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永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~  作者: 蒼依スピカ


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追憶5 運命の出会い。3日目②



「……アウレーリアちゃん依存症、か」


 今の私にピッタリの病名だね。

 我慢する、気持ちを押さえると言いつつ、頭の中は常にアウレーリアちゃんでいっぱい。

 はぁ……、顔、見とけばよかった……。


「ただいま」

「おかえりなさい、お風呂わいてるわよ」

「ありがとう、お母さん」


 お母さんの顔を見て、お風呂に入って落ち着いた。

 うん、お母さんもこの家も大切。

 今は家族と過ごす、それでいい。

 大好きなアウレーリアちゃんと大好きなお母さん……どっちも選べない。


「いってきます」

「いってらっしゃい」


 いつも通りの学校生活が始まる。

 ……あれ、苛めや悪口が減った?

 いつもはホームルームが始まるまでに10回くらいは獣人の生徒から苛めや悪口を受けるのに、今日は5回くらいしか受けてない。ちらちら見てくる子はいるけど、今までと反応が違う気がする。


「ザナーシャ、勝負しろ!」

「また?」


 昨日かけっこ勝負を挑まれて返り討ちにしたモーリス君……いや、もう呼び捨てでいいか。

 今日は腕相撲を挑まれたけど圧勝した。

 モーリスは「明日は僕が勝つ」とか言って席に戻った。

 は? 明日も勝負を挑んでくるの? なんで?


「ただいま」

「おかえりなさい」


 いつもとちょっと違う学校生活が終わって家に帰ってきた。

 ここからはアウレーリアちゃんとの時間だ。今日はお姉さんに道場の師範さんを紹介してもらう予定もある。

 出会ってから退屈な時間がなくなったな……。

 私の運命の人、か……。

 アウレーリアちゃんに出会って幸せになるのが私の運命ってお母さんが言ってたけど、ホントにその通りだと思う。

 あの日、荷物を持ってあげた時から私の人生は不幸から幸福になったんだと思う。

 会いたい……。

 アウレーリアちゃん依存症が発作を起してるみたい。行こう、アウレーリアちゃんの家に。


「行ってきます」

「待って、今日はお母さんも一緒に行くから」

「え?」

「あなたとアウレーリアちゃんが出会ってまだ日が浅いけど、家族とも深い関係になってるから、そろそろ親御さんに挨拶くらいはしないとね。アウレーリアちゃんにも会ってみたいし」


 ……よく考えてみると、出会ってからまだ3日しかたってない。

 なのに、2回も晩御飯をごちそうになって、お風呂に入って、家に勝手に入ってしまった。

 アウレーリアちゃんやクレアおばさん、お姉さんに対する距離感が家族同然に感じる。

 みんなを家族同然に思っていて一緒に住むことも提案されてるのに、お母さんがお姉さんとしか挨拶してないのって、すごく不自然な感じがする。

 

「うん、一緒にいこう」

「ちょっと、待ってね、準備するから」


 お母さんの準備が終わってアウレーリアちゃんの家へ向かう。

 お母さんは普段着のままだけど、お土産をいっぱい持ってる。

 てっきり余所行きの服に着替えるかと思ったけど、クレアおばさんは間違いなく普段着だから、お母さんも普段着の方が雰囲気は合う。


「着いたよ」

「あら、意外と近いのね」

「うん」


 アウレーリアちゃんの家は原人が多い住宅街の外れで、私の家から意外と近い。

 これも運命、なのかな……。

 チャイムを押すとすぐにクレアおばさんが出て来た。


「はーい。いらっしゃい、ザナーシャちゃん。と……」

「私の母です。お母さん、アウレーリアちゃんのお母さんのクレアおばさんだよ」

「初めましてクレアさん。ザナーシャの母、フーシャです。急な訪問で申し訳ありません。どうしても直接お礼を申し上げたかったので娘の訪問に付いてきてしまいました。こちら、よろしければお受け取りください。今までのお礼とお詫びです」

