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永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~  作者: 空知美英


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51話 稽古?


 

 ピン、ポーン……。


 わたしがうーんうーん唸ってたのでサーシャがチャイムを押してくれる。

 ……サーシャとお母さん達の関係なんて今考えてもわかんないか。一緒に暮らすんだからその内わかるよね。今は修行に集中しよう。


「はーい、やっと来たねー、二人とも」


 今日は師範代ではなくユリ姉さんが出て来た。

 恰好が学校で見た正装ではなく、師範代と同じような白の道着に白の袴だ。

 師範代が着てると死に装束に見えるけど、ユリ姉さんが着てるとちょっと綺麗に見える。


「遅くなってすいません」

「気にしないでいいよ。ご両親への結婚の挨拶とかで遅くなったんでしょ。とりあえず中に入って」

「はい」


 なんだろう……サーシャとユリ姉さんの仲がすごくいいように感じる。この感じは支部で案内してもらっていた時と同じ雰囲気だ。戦闘訓練や結婚のこととか色々とお世話になってるから、サーシャのユリ姉さんに対する好感度はかなり高いのかもしれない。

 それに、サーシャは一度もからかわれてないからね……。

 これが師匠と弟子の関係なのかな? 弟子だから真面目に接してるとか?


「粗茶ですが、どうぞ」

「「ありがとうございます」」


 ふぅー……、サユリさんのお茶は落ち着く……。

 お茶を飲みながらサーシャにお菓子を食べさせてもらう……いい、幸せだよ……。

 老後はこんな風にまったりするのもありかもしれない。


「……ということだから、お願いね、サっちゃん」

「はい」


 ……ふぅー、お茶が美味しい……。

 師匠と弟子が修行と関係ない難しい話をずっとしてるから、わたしはお茶でまったりしてるだけだ。

 天才肌の二人に任せれば間違いは起こらないと思う。


「せっかく来たんだし二人に少し稽古をつけてあげようと思ったんだけど、時間も遅いよね……サっちゃんだけでも受けてく?」

「お願いします。強くなりたいです……」


 お、やっと修行の話?


「アリアちゃんはまったり隠居してたのに、サっちゃんは真面目だねー。じゃ、上に行こうか」

「はい」


 隠居はしてないよ……話が難しかったからまったりしてただけだ。

 修行するんなら頑張るし、まったりはしない。

 サーシャの雰囲気もピリピリしてるし絶対にふざけない。


「2階……でやるのはちょっとみんなの邪魔になるね。3階に行こうか」

「え? 3階?」


 道場ってこの2階じゃないの?

 目の前では師範代や20人くらいの人達が動かずに無言合戦してる。

 ここが道場でこれが修行じゃないの?


「外から見て、3階があるの気が付かなかった?」

「そういえば……」


 あったような気がする。

 住宅街にある大きめの3階建ての一軒家……それがこの道場の第一印象だった。

 2階で見学と体験が終わってたから3階の存在をすっかり忘れてた。

 3階も道場なんだ……。


「ここで暴れたらみんなの迷惑だからね。3階なら好き勝手出来るし、これからやる稽古には丁度いいかな」


 ……暴れる? ここって殺気を鍛える無言道場なんじゃないの?

 

「ヤガミさん、3階使いますね」

「うむ」


 2階の階段を出て道場の奥に行くと3階への階段があった。

 これは気付かないね。見学するときは1階への階段横にある客席だ。こんな道場の奥の階段なんか気付くはずがない。

 ……隠された階段みたいでちょっとテンションが上がる。

 3階の道場って、想像もつかないような立派な道場なのかもしれない……。


「んー、久しぶりに来たよ。ワクワクするねー」


 ……上がったテンションを返してほしい。なに、ここ?

