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永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~  作者: 蒼依スピカ


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27話 道場へ行こう



「魔術の本はもういいや、武技の本ってないかな」


 わたしは魔戦士だからね!

 魔術はもちろん、武技も使って戦うんだ!


「武技の本、武技の本……」


 あ、これだね。


 『初めての武技講座』


 ……なんか、魔術の本とタイトルが似ていて嫌な予感がするけど、とりあえず見てみよう。


「……」


 同じだった。意味が分からないよ……。

 唯一分かったのは、魔術と同じでイメージが大事ってことくらい。

 ……そっかー、武技もイメージなんだね。でもシズカさんはわたしには使えないって言ってたよね。身体能力が低すぎるって。武技ってイメージと身体能力が必要なんだね。

 魔術はイメージと魔力、武技はイメージと身体能力。

 ……なんとなく分かったような気がする。

 訓練場でさっちゃんが言ってたよね「初めて武技を使えた」って。

 きっと、武技のイメージができてなかったんだね。だからユリ姉さんは目の前で見せて、それでイメージが固まって出来るようになったんだ。


「なるほどねー……」


 わたしが武技を使えるようになるのはまだまだ先の話かなー。

 意味がわかんないページを流し読みする。

 ……魔術の本もそうだけど、なんでこんなに説明が長いんだろう?

 身体と魔力を鍛えてイメージして使う、これだけでいいよね? みんな難しく考えすぎなんじゃないかな……。


「アリアちゃん、お待たせ」

「あ、さっちゃん」


 いつの間にか6時間目が終わってたんだね。

 ……わたしが本に夢中になるなんて初めてじゃないかな。


「勉強してたんだ。先生に何か言われた?」

「ううん、ひとけの無い所にいたくて。それだけだよ」

「そっか、今日は周りがうるさかったもんね。何の本を読んでたの?」

「これ? 武技の本だよ」


 さっちゃんに武技の本と魔術の本を読んでいたことを伝える。


「……アリアちゃんは本を読まない方がいいと思うよ」

「へ? なんで?」

「ユリ姉さんやシズカさんも言ってたけど、アリアちゃんは教科書で習うより、実際に見たりやったりした方がいいと思う」


 それはこの本を見て感じたよ。書いてあることが意味不明だったもん。


「きっと、その本もよくわからなかったでしょ?」

「うん」

「みんな、教科書を見て難しく考えちゃうんだよ。私もそうだったからよくわかるんだ。教科書を何度も読み返して先生に何度も聞いてイメージを固めようとする。教科書にはね、一つの武技について沢山の手順や注意事項が書いてあって、それを暗記してその通りにしましょうって書いてあるんだよ」


 ……なにそれ、すごくめんどくさそう。

 あの意味不明な文書は、そういうことがいっぱい書いてあったんだね。


「でもシズカさんやユリ姉さんの教え方は違ってた。実際に見て真似るだけだった。技量や魔力が足りてれば、実際に見てイメージを固めるだけでいいんだよ」

「そっか、さっちゃんは教科書で勉強してたからイメージするのが難しくなってたんだね」

「そうだね、ユリ姉さんからも私は難しく考えすぎだって言われたね。あの時出来たのはユリ姉さんの動きを真似することだけを意識したからかな」

「シズカさんの焔もそうだったし、その方が簡単だよね」


 ……うん、やっぱりみんな難しく考えすぎなんだよ。


「みんな、シチューブルブルや砂漠の風みたい簡単に考えればいいのにね」

「……なにそれ? シチューブルブル? 砂漠の風?」

「わたしが昨日考えた魔術。ん? あれは魔術でいいのかな?」


 ……本に載ってた魔術とはずいぶんかけ離れてる気がする。戦闘の役に立たないし。


「ゴメン、魔術じゃないかも。本に載ってたのと全然違うし」

「……あまり危ないことはしちゃ駄目だよ」

「危なくないよ。お湯を温めなおしたり、髪を乾かしたりするだけだから。そうだ! 石鹸の泡が身体を勝手に洗ってくれっていうのがあってね、すごく気持ちいいから今度さっちゃんにもやってあげる!」

「……ありがとう。でも無理はしないでね」

「大丈夫だよ、簡単だし」

「……そっか、ならいいんだけど……」


 武技と魔術の使い方かー。

 教科書とかって正しいから採用されてるんだよね?

 でも、さっちゃんが言うには難しく考えすぎてる。

 教科書通りにやってたら出来なくて、ユリ姉さんに教わったらすぐに出来た。

 ……出来る方がいいよね?

 なんで教科書では間違った教え方してるの? シズカさん達に聞けばわかるかな……。


「さっちゃん、このあとって空いてる?」

「うん」

「シズカさん達の道場に行ってみない? 今日すぐに入門出来るかどうかはわからないけど、見学くらいはしておきたいんだ。聞いてみたいこともあるし」

「いいよ、行こうか」


 ここで本を読んでても何もわからないし、直接聞いた方が早いよね。

 バイトもしなくてよくなったし時間はあるんだから。


「道場で修業ってどんなことをすのかな?」


 道場への途中、さっちゃんとそんな話をする。


「なんか、すごくつらくて堅苦しいイメージがあるんだよね」

「……私も行ったことがないからわからないかな。でも、そう言うイメージはあるね」

「だよねー……」


 道場=修行=つらい、ていうイメージしかない。素振り1000本とか、階段うさぎ跳びとか。

 ……耐えられるのかな、わたし?

 強くなるって決めたけど、素振り1000本とかしたら倒れるよね。

 訓練所にいたような熱苦しい人がいっぱいいたらどうしよう……。筋肉ムキムキのおじさんが「よくぞきた!!!」みたいなことを言ったらUターンする自信がある。


「シズカさんみたいな人が睨みを効かせてる中で修行とか、ちょっと嫌だな」

「でも、修行ってそう言うものだと思うよ。厳しくないと強くなれないと思うし」

「さっちゃんは真面目過ぎだよ。わたしたちはまだ小学生だよ。加減してくれないと死んじゃうよ」

「大丈夫、アリアちゃんは私が守るから。それに、一緒に強くなろうって言ってくれたよね。私も頑張るからアリアちゃんも頑張ろう」

「……そうだね」


 さっちゃんと一緒にいるには強くならなきゃならない。

 それは分かるんだけど不安は消えない。

 

「あ、このあたりかな? どこだろ?」


 名刺に書いてある住所付近に着いた。

 うちの近所だ。ホントにここにあるのかな? ここって普通の住宅街だよ?

 今まで何度も通った所だけど、道場なんてなかったような気がする。


「あの建物じゃないかな」


 さっちゃんが指さしたのはちょっと大きめの3階建ての家だ。

 ……あれって普通の家だよね?

 お金持ちがちょっと見え張って建てた普通の家。そんな家に見える。


「行こう、アリアちゃん」

「あ、うん」


 わたしには分からないけど、さっちゃんはあそこが道場だって確信があるみたい。さっちゃんは目がいいからね、信じるよ。きっと、なにか見えたんだよね……。


「なにこれ普通過ぎるよ!」


 思わず突っ込んじゃった。

 普通の家に普通の表札。そこに小さく「桜花武神流」とだけ書いてある。

 道場の看板って、でっかい木の板に立派な文字で書いてあるんじゃないの!?



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