「あらあら、ご丁寧にすいません。アウレーリアの母のクレアです。よろしくお願いしますね、フーシャさん。ザナーシャちゃんには出会った時から何度も迷惑をかけてしまって、こちらこそ申し訳ないくらいです。とりあえず中にどうぞ、遠慮しないでくつろいでください」

「ありがとうございます、クレアさん」

 

 お母さんもクレアおばさんも、特に相性が悪いとかはなさそう。

 普通に仲のいいお母さん同士って感じに見える。

 このまま、家族ぐるみのいい付き合いができたらいいな。


「ザナーシャちゃーーーん!!」


 私がリビングに入った瞬間に大声で呼ばれて抱きつかれた。

 

「うぅ~~~! いいにおいだよ~! このにおいだよ~!」


 アウレーリアちゃんが抱きついたまま何度もスーハー、スーハーしてる。

 私は嬉しさのあまり硬直してしまった。

 ああ……すごい幸せ。アウレーリアちゃんに抱きつかれて匂いをかがれるのが心地いい。

 抱きつかれてるせいで顔は見えないけど、アウレーリアちゃんの匂いはすごく身近に感じる。

 ああ……落ち着く、ホントにいい匂い。なんでこんなにいい匂いがするんだろう……。


「こら、馬鹿娘。さっそく迷惑をかけるんじゃないの」

「う~~~……」


 クレアおばさんに襟首をつままれ、ソファーにポイ捨てされる。

 離されたのは残念だけど、この流れも心地いい。


「急にごめんなさいね、ザナーシャちゃん。この子ったら、朝起きたら「ザナーシャちゃんのにおいがする」とか言ってずっと家の中を捜しまわってたのよ」


 それって、朝にベッドで抱きしめたせい?

 その時の匂いが残っていて、ずっと探していてくれた?

 私の匂いをアウレーリアちゃんが覚えてくれてる……嬉しい、もっと匂いをかいでほしい。

 私はアウレーリアちゃんの横に座り、抱き寄せる。


「アウレーリアちゃん、もっと匂いをかいでいいからね」

「ザナーシャちゃんはやさしー。ぎゅ、してくれていっぱいにおいをくれる。ありがとー……」


 我慢する、気持ちを押さえる……できないよ……。

 アウレーリアちゃんを見ると嬉しさが爆発しちゃう。声を聞くと気持ちいい、匂いを嗅ぐと落ち着く……。

 私の幸せの塊がアウレーリアちゃん、間違いない。

 でも、なんとか気持ちを押さえるしかない。そうしないと、また犯罪まがいのことしちゃう。

 ……今のうちにアウレーリアちゃん成分をいっぱい取り込もう。全身に隙間なく……。そうすれば、一日は我慢できる気がする……。


「すーはー、すーはー……ん? だれ?」


 私の匂いをかいでいたアウレーリアちゃんは、やっとうちのお母さんに気付いたみたい。

 私もお母さんのことを忘れていた……。

 アウレーリアちゃんはホントに私を変にする達人だ。


「初めまして、アウレーリアちゃん。ザナーシャのお母さんです。フーシャって言います」

「ザナーシャちゃんのおかあさん!」


 アウレーリアちゃんが今度はお母さんに抱きついた。

 予測不能過ぎて楽しい。

 初めて会った人にいきなり抱きつけるのはアウレーリアちゃんだけだと思う。


「ザナーシャちゃんとにてるよー……。このにおいもいいよー……」


 アウレーリアちゃんって原人だよね?

 匂い、匂いを連呼してるせいで獣人みたいだよ。

 前世は獣人だったとか?


