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永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~  作者: 蒼依スピカ


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35話 決意



「頑張ってね。私も出来る限る協力するから」


 さっちゃんは「傷付けられても大丈夫」って言ってるけど、少しでも傷付けたくない。

 力の正しい使い方、か……。

 勉強や修行していけば分かるのかな?

 

「じゃあ、また放課後ね」

「うん、またね」


 教室の雰囲気はいつも通りに戻っていた。昨日の質問攻めはもう無い。

 さっちゃんの言う通り、1日で熱は冷めたみたい。


「アリアちゃんおはよー」

「うん、おはよー」


 何事もない、普通の1日が始まった。

 

「では、数学の授業を始めます」

「……」


 数学か……。

 今まで真面目にやってこなかったけど、これも強さにつながるのかな?

 頑張ってみよう。

 さっちゃんと一緒に働く。この夢の為には、わたしが何時までもバカじゃだめだよね。さっちゃん並みとはいかなくても、及第点くらいは取れないと。


「社会学を始めます」

「……」


 社会学もそうだよね。何時までも逃げてちゃ駄目だ。

 もう就職先が決定してる。しかも有名な民兵組織。

 そこに入るのがわたしみたいなバカじゃ、さっちゃんにも周りの人にも迷惑をかける。頑張ろう……。


「アリアちゃん、今日はどうしたのー」


 給食時間、一緒に食べてる友達がそんなことを聞いてくる。


「ん、何が?」

「なんか、授業中とか真面目だったよね。なにかあったの?」

「なにかってほどじゃないよ。お母さんやお姉ちゃんにちょっと言われただけ」

「そっかー。アリアちゃんのお母さんとお姉ちゃん、厳しそうだもんねー」

「うん」


 午後の授業も真面目に受けた。

 先生や友達から色々心配されたけど、普段のわたしってどれだけダメ人間に見えてるんだろう。いや、わかってはいるんだよ。

 普段は授業中のおしゃべりや落書き、居眠りの常習犯だからね。そんな人が急に真面目になったらわたしだって心配する。


「あーー、でも疲れたーー……」


 真面目に授業を受けるのがこんなにも大変だなんて思わなかった。

 ……さっちゃんは凄いね。こんなに大変なことをずっとやっていて、先生からの評判は最高で成績はトップクラスだもん。

 毎日100kmのランニングをしていて運動神経も抜群。戦闘だってユリ姉さんのお墨付き。

 ……ホントにずっと一緒にいられるのかな?

 さっちゃんの存在がすごく遠くに感じる。

 わたしが修行ノルマや勉強を頑張るほど、さっちゃんの頑張り具合や優秀さが飛びぬけてるのがよくわかる。


「……頑張るしかないよね」


 わたしがダメ人間のままでもさっちゃんは一緒にいてくれる。

 でも、それじゃさっちゃんが不幸になる。

 さっちゃんはきっとスーパーエリート。就職先だって、もっといい所にいけたと思う。だけど、わたしと一緒にいる為だけに民兵を選んだ。

 ……さっちゃんの幸せは、わたしの頑張りにかかってるんだ。


「……図書室で自習でもしてよう」


 わたしが学校で出来ることは勉強だけ。

 成績を上げて、少しでもさっちゃんに相応しくなる、それだけだ。


「明日からの待ち合わせは図書室にしよう……」


 さっちゃんの下駄箱に手紙を入れて図書室に向かう。

 図書室はいつも通り空いていた。

 わたしは社会学の本を取って勉強を始める。


「まずは社会学の成績を上げよう。それから数学だね」


 わたしは頭が悪いし要領も悪い。一度に2科目の成績上げは無理だ。

 授業を真面目に受けて全体の成績をちょっと上げて、図書室で不足を勉強する。

 ……しばらくはそれで頑張ってみよう。


「……」


 黙々と社会学の復習をする。

 ……逃げ出したい。15分くらいしか経ってないけど凄く頭が痛い。

 でも、逃げちゃ駄目だ。ここで逃げたらさっちゃんが不幸になる。

 わたしの為じゃなくてさっちゃんの為に頑張る。


「……」


 うん、さっちゃんの為と思えば頑張れる。

 今後も嫌なことや辛いことがあったらさっちゃんを思い出そう。

 ……全てはさっちゃんの為に!


「うん、今まで嫌だった社会学が楽しくなってきた」


 考え方を変えるだけでこんなに変わるんだね。

 さっちゃんの為に必要な勉強だと思えば、これくらいわけもないよ。

 

カラーン……カラーン……カラーン……


「あ、6時間目終了の鐘だ」


 わたしが放課後に社会学の勉強をする。

 ……昨日のわたしに言っても笑われるね。ありえないもん。

 でも、今のわたしは違う。

 さっちゃんを幸せにする為に何だって頑張れる。

 修行ノルマのおかげでさっちゃんのすごさがあらためてわかった。一緒に働くには今のわたしではダメなんだ。もっと賢く、強くならないと。


「アリアちゃん、お待たせ」

「さっちゃんも6時間目お疲れさまー」

「今日も戦闘関連の本を呼んでたの?」

「ううん、違うよ。社会学の勉強してた」

「え?」


 そうだよね、驚くよね。わたしが逆の立場でもきっと同じ反応するよ。

 クラスの友達と同じ反応。

 わたしって、さっちゃんにもダメな子って思われてたんだね……。

 仕方ないか……。それだけ、普段からだらしなかったってことだから。

 でも、今日からわたしは変わる!


「これからは社会学も数学も頑張るよ。さっちゃんと一緒にいても笑われないようにする」

「そっか、私と一緒にいる為に頑張ってくれてるんだね、ありがとう。わからないことがあったら何でも聞いて、アリアちゃんがわかるようになるまでずっと付き合うから」

「……うん、その時はお願いするね」


 自分の勉強で忙しいはずなのにわたしに付き合ってくれる。

 ……好意は素直に受け取るよ、そして絶対に裏切らない。

 さっちゃんの時間を削る以上、わたしはそれ以上に成長して好意に答える。


「今日はどうする? このまま図書室で勉強する?」

「道場に見学に行こう。勉強も大事だけど修行も大事だよね」 

「うん、アリアちゃんがそう言うなら道場にいこうか」


 正直、今のわたしが道場に行っても出来ることは何もない。無言空間でただ座ってるだけだ。

 でも、さっちゃんは違う。さっちゃんは殺気が分かっていて必死に何かを学ぼうとしてた。わたしが強くなりたいように、さっちゃんだって強くなりたいんだ。

 一緒に強くなって、ずっと一緒にいる。これがわたし達の夢。


 もう迷わない。地道でもいい、強くなって、絶対に夢を叶えてみせるよ。



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