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マンション異階

作者: 悪熊ノ総理


「う…んん、次はどこだ。」

目を開けると光のさすマンションの一室に居た。


黒髪の少しだるそうな目をした少年

クロトが立ち上がり、周囲を見渡す。


「見た事ない場所だな、

ッ皆んなは…居ないのか、」


クロトは少し考えた後に、面倒くさそうに

大きくため息をつき、

部屋の中を乱雑に物色し始めた。


「トロフィーにサッカーボール

デケェ棚だな

…こいつがやってたのか。」


大きな棚は柱や前面だけ異様に腐食していた棚とは

対照的に綺麗に整備されたトロフィーや賞状、

そしてユニフォームを着た少年が中心に写った

笑顔の家族写真を摘み上げて、


憂と影のある顔で呟く。


「幸せそう…だな

それに比べて俺って、何もねぇ

何も覚えてねぇ。」



そう俺たちには記憶が無かった。



マンション異階

仲間の1人が考えた名前だけど、

俺はかなり合っていると思う。


不思議なマンションで目が覚めて仲間と出会って、

戸惑って居るといきなり襲われた、

それでもギリギリで力を合わせて助かった、



終わりがあるかも分からない。


こんな事を、


「ッとダメだ早く終わらせて皆んなのとこに

戻らないと、

やるしかない一人で。」


(まずは武器が要る、

ココにも階獣カイジュウが居るはずだ)


この一室に住んでいる何か、

大体は階獣を倒す事でこの場所から出る事が

出来ることが多い、だが例外もいる。


クロトは部屋をほぼ荒らしながら、

パンパンの押し入れに入っていた松葉杖を持つ。


「これで良いか、

隅まで探したのにここに居ないって事は

他の部屋だ。」


意気揚々と他の部屋に行こうと、

ドアに手をかけた時、大きなすりガラスの先に

見えた、


家族で幸せそうに4人で過ごす影が、

そして声も聞こえてくる。


「俺また勝っちゃったもんねー、」

「そうね、だから大好物のハンバーグ作ったでしょ」

「さすが、俺の息子お祝いに何処か行くか?」


「えへへ、俺エースだし当然、フン」

「お兄ちゃん今度僕にも教えてよ。」


「ああ良いぜ、弟でも手加減しねーぞ。」

「手加減はしてあげてねお兄ちゃん。

はいどうぞお母さん特製ハンバーグー」

「俺、1番でっかいの」

「はいはい、みんなでいただきますするよ。」


「「 いただきます。」 」


少しズレて揃った家族の声が聞こえ、

警戒してたクロトはその影の体が家族を模って居た、

全てが泥のように変形し続けて

ギリギリ形を保っている様子を見ていた。


「階獣のくせに、」

小さく呟いたはずだったが、

緊張か力が入り声が出てしまう。


その声に反応したのか影は形を崩し

複数の影だったものは一塊になって

ノソノソとこっちに移動し始めた。


(ヤバいアイツ!それにデカい!)


クロトは咄嗟に棚の影に身を隠すと、

ズルズルと何かを引きずる様な音とナニカの声

が鮮明に聞こえる。


「アエー ターレー」


扉の隙間からその異形の姿が見える、

全身が深い緑色のヘドロの様に溶け、

所々に写真に有った衣服や異物が混入している。


バランスの崩れた顔のパーツが、

僅かに面影のある頭の膨らみに散りばめられている。


「ダーー…ダーレーレー

……オーカーサン、」


(あのデカさか、流石に躊躇はするなでも、)

「やるしか無い、最速で」


クロトは固唾を飲み込み、

持って居たもので棚の腐食して居た柱を砕き、

そして棚を押す。

バキン!

ギーーーー

2mは軽く越す金属製の棚は大きく音を立てて、

トロフィーや賞状を落としながら階獣に覆い被さる、

ドシン!

