを感じる。全身で感じるふかふかに意識が遠のく感覚がした。


 _あぁ、私は駄目な人間だ。世の人たちはするべき事をしているのに、私はこうして眠りにつこうとしている。怠惰な人間だ。しかし、しかしなんて幸せな時間なんだろう。とても穏やかな気持ちだ。まぁ、たまにはこういう日もあったっていいか。そうして私は、夢の世界へ旅立った。


                    _完_

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