「ありがとうね、アウレーリアちゃん。私よりも、ザナーシャと遊んでやって」

「うん!」

 

 こっちに戻ってきた。

 その勢いのまま私に抱きつき、またスーハーし始めた。

 お母さんとクレアおばさんは食卓テーブルで話し始めてる。


「あさおきたらザナーシャちゃんのにおいがいっぱいしたのに、いないなんてひどいよー」

「……ゴメンね。今から遊んであげるから許して」

「うん!」


 優しい素直なアウレーリアちゃん。

 私が守ってあげるからね。玩具になんかさせないから。


「お待たせしてゴメンね、はい、ジュースとお菓子。今日はどこで遊ぶの? 部屋でお喋りかしら?」 

「あ、獣人の公園を案内してあげようかと思って。こっちの公園と全然違うので、喜んでくれるんじゃないかと……」

「あら、公園に違いなんてあるのね。それは喜ぶかもしれないわ」

「いくよー! たのしみー!」

「全然違うからきっと驚くよ」

「うん、たのしみ!」


 よかった、楽しみしてくれてる。

 時間的にも、行って、ちょっと見てすぐに帰ってくれば余裕があるはず。

 お姉さんが帰ってくるのは3時過ぎって言ってたもんね。


「ザナーシャ……大丈夫なの? 辛くない?」

「ちょっと見てすぐに帰ってくるよ。何か言われても大丈夫、無視して帰ってくるよ」

「……無理をしないようにね」

「うん」


 お母さんは心配してくれるけど、もう大丈夫。

 悪口を言われても全然気にならなくなったから。

 この白銀色の髪も、金色の目も、アウレーリアちゃんが可愛いって言ってくれる。

 他の言葉は単なる雑音で気にならない、すきに言ってればいい。


「じゃあ行こうか、アウレーリアちゃん」

「うん!」

「ちょっと遠いから、おぶっていってあげるね。乗って」

「おんぶ!」

「ゴメンなさいね、ザナーシャちゃん。行く前から迷惑かけちゃって」

「迷惑じゃないんで大丈夫です。それじゃあ、いってきます」

「「気を付けてね」」

「あら?」「ふふ」


 クレアおばさんとあ母さんの「気を付けてね」が重なってちょっと笑いが生まれる。

 嬉しい。お母さん同士、仲良くなってほしい。


「じゃ、行くよアウレーリアちゃん」

「うん! ザナーシャちゃんのせなかきもちいいよ!」


 髪を触りながらスーハーしてる。

 可愛いな……。背負っているのが全く苦にならない、幸せしか感じない。

 公園に行くのやめて、時間までずっとこの近所をグルグル回っていたくなる。

 ……でも、今日の目的は驚いてもらって喜んでもらうこと。

 早く行こう。アウレーリアちゃんの驚いた顔、早く見てみたい……。


「着いたよ、ここが獣人の公園」

「すごいよーーー! えほんでみたもりだよ!」


 驚いた顔も可愛い。

 森っていうほどの木はないけど、原人の住宅街にはこんなに木がある所はないからね、勘違いしちゃっても仕方ない。アウレーリアちゃんが森と言えばここは森、それでいい。


「すごい! のぼってみたい!」

「じゃあ、掴まって。上に連れて行ってあげる」

「うん!」


 アウレーリアちゃんをお姫様抱っこして一番低い枝にジャンプして飛び乗る。


「どう?」

「ザナーシャちゃんすごいよ! じゃんぷでこんなにたかいところにくるなんて!」

「ふふ、ありがとう。景色はどう?」

「すごくたかくてきもちいいよ! たかいところはとおくまでみえる!」

「うん、そうだね」


 すごく喜んでくれてる。よかった、ここにきて……。

 この笑顔がこの公園で見れたおかげで、嫌な思い出が薄れていく。


「降りるよ」

「うん!」


 枝から飛びおりてアウレーリアちゃんを下ろしてあげる。

 

「たのしかったよ!」

「うん、楽しんでくれてよかった」


 ピョンピョン飛び跳ねてまだ喜んでる。

 初めての森に、初めての高い所ですごくテンションが上がってるみたい。

 可愛いな、連れてきてよかった。

 ……でも、ずっと周囲からチラチラ見られてる……。

 なにか言われる前に帰ろう。せっかくのいい気分なのに、雑音は聞きたくない。


「アウレーリアちゃん、もう帰ろう」

「うん!」

「おい、出来損ないの化け猫が、何でこんな時間にいるんだ」


 はあ、雑音が……いい気分がだいなし……。

 絡んできたのは高校生くらいの3人組の獣人男性。

 なんでこんな時間にいるの? 授業時間中でしょ?

