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永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~  作者: 蒼依スピカ


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43話 救出



 笑顔でウインクしてきて、指懲室の方を指さした。

 ……これって、指懲室に行っていいって意味だよね。


「じゃあね、アリアちゃん。無理しちゃダメだよ」

「うん! ありがとう!」


 いい友達を持ったよ!

 待っててさっちゃん! 今行くから!!

 

「おやー、そこにいるのはアリアちゃんじゃない。今って授業中だよね? サっちゃんの為に授業をサボるつもりかな?」

「ほえ?」


 指懲室に行く途中、意外な人物に遭遇した。

 ……なんで学校にいるの、ユリ姉さん?

 ビシッと正装していたせいで一瞬気づけなかったよ。


「ははは、アリアちゃんは相変わらずだねー、思ってることが分かり易過ぎるよ。私がここにいるのはサっちゃんの為だよ」

「……えっと、意味が分からないんですけど?」


 ホントに意味が分からない。もう色々と意味不明だ。

 普段は首都にいるんだよね? なんで学校に? なんでさっちゃんの為に?

 状況が想定外すぎて全く意味不明だよ。


「いいねー、その感じ。数日前に会ったのに凄く懐かしく感じるよー。アリアちゃんもサっちゃんも、たった数日でよくもこれだけ騒がしてくれたね。予定が大きく狂っちゃって仕事の調整が大変だったよ」

「あ、えっと、ゴメンなさい……」


 とりあえず謝っておいた。

 ユリ姉さんに迷惑をかけた覚えはないけど、わたし達のせいで仕事が大変になったらしい。まあ、本部のお偉いさんだもん、仕事がぎゅうぎゅうに詰まっていてもおかしくないよね。


「ま、私がここにいる経緯とか事情とかの説明は後だね。とりあえず、サっちゃんの件を片づけちゃおうか」

「そうだ! さっちゃんを助けないと転校しちゃう!」

「ははは、アリアちゃんに出来ることはないよ。私に任せなさい。どんな理由があろうと、転校とか罰を与えるとか、そんなことは絶対にさせないからさ。指懲室の近くで待ってるといいよ」

「はい……」


 指懲室に向かう途中、ここにる経緯を簡単に聞いた。

 サユリさんに例の件を手紙で伝えられて急遽この街に来たらしい。例の件とは、さっちゃんがわたしを殺そうとした件。

 さっきこの街に着いたばかりで、学校から通報を受けた衛兵に話を聞いてすぐに学校に来たとのことだった。


「あれがこの学校の指懲室かー。はぁ、どこの学校も、この物々しい感じは変わらないねー」


 そう、指懲室は遠目に見ても普通じゃない。

 指懲室は廊下の突き当りある。廊下の途中から壁も床も天井も黒くなっていて、黒い空間には窓もない。指懲室の扉も無駄に豪華なつくりに見えるし、噂では魔術的な何かがあるらしい。いかにもって感じで、犯罪者を閉じ込めておく部屋に相応しく見える。こんな所にさっちゃんが連れていかれた……。

 待ってて、今わたしが側に行くから!


「ぺぎゃ!?」


 黒い空間と普通の空間の境目で空中にぶつかった。


「いったー……何にぶつかったの……?」


 パっと見た感じ、何もないように見えるけど……。

 手を伸ばすと空中に虹色の波紋が広がり、壁に触れてる感触がある。


「……なにこれ?」

「指懲室に近寄るのは初めて? まあ、普通の生徒は近づきもしないか、物々しい雰囲気だからねー」 

「これって何ですか?」

「それは魔力障壁だよ。関係者以外が入れないようにする為と、当事者が逃げ出さない為の壁。この魔術具を持ってないと通れないよ」


 ユリ姉さんが首から下げているカードをヒラヒラして見せてくる。

 前にブリギッテさんから貰ったカードに似てるけど、色が虹色で細かい文字がいっぱい書いてあった。

 ……それがあれば、さっちゃんの所に行ける?


「あ、これって登録した本人しか使えないよ。だから、アリアちゃんはここまで。すぐに戻ってくるから大人しく待っててね。絶対に魔力障壁に魔術を使ったり、破ったりしたら駄目だよ。そんなことをしたら、100%犯罪者で庇い切れないから」

「……はい」


 ユリ姉さんはそれだけ言うと、普通に魔力障壁を抜けて指懲室に入っていった。

 わたしも行きたいけど、今回はユリ姉さんを信じよう。何とかしてくれるよね。社会人モードのユリ姉さんは、怒ったお母さんにも立ち向かえるすごい人だ。きっと大丈夫。

 ……大丈夫、だよね?