 誰もいないしほとんど何もない。窓もなくて照明の光だけが部屋を薄暗く照らしてる。

 床も壁も道場らしくない、支部の訓練所みたいな作りだ。


「2階と全然違ってビックリした?」

「はい……」

「見ての通り、道場って言うより訓練所だね。頑丈さだけをみるなら支部の訓練所より上だよ。力加減を間違えても絶対に壊れないから安心して暴れてね」


 また暴れるって言った……聞き間違いじゃなかったんだね。


「……ここって、動かない無言の殺気道場なんじゃないんですか?」

「ははは、動かない無言の殺気道場って。まあ、そういった人達が自然と集まってきてる道場なのは間違いないかな」


 んん? じゃあこの3階の意味は……?


「今は難しいことは気にしないでいいよ、あとでちゃんと教えるからさ。大事なのは、ここでは訓練所と同じ実戦訓練が出来るってこと。サっちゃん、ここにある好きな剣を選んでいいよ。私は久し振りに基本スタイルでいこうかな」


 よくわからないけど、あとで教えてくれるならそれでいいか……。

 ユリ姉さんは普通の長さの剣を、サっちゃんは同じ短剣を二刀流で持つ。

 木刀じゃなくて金属の普通の剣。刃が丸くなってるから訓練用って感じだ。


「アリアちゃんはここに立ってて。サっちゃんはこっち」

「「はい」」


 サーシャとユリ姉さんが構えて、ちょっと離れた所にわたしが立つ。

 この部屋には客席みたいな椅子がないからここで立ってろってことかな?


「稽古内容は実戦形式の何でもありの戦闘。訓練所でやったことと同じだね。違うのは、私が最初から攻撃すること。手加減はするけど攻撃を当てる。怪我はするけどちゃんと治してあげるから安心してね」

「……はい」


 ……え? 怪我?


「じゃ、始め」


 始めって言った瞬間、サーシャが天井にぶつかって大きな音がする。

 ユリ姉さんが瞬間移動してサーシャにアッパーみたいな攻撃をしたみたい。移動と攻撃は見えなかったけど、右腕を上げてるのでたぶんアッパーみたいな攻撃をしたんだと思う……やり過ぎな気がするよ……。


「グッ……」

「よっと」

「ガッ!」


 天井から落ちてくるサーシャを空中で蹴って壁に叩きつける。

 ……なにこれ? 稽古ってもっと安全なものじゃないの? 素振りと寸止めとか……これじゃあホントに戦闘してるみたい……怪我しちゃうよ……。


「サっちゃんさー、さっき何で強くなりたいって言ったの?」

「グッ!」


 壁に張り付いていたサーシャに瞬間移動の攻撃をして、今度は反対の壁に吹き飛ばした。壁にぶつかってまた大きな音がする。

……こんな大きな音がするって、どれだけ強くぶつかってるのかな……大丈夫……?

 

「学校で色々言われて、それを見返す為に強くなりたいとか思った?」

「グッ……」

 

 今度は部屋の中央に吹き飛ばされて何度も剣で切られてる……。

 ダメ……怪我しちゃう……死んじゃう……。


「それじゃあ駄目だよ」

「……」


 サーシャが膝をついて動かなくなった。

 ……終わった? すぐにサーシャの手当をしてあげてほしい。

 ユリ姉さんにお願いの視線を向けると、わたしの方に向かって歩いてきてた……殺気を出しながら……。

 え? わたしは見学だよね? 終わったんならサーシャの手当をしようよ?


「アリアちゃんも、一発いっとこうか」

「え?」


 笑顔だけど、ユリ姉さんの殺気がすごく大きくなったような気がする。

 殺す気配……ホントにそんな感じ。

 一歩近づかれる度に恐怖が湧き上がってきて身体が震える。

 ユリ姉さんに対して恐怖を感じたのは初めてだ……これが戦闘モードのユリ姉さん……。


「いくよ」


 剣がわたし向かって振るわれる。

 死ぬ……直感でそう感じる。怖すぎてちょっと漏らしてしまった。

 あとで、洗濯、しなきゃ……。

 

