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永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~  作者: 蒼依スピカ


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44話 癒しの氷



「二人とも、そろそろ話をしたいんだけど、いいかな?」

「……はい」


 ホントはさっちゃんとずっとくっついていたいけど、ユリ姉さんの話も大事だよね。

 さっちゃんを助けてくれたんだし、色々と意味不明なことも多いから。


「校長、どこか落ち着いて話せる場所を貸してくれませんか?」

「それでしたら、校長室横の応接室をお使い下さい。ご案内します、どうぞこちらへ」

「感謝します。二人とも、付いてきてね」

「はい」


 ……ユリ姉さんって何者? なんで校長先生と対等以上に話しが出来るの?

 そもそも、なんで学校の問題に民兵組織が口出せるのかな……。

 こういうことって、学校のお偉いさんとか衛兵さんが出てくるもんじゃないの?

 ……そういえば、衛兵さんから話を聞いたから来たって言ってた気がする……。

 取り締まるはずの衛兵さんの代わりにユリ姉さんが来たってこと?

 うーん、上下関係がよく分からない。てっきり、民兵組織の上が衛兵さんを含めた領軍だと思ってた。


「こちらです、どうぞご自由にお使いください。すぐにお茶をお持ちします」

「はい、ありがとうございます」


 おおー、校長先生の応接室だ! いつもすごく気になってたんだよ!

 予想通りの光景で感激!

 高そうな家具と謎の絵画に変な壺。いいねー、高級感たっぷりだよ!


「ははは、まあ、適当に座ろうか」

「はい!」


 おおー、すごい気持ちいいソファーだ。うちの物とは比べ物にならない座り心地!

 テーブルも無駄に豪華ですごく高そう! これって大理石ってやつかな? ピカピカでスベスベだ!


「ははは、無駄に高そうな家具に変な美術品だねー。私達が納めた血と涙の税金が、こんな無駄なことに使われてるのかー。いかにも、欲にまみれて堕落した権力者がやりそうなことだねー」

「……」


 言い方が酷い……。上がったテンションが一気に下がったよ。

 校長先生が聞いたらきっと激怒すると思う。


「二人とも、権力者になってもこうなっちゃ駄目だよ。これを反面教師にして良い権力者になってね」

「……はい」


 ホントに言い方が酷い。校長先生が聞いたら100%激怒するよ。

 それに、わたし達が権力者って……全く想像がつかない。いや、さっちゃんだけはそうなる可能性が高いかな? 超優等生だから組織のトップクラスになる可能性が高い。わたしは……うん、頑張っても下っ端の民兵さんだね。ん? そうなると、一緒にいられないんじゃ……。


「そうそう、サっちゃんの幸福度はアリアちゃんの頑張りにかかってるんだよ。二人で一緒に権力者になって幸せになってねー」

「「……」」


 さっちゃんと一緒にいる為に頑張るって決めた。並んでも笑われないように頑張るって決めた。でも、それはもしかして凄く大変なことなんじゃないの? 超優等生のさっちゃんに並ぶ……それってつまり、わたしも超優等生にならないとダメってことだよね? わたしが超優等生? ありえないよ……及第点でいいとか考えてたけど甘かったみたい……。


「大丈夫だよ、アリアちゃん。権力者にならなくてもずっと一緒にいるから。どんな環境でも、アリアちゃんと一緒にいられれば私は幸せだから」

「……」

 

 すごく優しいさっちゃんの笑顔と言葉に思わず「うん」って言いそうになる。

 でも、ここで「うん」って言ったら今までと変わらない。

 さっちゃんは、わたしと一緒にいられれば幸せと言ってくれるけど、わたしの考えるさっちゃんの幸せはちょっと違う。

 ずっと一緒にいることは最低限の幸せだ。わたしはさっちゃんの超優等生な能力を生かしてもっと幸せになってほしいって考えてた。でもそれって、わたしも一緒に並んでなきゃダメなんだ。そうしないと、ホントの意味でさっちゃんは幸せになれない。