「アーー!アー!!」

階獣は泥の身体がギチギチと潰され悲鳴を上げる



クロトは松葉杖を持ち、

下敷きになった階獣の顔に跳び上がり、

その勢いのまま武器を振り下ろす、

「バケモンが…死ねよ!」


その瞬間

階獣の身体全体から触手が、殺人的な速度で伸ばされる。


クロト無防備な腹に直撃して

体が浮き上がり空中で叩き落とされ、

すりガラスのドア側に飛ばされる。


「い、イテェ…でも危なかった、体はまだ動く」


咄嗟に体の前で構えた松葉杖が折れて、

ある程度のダメージは抑えられたが、

クロトは手を動かすだけで精一杯だった。


階獣は無数の触手を目を血走らせながら

振り回し暴れ狂う。


触手の一撃一撃が硬い壁にへこみを作り、

大きな棚も持ち上げつつあった。


「ハハッ馬鹿だ、一旦部屋から逃げねぇと!」


クロトは音をできるだけ立てずにドアを開き、

部屋から逃げ出すことに成功した。


それでも絶体絶命の状況は変わらなかった、


(どうする!?この状況!)

「…絶対絶命、

1人で倒す事が不可能なほどの巨体、

武器は折られた木の棒だけ、

今は動けてないがそれも時間の問題」

(この状況で、何かあるのか?)

「…わからねぇ、全く

(皆んな……もう…会え無いか)


諦めの境地だったが、クロトの頭はフル回転して居た。


「ピンチでこそ光るそれがクロトの良いとこだよ。」

「皆んな…ありがとう。

やるしかねぇな!」

いつかの友人のいつも奮い立たされる声


それを思い出し、クロトは手元にあったメモ帳とペンで

状況を打開できる作戦を練り始めた。


「さっきの攻撃は不意打ちだった…からだ」


(今までも強敵には弱点があったはずだ、

核だったり、本体じゃ無いだったり、首だったり、

大事なものだったり………)


「大事な物」


(棚はかなり腐食して居たのに、

写真やトロフィーは綺麗だった)


「トロフィーは棚を倒した時に壊れた

その後暴れ出した」


(もしあれが棚に押しつぶされた悲鳴じゃ無いとしたら)


「……写真だ、やってみる価値はある。」


がラララ

触手を器用に使ってトロフィーや賞状の形を

治して整えている。

そんな姿からは想像も出来なかった繊細な

姿にクロトは何故か怒りを覚えて、

写真立てに飛び込みぶち撒ける、

そして


「人間みたいなことしてんじゃねぇよ!」

吠える。

瞬間に壁に掛けてあった写真を壊して行く

「オラァ!」

「ミン!ナー!アー!」

一つ一つ壊して行くたびに、

階獣は悲痛な叫びを上げる。


触手を伸ばしクロトを捕まえようとしてくるが、

クロトは正確に目で追い避ける、

その顔は笑っていた。


「当たるかよ、バーカ!」



(……後四枚)

クロトの足元を掬うような触手が足に当たり、

写真の飾ってある壁にぶつかり、

衝撃でクロトの頭上から額縁が落ちてくる。


額縁は派手に砕け、

ガラスがクロトの左足に深く刺さる。

パリンッ


「イッテェクッソ、」


弱った触手がクロトの首を絞め上げて、

階獣は叫び続ける。


「ミンナードコー!

ミンナードコー!」


何度も何度も繰り返し鳴く。


「知るかよ!

お前らこそ何なんだよ!」


クロトの絶叫に、

階獣は今までと変わらず無感情の顔で

鳴き止み静かになった。


同時に触手の力が弱まる、

その時クロトは首絞めから抜ける。


「ゼーハーゼーハー!」

そんな息も絶え絶えの状態でクロトは走り出したが

意識も体も限界で、

足が、体が止まってしまう。


そしてどこからか転がってきた

サッカーボール。


最期の力を振り絞り、

最後の家族写真を壊す。


バリンッ


「ア…アーアー、オカ...エリ」


階獣は死ぬと声を上げながら

灰になり、砕けて、消えて行く。


クロトは息を整えて、

何も無くなったのを確認してから

優しい瞳で見つめ手を合わせる。

「じゃあな…階獣」


目を閉じてもう一度目を開けると、

階獣の居たところに一つおもちゃの指輪が落ちて居た、


窓から夕焼けの光が差し込む指輪と

写真片の宝石が同じ輝き方をする。



ガチャ

「あ、開いた。」


初めての読み切りです。


試作品異世界転生の一章が終わり

怠けて居ました、申し訳ありません。


今回も読んでいただきありがとうございます。

投稿ペースは不定期ですが

楽しみに待っていただけたら幸いです。


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