 ギィーン……。


「……サーシャ……」

「アリアは、私が守る……」


 膝をついて動けないでいたサーシャが、わたしの前でユリ姉さんの剣を防いでくれた。

 何度か剣が振るわれて、その度にサーシャがうめき声をあげる。

 苦しそうな声が聞こえてるはずなのに、ユリ姉さんは声を無視して剣を振り続けた。


「守れるの、その程度の強さで?」


 ユリ姉さんとサーシャがわたしの目の前で何度も打ち合ってる。

 怖い……ユリ姉さんの殺気はずっとわたしに向けられてる。

 お漏らしが止まらない……恥ずかしいけど怖すぎてそれどころじゃない。

 目の前で大きな金属音がずっと続いてる。


「グッ……ガッ!」


 サーシャがまた吹き飛ばされた。

 

「サーシャ!」


 駆け寄ろうとしたけどつまずいて転んだ。

 足が震えてうまく動かない。

 

「サっちゃんは弱すぎてアリアちゃんを守れなかったみたい。じゃあゴメンね、アリアちゃん」


 ユリ姉さんの剣がまたわたしに振り下ろされる。

 漏らし切ったはずなのに、また漏らしてしまった。

 もうだめ……


「たすけて……」


 わたしは無意識に助けを求めた。 

 怖い、助けてほしい。

 こんなの、稽古じゃないよ……。


 ギィーン……。


「はぁ、はぁ……アリアは、わたしが、守る……」

「この程度の強さで?」

「強くなる……もっと強くなる……」

「何のために?」

「アリアを、守る為に……」


 嬉しいよ……こんなにフラフラなのにわたしを守ってくれる。

 わたしも守りたい……強くなって、サーシャを守ってあげたい……。


「わかればいいよ。じゃあこれでおしまい。サっちゃんとアリアちゃんはお互いを守る為に強くなる。自分の原点を忘れちゃ駄目だよ。見返すために強くなるんじゃなくて、アリアちゃんの為に強くなって、その結果として見返してね」


 ユリ姉さんの殺気が消えていつもの雰囲気に戻った。

 ……こ、こわっかたよー……。

 わたしは漏らして転んでるし、サーシャは四つん這いで下を向いてる。お互いにボロボロって感じだ。こんなの、子供にやっていいことじゃない気がする。


「ゴメンねーアリアちゃん。サっちゃんに不穏な気配を感じたから、アリアちゃんに犠牲になってもらって早めに解決させてもらったよ。おかげでサっちゃんも成長できたし、雨降って地固まるってことで許してね」

「は、はあ……」


 なんかよくわかんないけど、サーシャをボコボコにしてわたしに攻撃したのはサーシャの為だったってこと?

 ……いいよ、だったらわたしにしたことはギリギリ許す。ただ、サーシャが仕返しするのは止めないよ。今は無理かもしれないけど、将来サーシャが強くなって「あの時の恨みー!」とか言ってもわたしは応援する。今日のボコボコ具合はそれぐらいひどいと思うから。


「とりあえず、アリアちゃんを魔術で綺麗にしてあげるよ、「陽浄風〈ヒソウフ〉」。どうかな、私の洗浄魔術」


 ……すごく気持ちいい。

 陽だまりの温かさにさわやかな空気……優しい風がわたしを渦巻いてる感じがする。

 転んで汚れた服が綺麗になったし、漏らし過ぎたパンツも乾いた。おしっこの匂いとかも全くしない。

 物理的な汚れもそうだけど、心も綺麗になった気がする。さっきまでの恐怖やあせりが全くなくなった。

 ……すごいなー、どんなイメージをしたらこんな魔術ができるんだろ?


「……綺麗になりました。ありがとうございます」

「よかったよ。じゃあ、サっちゃんに癒しの氷を出してあげてくれないかな。私が治してあげてもいいんだけど、今のサっちゃんには氷の方が向いてるからさ」

「え? 癒しの氷って普通の怪我にも効果があるんですか?」


 幽霊の後遺症……心の傷を治して魔力を回復するだけの魔術じゃないの?