 ……サボり、かな? 見るからに不良っぽいし面倒ごとになる前にさっさと帰ろう。


「もう帰ります。じゃ……」

「待てよ。おまえ、最近生意気になってるって弟から聞いたぞ。出来損ないの化け猫の癖に、獣人の真似事してんじゃねえよ」

「獣人の真似なんかしてません、私は獣人です」

「なめてんのか? 獣人ですって言ってる時点で獣人の真似してんだよ、出来損ないが!」

「キャッ!」


 思いっきりビンタされて私は倒れ込んだ。


「2度と獣人の真似事が出来ないように骨の2、3本いっとくか?」

「……衛兵に通報するよ」

「だったら、通報できないぐらい痛めつけてやるよ。逆らう気が起きないようにな。本物の獣人の怖さを分からせてやる、二人まとめてな」

「!? アウレーリアちゃん、逃げ……グッ!」


 腹を思いっきり蹴られた。


「逃がさねーよ。そっちの原人のガキはビンタ10発ぐらいで許してやる。優しい俺たちに感謝しろよ。化け猫は半殺し、だ!」

「ガッ!」


 今度は頭を思いっきり踏みつけられた。

 ……この人達、ホントに危険だ。こままじゃアウレーリアちゃんも怪我しちゃう。

 アウレーリアちゃんだけでも助けないと……。


「このまま頭を踏み潰してやろうか! 化け猫がいなくなれば世界が平和になる!」

「グッ……アウレーリア、ちゃん、にげ……」

「……なに、して、るの……」


 ……え?

 アウレーリアちゃん、だよね……。痛みで幻覚でも見てる?

 身体が虹色のモヤに包まれてる。なに? 夢?

 

「ちっ、魔力が高い原人か。めんどくせーな……。お前ら、遠慮せずやっちまえ」


 魔力? あれが魔力なの?

 遠慮せずに? ビンタよりひどい目に?

 ダメ、助けないと……。


「クソガキが!」

「死ね!」

「きえて」


 殴りかかった二人が消えた。

 ……二人はどこに行ったの?

 アウレーリアちゃんが「きえて」と言ったらホントに消えた。

 吹き飛ばしたわけじゃなく、高速移動したわけでもない、突然消えた……。


「ちっ、「きえて」か。ホントに消しやがったな……、この人殺しが」


 ……ひと、ごろし?


「だったら、これでどうだ! ファイアボール! 死ねや、クソガキー!」

「いちばんいらないひと、ぜんぶきえて」


 私を押さえつけていた存在が消えた。

 ファイアボールの魔術と一緒に……。

 きえて……殺したってこと?

 アウレーリアちゃんが、人殺し……。


「……ザナーシャちゃん、だいじょうぶ!? こわいひとはいなくなったよ!」

「う、うん……」


 虹色のモヤが消えて、いつものアウレーリアちゃんに戻ってる。


「さすがザナーシャちゃんだよ! あんなこわいひとたちがにげるなんて!」

「え?」

「まもってくれてありがとう!」


 自分が消したのをわかってない? 記憶が混乱してる?


「かおがよごれてるよ、はい、はんかち。ザナーシャちゃんもころんじゃうことがあるんだね」

「ありがとう……」


 落ち着け、私……。

 ハンカチで顔を拭きながら周りを見る。

 ……誰もいない。

 今の騒ぎで、遊んでた子供たちは逃げたみたい。

 もう一度周りを見る。

 誰もいない。

 絡んできた3人組も……。

 周りに3人組がいる気配は全くない。匂いも、血の跡も、何もない。

 

「こわかったねー。ザナーシャちゃんはヒーローだよ!」


 アウレーリアちゃんは前後の記憶がちょっと飛んでるみたいだ。

 ……男の一人が「魔力」って言ってたよね。

 虹色のモヤが魔力で、それを使って魔術で男たちを消した? アウレーリアちゃんが口にした「きえて」が魔術? 

