(3-4)
――ん?
外の様子がおかしい。
どこか近くで、うめき声が聞こえはじめた。
一人二人ではない。
おそらく全員で緑のジャガイモを食べて、みな腹を壊したんだろう。
沼に向かって吐いているのか、ひどく咳き込むやつもいる。
「オーウ、カミヨ、彼らを守りタマエ」
あんたがだまして食わせたんだろうがよ。
だが、おかげで、監視の目がなくなった。
小屋の扉が開く。
どこかで様子をうかがっていた心結が救出に来たのだ。
「いったいどうしたのだ?」と、拍子抜けの表情で星明かりを背に立っている。「見張りがいなくなったぞ」
「オウ、黒髪ギャル!」と、デイブが弾けるように立ち上がる。「パーフェクト。アナタハ、カンペキデース!」
縛られたままの体を芋虫のようによじりながら迫っていく。
「ステキなポニーテイルちゃん!」
ガツンと膝を蹴られてデイブの体は無様に床に転がった。
「なんすか、こいつ」と、心結の声は月も凍るほどに冷え切っている。
「あー、ワタシはデイブ、デイブ・スミッシーです。イギリスの貴族デース」
心結は真顔で口説くデイブを無視して俺の縄を切った。
「野盗の連中が急に苦しみだしたのはなぜだ?」
「デイブが持っていた南蛮渡来の毒芋を食べたんだ」
「なるほど、それで」と、デイブをチラ見する。「油断のならない男ですね。殺しますか?」
よほど嫌っているのか、声にためらいがない。
「オーウ、せっかく女神に会えたのに、いきなりお別れデスカ。あなたに殺されなくても、セツナイ恋でワタシのハートは燃え尽きてしまいますケドネ」
「黙れ」と、ついに心結が吐き捨てた。
「オーウ、このピュアな恋心、お市様に恋するミウラさんなら分かってくれますよね」
ちょ、俺を巻き込むなよ。
西洋人らしく派手なウィンクが様になるが、心結は渋い表情を俺に向ける。
「やはり殺します」
――いや、まあ。
俺も恨みがあるし、殺してもいいんだが。
「待て」と、俺は手を差し伸べた。「縄を切ってやってくれ」
「主のご命令ですが、お断りいたします」と、俺に刀を差し出す。
そんなに嫌かよ。
仕方がないので俺は自分でデイブの縄を切ってやった。
「ミウラさん、フランクに感謝しますヨ。アリガトゴザイマス」
心結が先に小屋を出て周囲を警戒する。
「逃げるなら今です」
「いや、やつらと話がしたい」
「なにゆえに?」と、あからさまに心結の眉が上がる。
「まだやつらの目的も、背後の黒幕も分かっていない」
「今は逃げて、追っ手を派遣させれば良いでしょう」
「いや、今聞いておかないと、依頼者に消されるかもしれない」
心結があからさまにため息をつく。
「自分の身も守れないくせに、どうなっても知りませんよ」
「せっかく助けてもらって済まないな」
心結はそれ以上抗議の表情は見せず、おとなしく着いてきた。
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