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信長のアレを千回クリアした俺が戦国最強の軍師に転生して甲斐の虎に会いに行ったら、赤べこだったんだが(ていうか、男だらけの温泉回なんて誰得なんだよ)  作者: 犬上義彦
第2章 楽市楽座

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(2-5)


   ◇


 戦国時代は歴史的に見ると寒冷期で秋から冬への移り変わりが早く、尾張国は雪は降らないが冷え込みがきつかった。


 基本的に部屋全体を温めるような暖房器具はない。


 火鉢は手先しか暖まらないし、炭や薪を手に入れるのだって意外と苦労する。


 平地の木々は村の連中がとっくに切り倒して使ってるし、山も令和と違って禿げ山だ。


 川に流れてきた木を拾って乾かして使ったりもする。


 昔話で山に柴刈りに行くおじいさんがいるけど、たかが木の枝が商品として成り立つってことなのだ。


 暖房がないのなら厚着をすれば良いのだが、織田家で採用されたシャツにズボンの高校風夏服に、綿を入れた『どてら』という着物を羽織ると、炬燵で勉強する浪人生みたいでなんか落ち着かないので、俺は詰め襟学生服とコートを衣装担当の河尻のおっさんに発注していた。


「こんな感じですよ」とイメージを描いて試作品を作ってもらったりして、デザイナー気分で楽しかったし、試着した秀吉が中学校に入学したばかりの少年みたいに袖がだぶついていて、寧々さんも大笑いしていた。


「しかし、これは戦場で怪我をしなくて済むのう」


 裏地もついた厚手の生地はたしかに丈夫で秀吉は相当気に入ったようだった。


 令和でも、制服は三年間毎日着るわけだけど、全然ボロくならないもんな。


 制服屋さんの技術がすごいんだろうけど、ありがたく真似をさせてもらおう。


 俺は乗馬の練習も始めていた。


 脚で稼ぐ『足軽』ではなく、殿様にお目通りがかなう上級武士として、さすがに徒歩だけでは格好がつかなかった。


 身軽で運動神経抜群の秀吉はすぐに乗りこなしていたけど、俺はどうも馬と呼吸が合わなくてなかなか上達しなかった。


「馬になめられておるぞ、おぬし」


 まったく秀吉の言うとおりだった。


 苦手意識が出てしまうと腰が引けて、一度落馬してからは、ますます怖くなってしまっていた。


 とは言っても、やらないことにはできるようにならないので、同世代の馬番に頼んで綱を引いてもらいながら、なんとか毎日少しずつ練習を続けていた。


 朝、薄氷が張るようになった頃、俺は秀吉と共に慣れない馬で三河へ向かった。


 岡崎城から使者が来て呼ばれたのだ。


「酒井殿、本多殿、お久しぶりでございます」


 城内御殿で再会した二人の表情は暗かった。


「今川の軍勢が国境(くにざかい)あたりで狼藉(ろうぜき)を働いておりましてな」


 酒井忠次によれば、せっかく収穫して松平家に納めるはずだった農村の米を奪っていくのだという。


 これは今川家としての公式な軍事行動ではなく、末端の家臣団が無断でおこなっている小競り合いで、目的を果たすとさっさと引き上げてしまうために、取り締まりが難しいのだそうだ。



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