「……わたし、頑張ってさっちゃんに相応しくなるよ。さっちゃんを下っ端の民兵さんには絶対にさせない。さっちゃんに相応しい立場についてもらって、わたしもその横にいる。それがわたしの考えるさっちゃんの幸せだから」

「アリアちゃん……」

「さっちゃん……」


 さっちゃんが笑顔で泣きそうになってる……。

 嬉し泣きだよね、分かるよ。握られてる手がすごく痛いから。わたしは痛くて泣きそうだよ。


「ははは、いいねー。幸せそうな二人を見てるとこっちまで嬉しくなるよ。涙の意味は違うみたいだけど、すごくいい絵になってる! 絵画にして、この部屋の悪趣味な絵と交換したいくらいだ!!」

「……失礼します。お茶をお持ちしました」

「ありがとうございます」

「……では、私は席を外してますので、後はご自由に」

「はい」


 校長先生の顔が引きつってたけど、今のユリ姉さんの発言が聞こえてたんじゃない? 大声で悪趣味な絵とか言ってたけど大丈夫なのかな?


「ははは、聞こえたかな? ま、事実だから仕方ないよね」


 事実でも言っていいこと悪いことってあるんじゃないの?

 社会人モードのしっかり者のユリ姉さんが台無しだよ。


「うーん、お茶もお菓子も美味しいねー。これも私達が苦労して納めた税金の成れの果てかー。さ、二人も食べなよ」

「はい……」


 なんで税金のなれの果てとか言うかな……せっかくの高級お菓子が台無しだよ。今日のユリ姉さんは毎回愚痴を言わないといけない病気にでもかかってるのかな?


「アリアちゃん、あーん」

「あーん……」


 さっちゃんが食べさせてくれるだけで幸せだけど、どうしても税金の味が邪魔をする。

 さっちゃんにも「あーん」してあげよう、そうすれば少しは税金の味が薄れるよね。


「はい、さっちゃんも、あーん」

「私はお菓子より、こっちをあーんしてほしいな」


 さっちゃんが水筒を出してくる。


「あ、氷? いいよ、はい、あーん」

「あーん……うん、美味しいよ。アリアちゃんの味が濃くなったように感じる」

「そっか、よかったよ……」


 相変わらず「わたしの味」なんだね……。しかも「あーん」したら濃くなるんだ……。

 さっちゃんが嬉しそうだから我慢するけど、ゾワゾワが止まらない。


「お、その氷って何? 美味しい氷なの?」

「わたしの魔術で出した氷です。食べてみます? わたしは術者だから味が分かんないけど、さっちゃんは美味しいって言ってくれてるからきっと美味しいです」

「魔術の氷かー。私は遠慮しとくよ、たぶん美味しく感じないからさ」

「へ?」


 魔術の氷って美味しいものじゃないの? 

 自然界のものと変わらないんだよね? 自然界の天然氷ってすごく美味しそうだけど……。


「……その氷って、いつも出してあげてるの?」

「はい。さっちゃんが美味しそうに食べてくれるから……」


 さっちゃんを見ると美味しそうに2つ目の氷を食べてる。

 ……ホントに美味しんだよね? わたしに気を使って無理して食べてるとかじゃないよね?


「はぁ……、一つのことを片付けにきたら、すでに次が控えていたとか……。疑問が一つ解けたけど、アリアちゃんもサっちゃんも、本当に退屈しないねー」

「えっと……、これって食べない方がいいんですか?」


 さっちゃんがショックを受けてるよ。ホントに好きなんだね、魔術氷。

 無理してないのがわかったからいいけど、さっちゃんのショックが大きいみたいだから出来れば食べさせてあげたい……ダメなのかな?


「どんどん食べさせていいよ。サっちゃんをアリアちゃんの味で染めるくらいの気持ちで沢山食べさせていいからね」

「私がアリアちゃんの味に染まる……」


 ……わたしの味って表現はやめてほしい。

 さっちゃんが自分を抱いて顔を真っ赤にして震えてるけど……大丈夫、だよね?