 「きえて」が言葉通りなら、3人はホントに消えたことになる。

 死んだ? それともどこかに消えただけで生きてる?

 

「大丈夫かー、そこの子供達!」


 衛兵さんが10人ほどやってきた。

 逃げ出した子供たちの誰かが呼んでくれた?


「女の子二人が男性3人組に絡まれてるとの通報があり駆け付けた。そっちの子は怪我をしてるな、魔術で治してあげよう、ヒール。3人組の男はどうした? 逃げたか?」

「……はい。衛兵が来てるって嘘を言ったら逃げ出しました」

「そうか。3人組の特徴を教えてくれないか。調査して、厳正に処罰する」

「はい。まず……」


 アウレーリアちゃんは自分がやったことを覚えていない。私が追っ払ったと思ってる。

 ……だったらそれでいい。

 アウレーリアちゃんを人殺しなんて呼ばせない。

 あいつらだって、生きてどこかにいるかもしれない。真実がバレるまでは、私が追っ払ったことにする。


「……これが覚えてる特徴です」

「ありがとう。この特徴……、こいつらは暴行の常習犯の3人組で間違いないな。要注意人物としてマークしていたが、君たちの様な子供にまで手を出すとは……。安心しなさい、すぐに逮捕して罪を償わせる」

「お願いします」

「念のために家まで送ろう、親御さんへの説明もしたい。家への案内を頼む」

「私とこの子は別々の家です。今はこの子の家に私の母親がいるので、そちらに一緒に送ってください」

「わかった。お前たちは事件の聞き込みと周辺の警邏、3人組の逮捕手配と自宅の捜索。組分けは副長に任せる」

「了解」

「では、行こうか」

「はい。……アウレーリアちゃん乗って」

「うん!」

「ん? 私が背負ってもいいぞ? 絡まれて大変だっただろう」

「大丈夫です。この子は私が守ります」

「頼もしいな、なら任せよう」

「はい」

「ザナーシャちゃんのせなかはおちつくー。こわいきもちがきえちゃったよー」 

「うん、よかったよ。いっぱい匂いをかいでいいから、怖いことは全部忘れようね」

「うん! すーはー、すーはー……」


 ゴメンね、怖い思いをさせちゃって……。

 私が守るって思ってたのに、逆に守られちゃった……。

 アウレーリアちゃんことを「人殺し」なんて絶対に呼ばせない。あの魔術のことは誰にも言わない、私だけの秘密。

 もう絶対にあんな魔術は使わせない。私が強くなって、あんな奴らなんか簡単にやっつけられるようになる。


「……着きました、ここです」

「そうか、親御さんを呼んできてくれるか」

「はい」


 背中で寝ているアウレーリアちゃんをソファーに下ろす。

 クレアおばさんとお母さんに事件のことを軽く説明して、衛兵さんが外で待ってることを伝えた。

 クレアおばさんは「またこの子は……」って言っていたけど、お母さんはすごく動揺していた。


「また、お母さんに心配かけちゃった……」


 今日だけで2回も心配をかけてしまった。この家への侵入と今回の事件……。

 どっちも私の甘さが招いたことだ。

 今回の事件も、アウレーリアちゃんがいればなにを言われても大丈夫って甘い考えが原因だ。私がどれだけ嫌われているかを甘く考えてしまった。

 せいぜい悪口を言われるだけだと楽観的に考えて、その先があるのを忘れていた。

 もっと冷静に、客観的に考えないと。

 我慢して、気持ちを押さえて、物事の先を見ないと……。


「アウレーリアちゃん……絶対に私が守る、絶対に幸せにする。みんなの為に……」



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