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と、そこまで話したところで、信長は急に姿勢を崩して表情を緩めた。
「光秀、よけいな邪魔は入ったものの武田との同盟が成立したわけだ。今後について、その方の意見を聞かせろ」
天下布武へ踏み出した織田信長にしてみれば、過ぎたことは始末させ、さっさと先の見通しを立ててしまいたいのだろう。
「そのことですが、まず、わたくしめに鉄砲の入手するための権限を与えていただきたいのですが」
「それはどのようなものだ?」
「これまでの火縄銃を改良し、高精度な長距離射撃を可能にする鉄砲を開発したいのです」
「それは、つまり……」と、信長が一瞬口ごもる。「その方の知識によって開発できるのだな」
織田信長は俺が未来から来た人間だと知っている。
だが、それを大勢の家臣の前で明かさぬように、慎重に言葉を選んでいるのだ。
「はい、それを試してみたいのです」
薬莢の火薬で流線型の弾丸を発射する元込め銃は銃身内に溝を掘り、弾丸を回転させて発射することで、独楽の軸のように射線上をぶれずに飛ばすことができる。
丸い弾丸を飛ばす火縄銃はその点で不利だが、元込め銃を開発するには、戦国時代の技術力では弾丸を込めた部分を密閉することができないため、知識はあっても実現はできない。
だから、今の段階では、火縄銃としての改良を進めるしかないのだ。
だが、その計画自体も、この尾張国にはそもそも鉄砲鍛冶がいない。
そのために、俺は次の攻略目標について織田信長に進言した。
「お館様、この改良には、鉄砲鍛冶を味方につけることが必要です」
「しかし、尾張には商人はおるが、鉄砲を作れる鍛冶屋はおらぬぞ」
「はい。今の段階では、その商人たちを通して近江国の国友村へ発注しようと考えております」
「その伝手はあるのか」
「はい、伊勢屋惣兵衛から紹介を受けた能登屋重四郎という商人が近江から北陸への通商を担っております。その商人を仲介役として、国友村へ発注しようと思います」
「あい分かった」と、信長は扇子で膝を打った。「費用も必要なだけ使え。妥協はするな」
「ははっ」
俺の懸念はその費用だったのだが、あっさり許可が下りるとはやはり織田信長は理解が早い。
俺は話を続けた。
「ゆくゆくは近江の鉄砲鍛冶そのものを支配下に入れなければなりません。そのために、まずはその手前にある美濃攻略を次なる目標といたします」
「ほう」と、信長が髭を撫でた。「聞かせろ」
「美濃の斎藤家は奥方様のご実家ではございますが、すでに道三殿は亡く、義龍殿が当主となっておりますので、義父の敵討ちという名目であれば、充分大義になるかと」
「なるほど、それはわしも考えておったところだ」
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