「サっちゃんはアリアちゃんの味に染まりたいよね?」

「はい」

「じゃあ、一杯食べないとね。少し食べたくらいじゃ染まれないよ。常に持ち歩いて、暇な時は常に食べるくらいじゃないと駄目だよ。沢山食べて、アリアちゃんの味に染まりきってね」

「はい、絶対にアリアちゃんの味に染まります」

「と、言う訳だからアリアちゃん。沢山食べさせてあげてね」 

「……」


 なにこの会話? おかしいよね? わたしの味とか染まりきるとか……。

 さっちゃんもユリ姉さんも、当然の流れのように話をしてるけど普通じゃないよね?

 「わたしの味」も「染まる」も、人に向かって使っていい表現じゃない気がする……。


「あー、ちょっと表現がまずかったかな? アリアちゃーん、戻っておいでー」

「……」

「サっちゃん、戻してあげて」

「はい。……アリアちゃん、大好きだよ」

「わたしもだよ!」


 え? なに? 突然さっちゃんが告白してきたよ?

 お互いに大好きとか当然のことだけど、口に出して言ってくれるとすごく嬉しい。


「このやり取りは今後も続きそうだねー。アリアちゃん、サっちゃんにいっぱい氷を出してあげてね」

「あ、はい」

「私、頑張ってアリアちゃんの味に染まるからね」

「あ、うん」


 ……もう深く考えない。

 さっちゃんが喜んでくれるから氷を出す、それだけでいいよ。

 わたしはさっちゃん専用の氷製造機になる!


「うんうん、素直で可愛いねー。サっちゃんの救助に来ただけなのに、思わぬ収穫があってお姉さんは満足だよ」

「収穫?」

「今回の様な事故を未然に防ぐ手段が見つかったってこと」

「事故? 未然に防ぐ手段って……」


 事故って「殺す」発言のことだよね? やっぱり今回の殺す発言は理由があったんだ。

 でも、未然に防ぐ手段って……まさか、氷のこと?


「察しがよくてお姉さんは嬉しいよ。サっちゃんは道場で倒れた時のショックがまだ残ってるみたいでね。そのショックのせいで、アリアちゃんが絡んだ事柄に過剰に反応しちゃうの。良いことも悪いこともね。今回は悪い方が出ちゃったみたいだね。で、そのショックを和らげて癒すのがさっきの氷。イメージ的には、サっちゃんの心の傷を氷で埋める感じかな。次に氷を出すときは、そのイメージを強く持つともっと効果的な氷が出せると思うよ」


 倒れた時のショックって言い方してるけど、幽霊に乗っ取られたことを言ってるんだよね。

 あれって普通じゃなかったからね、後遺症があっても不思議じゃない。

 それに、良いことも悪いことも過剰に反応って、すごい沢山心当たりがある。

 お泊り会でのスキンシップがいつもよりすごかったし、今日のわたしのコーディネートも普段のさっちゃんが選ぶにしてはかなり派手な気がする。


「私、そんな状態だったんですか……。アリアちゃん、迷惑じゃなかった?」

「全然迷惑じゃないよ。むしろ、いい方向にはどんどん過剰になっていいからね。さっちゃんがやってくれることに嬉しさの限界なんてないから。氷だって、美味しそうに食べてくれるだけでわたしは幸せだよ。わたしもさっちゃんも両方が幸せなんだから、どんどん氷を出すよ! 遠慮しないでね! わたしの味で染めきってあげるから!」

「うん、ありがとう……」


 「ぎゅ」が痛い……これも幽霊の後遺症だったんだね。

 だったら、氷の改良版を食べさせてあげれば治まるのかな?


「さ、さっちゃん……、氷、食べよ。もっと美味しい氷、出して、あげる」

「あ、ごめんね。もっと美味しい氷……楽しみだよ」

「うん、ちょっとまってね、魔術のイメージを考え直すから……」


 今までの氷のイメージじゃダメだよね……さっちゃんの心の傷を癒すイメージ……。

 む、難しい……イメージが浮かばないよ……。心のイメージが浮かばないから仕方ないよね。

 んー……あ、心をイメージするんじゃなくて、さっちゃん全体をイメージすればいいんじゃない?