「癒し氷のイメージを聞いた時にアリアちゃんはこう言ったよね、サっちゃんの身体が中も外も全身傷だらけで魔力で埋めるイメージをしたって」

「はい……あっ!」


 そっか、中も外も傷だらけ……心の傷以外にも普通の傷、怪我にも効くんだ。

 ……この魔術って実はかなりすごいんじゃない?

 サーシャ専用の完全回復魔術……いいね。


「わかったくれた? そういうことだからお願いね」

「はい。……癒しの氷」


 サーシャは四つん這いで下を向いたままだ。

 何かを考えてるみたいだけど、終わったんだから元気を出してほしい。


「サーシャ、大丈夫? これ食べて元気出して。はい、あーん」

「アリア……。ゴメンね……あーん」


 氷を食べたサーシャの表情が少し明るくなった。

 ちゃんと効果があるみたい……。

 立ち上がって身体の様子を確認してる……完全回復してるようでよかったよ。


「愛の氷もお願いしていい?」

「うん、愛の氷……はい、あーん」

「あーん……うん……ありがとう、もう大丈夫」


 いつものサーシャの笑顔に戻った。

 愛の氷は傷の回復とかの効果はないと思うけど、わたしの愛がいっぱい詰まってるので元気の回復には効果があると思う。


「……サっちゃん、自分が強さを求めた理由を思い出してくれた?」

「……はい、ありがとうございました」

「ならよかったよ。じゃ、今日はもう遅いし帰ろうか」

「はい」


 サーシャが強さを求めた理由……。

 わたしが強さを求める一番の理由は「サーシャと一緒にいる為」だったけど、今の出来事でサーシャを守る為に強くなりたいという思いが強くなった。

 サーシャも同じなのかな……わたしを守る為に強くなりたいって思ってる?

 愛をしったばかりのわたしがこう思うくらいなんだから、サーシャも6年前から同じことを思ってたのかもしれない。

 6年間、わたしを守る為に努力してきたとしたら、あの強さにも納得できる。愛する人を守る為に、わたしの為だけに6年間も一人で修行してきた……すごすぎるよ……わたし、サーシャに愛してもらってすごい幸せ者だ。

 わたしも、サーシャを守れるくらい強くなる……愛してるよ、サーシャ……。


「……愛の氷」

「え?」

「あーん」

「……あーん」


 幸せそうな優しい笑顔……ずっと一緒にいたい、守ってほしい、守ってあげたい……。


「わたしもサーシャを守れるように強くなる。だから、ずっと一緒にいてずっとわたしを守ってね」

「うん、ずっと一緒にいてずっと守ってあげる。もっともっと強くなってずっと守る。私の夢は、アリアとずっと一緒にいてアリアに幸せになってもらうこと……全てはその夢の為の努力。もう間違えない、愛してるよ、アリア」

「うん、わたしも愛してる」


 抱き合ってお互いの愛を確かめあう。

 結婚してから何度も抱きあってるけど、抱き合うたびに愛が強くなるような気がする。

 愛ってどこまで強くなるのかな……。


「二人とも、たった半日で愛を深め過ぎだよ。過激ないちゃいちゃを見たいとは思ってたけど、これは限度を超えてるね。人がいる前ではちょっとは自重しようよ」


 いちゃちゃ発言で信頼度が10ポイント下がったよ。

 しかも、愛を自重しろとか……出来る訳がないよね。

 愛の表現に時間も場所も関係ない。

 恋人たちが色々な場所で愛しあってるのをいっぱい見てきた。サーシャの夢の一つ、「恋人になったらしたいこと」を全力で叶えていくだけだ。


「人前とか関係ないです。わたし達は色々な場所でたくさん愛しあいます。ね、サーシャ」

「う、うん……」


 愛の大ベテランのサーシャが真っ赤になって照れてる……。

 6年間もわたしを愛し続けたのに、今さら照れることなんてあるのかな?

 ……愛し続けたからこそ、それが現実になったら嬉しすぎるとか?

