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信長のアレを千回クリアした俺が戦国最強の軍師に転生して甲斐の虎に会いに行ったら、赤べこだったんだが(ていうか、男だらけの温泉回なんて誰得なんだよ)  作者: 犬上義彦
第6章 雪山の死闘

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(6-13)

 崖の棚が行き止まりになっている。


 だが、足をかけて、もう一段上の棚へ上がれそうな岩がある。


 俺は美月を先に行かせ、肩を足場にさせて岩にとりつかせた。


 もう文句も泣き言も言わず、美月は岩を這い上がっていく。


 俺も後に続いた。


 上の棚に登りきったところで俺たちは座り込んで休憩した。


 もう銃声は聞こえない。


 追っ手の足音も聞こえない。


 月はだいぶ傾いていた。


 もうすぐ空が明るくなり始めるだろう。


 それまでにどこまで行けるだろうか。


 明るくなれば敵は本格的に武装して俺たちを捜索するだろう。


 街道筋は固められて進めなくなる。


 俺は月明かりを背景にぼんやりと闇に浮かび上がる山の稜線を見上げた。


「あれを越えよう」


 美月は黙ってうなずいた。


 と、その時だった。


 ――いたぞ!


 ――こっちだ!


 遠くから声が聞こえる。


 まさか、追っ手が来ているのか。


 だが、声は崖に向かってくるのではなく、平地のあたりを平行に移動していた。


 どうやら俺たちではない誰かを追っているらしい。


「あたしは戻るよ」


 美月が立ち上がる。


「やめろ」と、俺は手をつかんだ。


「離しておくれよ」


 振りほどこうとする手をつかみ直し、俺は美月を岩壁に押しつけた。


「行くな。せっかくあいつらが命を張ってくれたんだ。俺たちは生きなくちゃならないんだ」


「ふん、亭主気取りか」


 俺は美月の肩を押さえたまま、じっと目を見つめた。


 ふっと笑みを漏らして美月は目をそらした。


「今さらあんたがあたしを抱けるのかい?」


 平地では銃声が鳴り響いている。


 ――ぐぅおっ……。


 躊躇したその瞬間、俺は激痛にもだえ、岩の上に転がっていた。


 美月の膝が俺の股間を一撃で捉えたのだった。


 立ち上がった美月は悶絶する俺を見下ろし、しゃがんだかと思うと、唇を押しつけてきた。


 涙にまみれた頬を押しつけ合い、ぎこちない口づけを交わし、再び離れた女の顔は晴れやかだった。


「生まれ変わったら続きをさせてあげるよ」


 そう言い残し、美月が去っていく。


 ――行くな。


 俺は体を起こしたものの、しびれた下半身が言うことを聞かず岩の上でただそれを見送るしかなかった。


 涙で視界がぼやける。


 冷たい風が吹きつけるのに、全身から脂汗が吹き出てくる。


 体温を奪われ、体が震え出す。


 ――こんなところでくたばってたまるかよ。


 俺は股間に手を当て痛みが治まるのを待った。


 断続的に銃声が鳴り響く。


 だが、こっちの崖の方へは敵は近づいていないようだ。


 俺は岩にとりつき、崖を這い上がった。


 生きるんだ。


 生き残って帰るんだ。


 約束も果たせず、権造たちを犠牲にした俺に生きてる資格なんかない。


 ならば、だからこそ、俺はその罪を背負って生き抜いてみせる。


 涙を拭い、すりむけた手からにじむ血を舐め、俺は崖を登った。


 ようやく尾根までたどり着いたとき、東の空が明るくなった。


 平地を駆け回る人の姿がごま粒のように見える。


 追い立てられる男が白一面の雪原に倒れた。


 そこに黒い点が殺到し、あっいう間に重なり合って倒れた男の姿が見えなくなる。


 それでもまだ銃声は止まない。


 ごま粒の群れが動き出し、数発の銃声の後、真っ白な平原にもう一つ、ぷすりと針で突いたような黒い穴が開いた。


 顔を出した朝日に照らされて雪原が輝く。


 その黒い影はピクリとも動かなかった。


 もうそれ以上銃声も聞こえない。


 ――カアカアカア。


 しんと静まりかえった雪原の上をカラスが横切っていく。


 ――カアカアカア。


 もう一羽、それを追いかけるようにカラスが飛び立っていく。


 俺は目を閉じ、手を合わせ、頭を下げると、尾根伝いにその場を立ち去った。



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