 前に氷を食べたさっちゃんが「身体に染みわたる感じ」って言ってたから、それを強くイメージすればいける気がする。

 さっちゃんの身体全体に染みわたる氷……。わたしの気持ちをいっぱい込めて、わたしの味で染め上げる……。

 うん、今のさっちゃんは身体の中も外も全部が傷だらけで、わたしの魔力で全部の傷を埋めてあげるイメージ……。

 いける気がする……。名前もただの「氷」じゃそっけないよね……癒す氷だから……。


「……癒しの氷」


 手のひらに改良版の氷を出した。

 出来てよかったー……。

 1個しか出せなかったけど、製氷皿のイメージが追いつかなかったから仕方ないよね。

 後は味見かな。食べて貰わないと効果があるか分からない。 

 ん? 氷の色がちょっと変な色になってる……これって……魔力の色?

 そうだ、「魔力」で傷を埋めるイメージをしたから水氷じゃなくて、魔力氷になったんだ……。

 これって食べても大丈夫なのかな……明らかに普通の氷じゃないよね?


「ユリ姉さん、これって食べても大丈夫なんですか?」

「んー、大丈夫……かな? サっちゃんを癒すイメージをしたんだよね?」

「はい……」

「ん! じゃあ、たぶん、きっと大丈夫! ガブッといってみよー!」


 ものすごく歯切れが悪いんだけど、ホントに大丈夫?

 さっちゃんがいいなら食べてもらうけど……聞くまでもないね。大好物を前にした獣の顔をしてた。

 舌なめずりしてるし……。美人さんがそんなことしちゃダメな気がするよ……。


「……さっちゃん、あーん」

「あーん……」


 ど、どうかな……。


「……うぐっ……。ひぐっ、う、う、うぅぅぅ……」

「ちょっ!? さっちゃん大丈夫!? キツイなら吐き出して!! ここに吐き出して! ユリ姉さん! これって毒じゃないんですか!?」

「ははは、アリアちゃん、ちょーーーと落ち着こうか」

「さっちゃんが苦しがってるんです! 落ち着けるわけが……きゃ!?」


 さっちゃんが急に抱きついてきた。

 あ、お泊り会のお風呂でもこんなことあったな……。


「アリアちゃん……」

「な、なに?」

「大好き」

「う、うん? 身体は大丈夫? あの氷、不味くなかった?」

「美味しいよ、凄く美味しかった。アリアちゃんの気持ちが詰まってた……私の全部を癒してくれてる、私を大好きって言ってくれてる。凄いよ……こんなにちゃんとした形でアリアちゃんの気持ちを感じるなんて……。もう絶対に離さない、アリアちゃんは私だけのもの。誰にも、絶対に渡さない……。一生私だけのもの……」

「う、うんっ、うぐっ……」


 ものすっごい過剰表現だね! しかも抱きしめてくる力が過去一番強い! 

 すっごく痛くて苦しい! さっちゃんの中に取り込まれそうな力強さ!

 友情表現が極まった感じ! と言うか超えてる!!


「さ、さっちゃ……。ギブ……ギブ……」

「大好きだよ、愛してる、もう離さない、私だけのアリアちゃん」


 言葉が通じない!? 幽霊の悲劇再び!

 それに、息遣いがすごく荒くて体をスリスリしてくるし、興奮した獣みたいだよ!

 なにこれ!? どういう状況!?


「愛してる、愛してるよ、もう絶対に離れない。この匂いも身体も、全部私だけのもの……」

「さ、さっちゃ……もっ、げ、ん、か……い…………ん? あれ?」


 急に抱きしめてる力がなくなった。

 え? なにが起きたの?

 さっちゃんを見ると、わたしの横で寝息を立ててた。

 幽霊の時と一緒だ……今度はユリ姉さんが止めてくれた? 


