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永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~  作者: 蒼依スピカ


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31話 お姉ちゃん②


 スパーン!


 痛い! スリッパ忘れてた! 


「返事は「はい」よ」

「はい」


 ……逆らっちゃダメだ。

 おじいちゃんは師範代、師範代、師範代……。

 ん? なんでお姉ちゃんが知らないおじいちゃんの呼び方にこだわるの?


「……質問していい?」

「いいわよ、なに」

「どうしてお姉ちゃんが関係のない人の呼び方にこだわるの? もしかして知り合いとか?」

「知り合いと言うほどではないわね。何度か稽古をつけてもらっただけだけよ。向こうは私のことなんて忘れてるんじゃないかしら」


 ……稽古をつけてもらった?

 お姉ちゃんは柔術でおじいちゃんは剣術だよね?

 

「あのおじいちゃ……師範代って柔術も強いの?」

「柔術が強いという話は聞いたことがないわね」


 ……意味が分からないよ。

 柔術がバカみたいに強いお姉ちゃんが、柔術を知らない師範代に稽古をつけてもらう? 武術に年功序列とかってないよね? 

 ……わたしが知らないだけで、武術の世界では年功序列が基本なのかな?


「まず言っとくけど、あの人、ヤガミ師範代は武術界の重鎮よ」

「武術界? 重鎮?」

「武術の世界……剣術や柔術、その他の色々な武術、全部含めた中での偉い人って意味よ」

「ほえー……」


 ……なんか意味がわかんないけど、とても偉い人ってのはなんとなく分かったよ。


「その思考停止する口癖、いい加減やめなさい。間抜けに見えるから」

「無理」


 スパーン!


 痛い! 思考停止で素の返事がでちゃったよ!


「とても偉い人だから絶対に失礼のないようにしなさい」

「はい」


 ……難しいことは考えない。師範代は偉い人、失礼のないように、それだけでいいよね。


「質問は? もういい?」

「うん」


 余計な質問をしてスリッパ折檻をされるのはもうゴメンだ。今は聞くことに徹しよう……。


「じゃあ話を戻すわよ。見学して、殺気をぶつけ合って修行してるって聞いたのよね?」

「うん」

「あの道場はね、各流派の達人がさらに研鑽を積む為の場所なの」


 ……また意味が分からないこと言い出したよ。

 各流派ってどういう意味? 桜花武神流っていう流派じゃないの?


「自分の流派を極めても満足できず、さらに上を目指してる人達の集まり。それが桜花武神流よ」


 ……んん?


「そういった人達はね、型の練習や打ち合いの稽古よりも精神面での稽古を重視するのよ」


 ……んんん?


「型の練習や打ち合いの稽古は自分たちの道場で十分に出来るから、あの道場ではしてないだけ」


 自分達の道場で普段は修行してるから、あそこでは違う修行してるってこと?

 ……それじゃ、なにも知らないわたしとさっちゃんはどうするの? 流派とか型がどうとか、どうやって修行するの?


「はっきり言って、武術経験ゼロのあんたが桜花武神流に入門できるなんて信じられないわ」

「わたしもそんな気がしてきたよ……」


 お姉ちゃんの話がホントなら、あそこには達人しかいないんだよね?

 さっちゃんならなんとかついて行ける気がするけど、わたしは無理じゃない? 武術のぶの字も知らないよ。


「私が稽古を受けれたのも、当時通っていた柔術道場の師範の推薦があったから。でも、数回の稽古で私はリタイアしたわ。あそこは常人が修行する場所じゃない、強さに飢えた狂人が集まる場所よ」


 お姉ちゃんは常人の範囲なんだ。超人だと思ってたよ。でも、そんなお姉ちゃんが数回の稽古でリタイアって……。

 もしかして、想像してるよりかなり辛い修行が待ってる?


「入門の経緯はお母さんから聞いたけど、あんたの何が師範達の目に留まったかは分からない。でも、入門を認められたってことは実力や才能があるってこと。だから助言してあげる」

「助言? お姉ちゃんが?」


 スパーン!


 痛い! お姉ちゃんが真面目に話すから素の反応しちゃったよ!