 そうだよね、6年分の夢だもん、相当嬉しいに決まってる。色々な場所で色々なことがしたいんだ。


「大丈夫だよサーシャ。学校でも公園でも自宅でも、たくさん愛しあおう。朝から晩までずっと愛し続けてあげるよ」


 サーシャが顔をさらに真っ赤にして、魚みたいに口をパクパクしてる……。

 声にならないほど嬉しんだね。

 そんなに喜んでくれるなんてわたしも嬉しいよ。


「サーシャ……」

「アリアちゃん、ストップ。これ以上はサっちゃんの精神が持たないよ。時間も遅いし、おうちに帰ろう。この後は修行ノルマもあるんでしょ」

「あっ、そうでした! 修行ノルマがあるのを忘れてました!」


 さぼったらお姉ちゃんに地獄投げされる!


「サーシャ、帰ろう! ノルマ手伝って!」

「はぁ、はぁ……うん、手伝うよ……」


 なんで息が切れてるの?

 顔が真っ赤だし、少し湯気が立ってるように見える。

 怪我は癒しの氷で治ってるよね? 痛くて苦しいんじゃなくて、たんに暑いだけ?

 だったら……。


「……氷。はい、氷を食べれば少しは暑さがまぎれんじゃない?」

「はぁ、はぁ……ありがとう、アリア。あーんはいいよ、自分で食べる」

「そ、そう? じゃあ、はい」


 サーシャの手に10個の氷を渡す。

 

「二人とも、食べながらでいいから帰ろうね。ほらほら、下に戻るよ」

「「はい」」


 サーシャは玄関を出るころには氷を食べ終わっていた。

 よっぽど暑かったんだね。冷えたおかげか、真っ赤だった顔も治ってるみたいでよかったよ。


「じゃーね、二人とも。次は日曜日に来る予定だから、またその時にね」

「「はい」」

「あ、それとアリアちゃん」

「はい?」

「氷の改良はほどほどにね。癒しの氷は私のアドバイスが原因だからスルーしたけど、愛の氷……あれはヤガミさんとの約束に違反してるよ。言ったよね、癒しの氷はもう普通の氷の魔術とは別物って。愛の氷も、氷の魔術じゃなくて新しい魔術だよ。愛が絡めば何でも許されるわけじゃないからね。今回は見逃すけど、次は無いよ。思いついたらまず相談、わかった?」

「はい……」


 笑顔だけどちょっと殺気が出てる……さっきの恐怖が少し頭をよぎったよ。

 漏らさないように股をきゅっと締める。

 怖い……次は相談、次は相談、次は相談、次は……。


「アリア、まずは私に相談して。ずっと一緒にいるから相談しやすいよね。私に言ってくれたら魔術を使わないように説得してあげる。そして、一緒に師範代達に相談しよう。アリアが詳細を忘れても、私が全部覚えておいてあげるから安心して」

「うん……」


 サーシャの思いやりが伝わってきて嬉しいんだけど……なんだろう、このモヤモヤした気持ちは……。


「やっぱり、アリアちゃんにはサっちゃんが必要だね。サっちゃん、アリアちゃんが暴走しないように見守ってあげてね」

「はい」

「うん、じゃあ今度こそバイバイ。二人とも、節度を守って愛しあうんだよ」

「「……」」


 ユリ姉さんはそう言って道場に戻っていった。

 わたし達は、「節度を守って愛しあうんだよ」に答えなかった。

 だって、節度を守ることなんて出来るわけないよね。

 サーシャは6年間も我慢したんだよ。今日やっと思いが通じたのに、また我慢しろって言うのはひどいよね。

 今日からは夜も朝もずっと一緒なんだから、いっぱい愛して愛される予定だ。

 一緒にノルマをやって、お風呂に入って、食べさせあって、一緒に寝る。今日は結婚記念日なんだから、いっぱい愛しあってサーシャに喜んでもらう。


「サーシャ、我慢しなくていいからね。いっぱい愛しあおうね」

「う、うん……」


 元の色に戻ってた顔がまた赤くなった。

 照れなくていいんだよ、我慢しなくていいんだよ、もう自由なんだから。



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