「いやー、凄いものを見せて貰っちゃった。思わず見とれちゃって止めるのが遅くなってゴメンね」

「……もっと早く止めてください。痛くて苦しくて大変でした……」

「だからゴメンって。私もここまで理性が吹っ飛ぶとは思わなくてさ。君たちの友情を甘く見てたよ。いや、もう友情じゃなくて愛情だね」

「ふざけないで、なんでこうなったか説明してください。またこうなるんだったら、改良氷はもう出せないじゃないですか」


 せっかくさっちゃんの為に「癒しの氷」を考えたのに、もう使えないんじゃ勿体ない。

 すごく美味しいって言ってたし、普通の氷より美味しいのは間違いない。

 どうせなら美味しいものを食べてほしいからね。


「次はもう大丈夫、改良氷を食べてもああはならないよ」

「ホントですか?」

「ホントホント。さっきのは刺激が強すぎたからああなっただけ」

「刺激?」


 刺激を与えるようなイメージはしてないけど、どの部分が刺激なんだろ?


「アリアちゃんはどんなイメージであの氷を作ったの?」

「えっと……、さっちゃんの身体が中も外も全身傷だらけのイメージを最初にしました」

「うん、それで?」

「その傷全部を、わたしの魔力で埋めてあげるイメージを固めて氷にしました」

「ははは、随分過激だねー。あの状態でそんな魔術を受けたらああなっても仕方ないよ」

「過激?」


 刺激の次は過激? 癒しのイメージとかけ離れてる気がする。


「想像できない? 例えばね、アリアちゃんが獣に襲われて全身に深い傷を何ヵ所も負ったとするよ」

「はい」


 ……うっ、想像しただけで痛みを感じる。


「その全身の深い傷に、ものすっごく染みる劇薬をドバっとかけたらどうなると思う?」

「悲鳴をあげて転げ回ると思います」

「さっきのはその「逆」が起きたんだよ」

「逆?」

「気持ち良すぎて転げ回ったんだよ」

「へ?」

「今までの氷は1ヵ所の傷口を優しく撫でていただけ。サっちゃんはそれだけで嬉しそうにしてたでしょ?」

「はい……」


 普通の氷でもすごく嬉しそうに食べてくれてた。

 初めて食べたときはビックリするくらい喜んでた気がする。


「でもさっきの改良氷。「癒しの氷」だっけ? あれは全身の傷口を一気に埋めるイメージをした。どうなるかは想像がつくよね? 嬉しさが限界を超えて……、感情が爆発してああなるんだよ」

「あー、なんとなく想像がつきました」


 普通の氷でもすごく嬉しそうなのに、その何倍もの嬉しさが一気にきたんだ……。

 嬉しい、大好きのさらに上の感情……わたしには想像がつかないけど、さっきのがきっとそうなんだね。

 はぁー……、喜ばせるつもりが、また迷惑をかけちゃったよ……。


「いやー、本当にゴメンねー。そんな極端なイメージをしてるとは思わなくてさ。せいぜい、今ままでの氷のイメージにちょっと気持ちを込めただけだと思ってたんだ。食べさせる前に全部のイメージを聞くべきだったよ、失敗失敗」


 ……ユリ姉さんのことはあまり信用しないようにしよう。

 魔術のことはシズカさんか師範代に聞くことにする。


「本当にちょっとだけ、二人のイチャイチャぶりをもっと過激に見たいと思っただけだよ。今度からは気を付けるからさ、ちゃんと頼ってね」

「……もういいです、ユリ姉さんには頼りません」


 ユリ姉さんは社会人モード以外、信用しない。

 わたしとさっちゃんのやり取りを玩具として見てるんだ。


「ははは、信用を回復する為にアドバイスしとこうかな」

「……何ですか?」

「癒しの氷、一日一回は食べさせたほうがいいよ。後は通常の氷を食べてれば大丈夫かな」

「……ホントですか?」

「ホントだってば。ちゃんとした理由もあるんだけど聞く? 長くなるよ?」

「……ちゃんとした理由なら聞きます」


 これが最後のチャンスだよ。

 これで適当なこと言ってわたし達を玩具にしたら、もうユリ姉さんは信じない。



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