 さっちゃんが転校しちゃう可能性と、ユリ姉さんの気楽さが重なって不安になってくる。


「この壁、抜けられたらいいのに……」


 指懲室には魔術的な何かがあるって噂、ホントだったんだね……。

 壁を触って感触を確かめてみる。破るのはダメでも、触るくらいだったら大丈夫だよね。

 硬いような柔らかいような不思議な感触。強く押してみると反発力も感じる。

 これも魔術? わたしが知らないだけで、あちこちに魔術って使われてるのかな?

 そうだよ、魔石を使った機械だって魔術的な物だ。あのカードも魔術具だって言ってた。

 ……ん? 「機械」と「魔術具」の違いって何?

 今までは同じものだと思ってたけど、違う気がしてきた。あのカードって、魔石が使われてないよね?

 

「……魔石の代わりに魔術を使ってる?」


 魔術具って言うくらいだもん、きっと魔術が動力源なんだ。

 魔術を封じ込める様な物があって、それに色々な魔術を封じ込めて用途によって使い分ける。カードに封じ込められてるのが魔術なら、わたしもその魔術を使えればこの壁を抜けれるんじゃないの?

 ……この壁を抜けられる魔術ってどんなのだろう?


「硬いし柔らかい不思議な感触の壁。強い力が加わったら反発もする……」


 うーーーん、壁を抜けられる想像が全くつかない。

 壁を色々触ってみるけど虹色の波紋が広がるだけだ。この虹色の正体が分からないと手がかりがない気がする。これってどんな魔術なんだろう?

 魔力障壁って言うくらいだから、間違いなく魔力が使われてるはず。

 魔力を使って想像を顕現するのが魔術だって、シズカさんも師範代も言ってたしね。

 ……あれ? だったらこの壁の名称って魔術障壁が正しいんじゃないの?


「……もしかして、魔力だけで作られた壁?」


 魔力の色ってもしかしたら虹色なのかもしれない。

 虹色を組み合わせていろんな魔術の色を作る。赤なら火、青なら水……あってる気がする。

 ……試しにこの魔力障壁を自分で再現してみる? 自分の虹色の魔力をそのままま魔力障壁として出すイメージ……出来そうだね……。

 指懲室の魔力障壁に魔術は試せないけど、自分の魔力障壁なら問題ないはず。色々試して、自分の壁を普通に抜けられたら指懲室の壁も抜けらる気がする。


「とりあえず、魔力障壁をやってみようかな……」


 こうしてる間にも、さっちゃんの転校が決まってしまうかもしれない。

 わたしが行っても出来ることはないかもしれないけど、さっちゃんの側にいるだけでいい。もしかしたらお別れになるかもしれないんだ、一秒でも長く一緒にいたい。


「魔力障壁をイメージして……」

「アリアちゃん、魔術はストップだよー」 

「!?」


 イメージに集中してる最中に声をかけられたのでビックリした。

 ユリ姉さんが指懲室から出て来たみたい……終わったのかな?


「あ! さっちゃん!! ぺぎゃ!!!」


 さっちゃんの姿が見えたので、思わず指懲室に向かってダッシュしてしまった。

 この壁、痛すぎるよ……。

 加わった力に応じて反発する力が増すみたいだ。魔力障壁、なかなか手ごわい相手だね……。


「アリアちゃん大丈夫!?」

「う、うん。さっちゃんが無事なら、こんなのなんともないよ……」

「ちょっと鼻血出てるから拭いてあげる。こっち向いて」

「ありがとう……」


 優しく鼻を拭いてくれて押さえてくれる。 

 指懲室の黒い世界からこっちの世界に戻ってきてくれた。   

 絶対に転校なんかさせない。


「うぅ~、さっちゃん、転校しちゃヤダよ……」

「大丈夫、転校しないよ。ずっと一緒にいるから。心配かけてゴメンね」


 さっちゃんの顔を見てもいつもの笑顔だ。

 抱きついて匂いを嗅いでもいつもの匂い。

 抱きしめてくれる力もいつもの優しい力。


「よかった……さっちゃんだよ……」

「うん、私は私だよ……」

「二人とも、そろそろ話をしたいんだけど、いいかな?」

「……はい」


 ホントはさっちゃんとずっとくっついていたいけど、ユリ姉さんの話も大事だよね。さっちゃんを助けてくれたんだし、色々と意味不明なことも多いから。



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