「素直に聞きなさい」

「はい」

「いい、強くなりたいんだったら桜花武神流は最高の環境よ。常人をやめて死に物狂いで修行しなさい。泣き言をいいたいなら素振りをしながら言いなさい。全ての時間を修行に充てる、そういう覚悟を持つこと。分かった?」

「え、無理」


 スパーーン!!


 痛い!! あまりにも非現実的なことを言うからつい否定しちゃったよ!


「投げ飛ばされたいの?」

「ごめんなさい! 頑張ります!」


 怒りモードが危険域に突入してる! とりあえず、なんでも「はい」、「頑張ります」で通そう!


「口だけね。この場をとりあえずやり過ごそうって魂胆が見え見えよ」


 お姉ちゃんも特殊能力持ちだった!?

 どうしたらいい!?


「私から修行ノルマを与えるわ」

「え!?」

「毎日最低10キロのランニングをすること。時間は問わないわ。早朝でも深夜でも、とにかく走りこんで体力をつけなさい」

「ええ!?」

「毎週体つきをチェックするから、さぼったらすぐに分かるわよ。お姉ちゃん、大学でスポーツ学も勉強してるから」

「うぅ……」

「他にはそうね、腕立て腹筋スクワットをそれぞれ毎日50回追加しとこうかしら」

「鬼! 悪魔! 性悪女!!」


 ズパーン!


 凄く痛い! 言い過ぎた!

 フワッ……

 え? 世界が上下逆に見え……。


 ドシンッ!!


 いったーーーーーい!!! 投げられた!! 思いっきり投げられたよ!!


「今日は寮に戻るわ。言い付けたノルマ、明日から絶対にやりなさい。サボったら投げるから、じゃあね」


 うーーーいたいよーーー……。

 言い返したいけど声がでないーーー……。


「お母さん、アウレーリアは少し考え事をしたいから1時間は声をかけないでほしいって」

「あらそう、じゃあ先にご飯を食べてましょう。レリーティアはどうする? ご飯食べてく?」

「うーん、食べていこうかな。真面目な話をしたらお腹すいたし」

「じゃあ準備するから、待ってなさい」

「はーい」


 ……投げ飛ばされたときの音、絶対にお母さんに聞こえてたよね! 話し声もわたしに聞こえるように大きな声で話してるし! わたしを心配してくれた優しいお母さんはどこ行ったの!?


 ……1時間後、やっと動けるようになった。お姉ちゃんはもう家にいない。

 思いっきり投げられた上に、無理難題な修行ノルマまで課せられた。

……次に帰ってきたら、食事に激辛香辛料をふんだんに盛ってやる!


「お母さん、ごはーん」

「あら、考え事はもういいの?」

「うん、もう復讐方法は考えたから」

「そう」


 お母さんにも言いたいことは沢山あるけど我慢しよう。今日はもうお説教のたぐいはうんざりだよ。

 大人しくご飯を食べて、お風呂に入ってさっさと寝よう……。


「これ、お姉ちゃんからのお土産よ」

「お土産!? なに! 見せて見せて!」


 お土産なんてサプライズを用意してるとは!

 激辛香辛料は半分に減らしてあげるよ!

 ……この袋って、わたしが帰って来た時にお姉ちゃんが持ってた袋だよね? お土産ってご近所産? ちょっとがっかりだよ……。


「……なにこれ?」


 ジャージとはちょっと違う服。

 これって、スポーツウェアってやつかな?

 可愛い服の真逆の存在。これ系の服は学校の運動着しか持ってない。


「……ん、メモ紙?」


『これはノルマ用スポーツウェア。この服を着て日々のノルマをこなすこと。服の傷み具合でノルマの達成具合がハッキリ分かるので、小細工せずに真面目に修行すること。 お姉ちゃんより愛を込めて。』


「うっがぁーーーーーー!!!」


 激辛香辛料倍増してやる!

 わたしが何時までもなにもできない妹だと思うな!


「静かにしなさい! 近所迷惑よ!」

「く、うぅぅ……」

「明日から修行ノルマを始めるんでしょ。早くお風呂に入って休みなさい」


 うぎぃぃぃーーー!!!

 やり場のない怒りが爆発しそうだよ!!



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