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永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~  作者: 蒼依スピカ


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74話 天使の再降臨



「ほら、次の授業が始まるから戻ろう。勉強頑張ってね」

「うん!」


 スッキリしたおかげで4時間目は普通に頑張れた。

 メルちゃんはちょっと疲れた様な顔をしてたけど、たぶん気のせいだと思う。授業が終わるころには妄想ノートを見てニヤニヤしてたし。


カラーン……、カラーン……、カラーン……。


「はぁー、やっと給食だねー」


 普通とか特別とか色々あって余計に長く感じた。

 勉強も集中しすぎてもうぐったりだ。お腹すいた……。


「そうだね。あ、今日は私たちの班が配膳当番だね」

「あー、そうだったねー。行こうか」

「ほーい」


 ……はぁ、お腹が空いてる日に限って配膳当番なんて、ついてないな……。

 わたし達はクラスの給食を受け取りに配膳室に向かう。

 他のクラスの配膳係が並び、順番に受けっとってるのが見える。

 配膳係の唯一の利点は、いち早く給食の匂いを嗅げることだと思う。


「すー、はー……んっ!?」

「あ、この匂い……」「アリアちゃん、ストッ―――」

「カレー!!」

「「「「 !? 」」」」


 この匂いは間違いなくデザートカレーの匂いだ!

 久しぶりの至高の料理登場にテンションは一気にマックスになる。

 今日のモヤモヤは完全に吹き飛んだ。デザートカレー万歳!


「そわそわ、そわそわ……」

「アリアちゃん、落ち着こう」

「うん! そわそわ……」


 前で違うクラスの人が自分のクラス分を受け取り、わたしの横を通り過ぎて去っていく。

 ……ああ、いい匂いだよ……。

 今日の総菜は何かな?

 確か、前回はカツとハンバーグの究極の二択だった。

 ……目の前で二人の天使が引き裂かれたのは悲しかったけど、友達が分けてくれたおかげでハッピーエンドを迎えることが出来たんだよね。

 今日はなにかな? いつも通りなら一種類のはずだけど……。


「はーい、次のクラス、どうぞー」

「はいっ!」

「おや、アリアちゃんかい。ほい、今日は大好物のカレーだよ。こぼさないようにね」

「はいっ!」


 わたしは鍋を受け取り、台車に乗せる。

 ちらっとふたを開けると、出来立てのいい匂いがしてヨダレが出て来た。


「じゅるじゅる……」

「アリアちゃん、流石につまみ食いは不味いよ。それは全員分なんだから」

「うん、じゅるじゅる……」


 注意されたわたしは泣く泣くふたを閉める。

 カレーが見れないなら……総菜を。

 カレーの匂いを堪能しつつ、今日の相棒となる総菜ケースに目を向ける。


「……あれはまさか……エビフライ!」


 エビフライ。

 それは、カツやハンバーグとは違う意味での頂点の一角。

 カツとハンバーグが肉系の頂点なら、エビフライは海産系の頂点になる。

 両者が決勝でぶつかれば、引き分けで両者優勝になると思う。

そんな逸品がエビフライという存在。

単体では普通のフライでも、カレーと合わさると至高の一品になる、そんな存在。


「ふふふふ……」


 完成図を予想すると思わず笑みがこぼれる。

 ……最近いいことが余りなかったのは、きっとこの時の為だったに違いない。

 そうだ! さっちゃんと一緒に食べられればもっと幸せに!


「ふふふふ……」

「……また自分の世界に……。給食を食べれば落ち着くかな?」


 わたし達は配膳おばちゃんから給食を受け取って教室に戻る。


「ふふふふ……」

「ほら、準備するよ。アリアちゃんも手伝って」

「ふふふ……うん? あれ?」


 目の前でカレーが減っていき、エビフライたちが次々と去っていく。


「アリアちゃん、サラダお願いね」

「……うん……」


 そうだった。今のわたしは単なる配膳係。

 大好物と天使を見送ることしか出来ない存在。


「……」


 目の前で天使と楽園があわさり、天国のごとき光景が広がっている。

 わたしはそのおぼんにサラダを乗っけるだけ。そして天国が去り、次の天国がやってくる。そしてまたサラダを乗っけて天国を見送る。


「……わたしは無力だね。大切なものを見送るしか出来ないなんて」

「ソウダネー」

「どうしたらいいと思う?」

「サラダを乗っけてればいいんじゃないかな」

「そっか……」


 わたしは助言を受け、粛々とサラダ係に徹する。

 もう天国は見ないことにした。見るのは空いてるサラダスペースだけ。その方が精神的に楽な気がする。


「ふぅ……終わったーーー……」

「私達も取ろう」

「そうだね……ん?」


 総菜ケースを見ると、エビフライが一本多く入っている。

 わたしたちの人数とエビフライの人数が合ってない。今日はお休みの人はいないし、全員に配り終わってる。と、いうことは……。


「「「「「「 じゃんけん、ぽん! 」」」」」」」


 わたしたち配膳係の気持ちはみんな一緒だ。みんな欲しいに決まってる。

 配膳係の特権の一つ。

 万が一、人数分以上に多く入っていた時は、配膳係りが優先してもらえる。


「勝ったーーー!!」


 わたしは奇跡の勝利を手にした。

 6人じゃんけんなのに一発で決まった。エビフライ2本にかけてチョキを出したのがよかったのかもしれない。エビフライがわたしを選んだとしか思えない。


「ふふふふ、えっび、えっび♪」

「おめでとう」

「うん、ありがとうー♪」


 わたしの楽園カレーには、2体の天使が手をつないでダンスをしている。

 カツ天使とハンバーグ天使の奇跡再び。今は2体のエビ天使が踊ってる。


「ああ、美味しいよー……。一本食べても、もう一本あるー……」


 うちの領地は海と山が近いので、海産物もいいモノが多い。

 このエビフライも、養殖に比べると明らかに大きく、ぷりぷりしてとても甘い。

 山菜は苦手だけど、好きな人に言わせると山菜も美味しいらしい。

 ……この領地に生まれてよかったー。

 他の領地の事はよくわかないけど、うちの領主様は「食」にも力を入れてると聞いたことがある。飢えないように、そして美味しいものを食べられるようにって。

 ……あの超絶美人の女神様。あの人がうちの領主様なんだよねー。なんか、本当に「女神」って気がしてきたよ。


「ふう、ごちそうさまでした……あっ……」

「ん? どうしたの」


 エビフライ2本に浮かれ、さっちゃんの事を忘れていた。

 一緒に食べようと思ったのに……。

 さっちゃんの事を忘れさせるとは……エビフライカレー、恐るべし、だね……。 



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