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永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~  作者: 蒼依スピカ


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25話 種類は無限大!



「お母さん、これで温められない? 焔〈ホムラ〉」

「この馬鹿! 室内でそんな物騒な魔術なんか使うんじゃないの!!」


 お説教が始まってしまった……。

 出した焔の消し方が分からなかったから余計に怒られた。なんとかストローで魔力を吸い出すイメージで消えたけど、ちゃんとした消し方を教わっておくんだった……。

 でも、焔が物騒だってのはその通りかな。鎧をボロボロに出来るしね。

 火魔石=火=焔の考えは安易すぎたかも知れない。シチューを温める魔術をイメージしなきゃ駄目だよね。シズカさんも言ってた。魔術はイメージで種類は無限大だって。

 ……鎧ボロボロの物騒な魔術があるなら、シチューをあっためるほんわか魔術があってもいいんじゃない?

 シチューを温める魔術ってどんなのだろう? 火魔術って攻撃向きだよね。火以外で温める方法……。

 冬の寒い日に温まる方法……手をこする、とか? シチューをこするって想像つかない。

 ……そもそも、なんで手をこすったらあったまるのかな?


 スリスリスリスリ……。


 あったかい……。摩擦?

 ……んー、シチューを摩擦で温める? どうやって? シチューを分けて、シチュー同士でスリスリする?

 ……2つに分けても中までは温まらないよね。もっと細かくして、一斉にスリスリ……。

 スリスリじゃ動きが大きすぎる気がする……ブルブルでいこう。寒い日にブルブルするとあったかい気がするもんね。

 ……シチューを粉みたいに細かくイメージして一斉にブルブル……あったかそうな気がする。

 ……いけるんじゃない、これ。

 魔術「シチューブルブル」……可愛いし、楽しそう。


「……お母さん、シチューを温める魔術を試していい?」

「そんなのあるわけないでしょ! 馬鹿なこと言うんじゃないの!」


 お説教が激しくなったよ……。

 でも、いけそうな気がする……イメージ出来てるし。


「食べ終わったなら、お風呂に入ってさっさと寝なさい」

「はーい」


 シチューに魔術をかけたら勘当すると言われたのでもう試せなくなってしまった。

 ……言われた通り、さっさとお風呂に入って寝ようかな。

 お風呂は沸いてる。これも火魔石の機械のおかげだ。魔石かー……。魔術と魔石。同じ「魔」が入ってるんだから、きっと同じことが出来るよね。

 身体を洗いながら考える。

 

「……この石鹸の泡って、勝手に動いて身体を洗ってくれたりしないかな?」


 洗濯機をイメージする。

 衣類と水が中でぐるぐる回って、洗剤や衣類がこすれることによって綺麗になる。

 この場合の衣類はわたしだけど、わたしは回せない。目が回って倒れるだけだ。

 ……回るのはこの泡……。泡が勝手に身体を這い回って綺麗に……。


「出来そうな気がする……。洗浄魔術、泡洗浄なんてどうかな」


 泡が身体を這い回るイメージをして……。


「……泡洗浄」


 シュルルルルルッ!!


「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!! くすぐったい!! ストップ、ストップ!! 止まってーー!!」


 ヒーヒーヒー……。死ぬかと思ったよ……。

 出来たけど死ぬかと思った。


「アウレーリア!! なに遊んでるの!! 静かに入りなさい!!」

「ごめんなさい」


 ……これは大失敗。綺麗にもなってないし、怒られたし。

 ……這いまわるとくすぐったいからダメだね。なにかいいアイディアがないかなー。うーん……あ、染み抜きなんてどうかな?

 お母さんが服のシミにポンポン叩いて綺麗にしてるやつ。

 泡でポンポン叩くのはイメージできないけど、震わすくらいは出来そうじゃない? さっきのシチューで思付いたブルブルを泡でやる。

 小さくはしなくていい。この泡、そのままブルブルさせる……。  

 

「……泡洗浄」


 おおー、気持ちいいー! 全身を微弱マッサージされてるみたい! 汚れも泡に包まれていってるよ! すごい、これは便利! 今度さっちゃんにもやってあげよう!


「……すぐ止まっちゃった……。魔力の込め方が少なかったとか?」


 もう一度したいけど、あまり長く入ってるとまたお母さんに怒られそう……。お風呂に浸かって早く上がろう。


 チャプン……。


「うーん、なんか、温くない?」


 お説教と泡実験が長すぎたかな?

 ……追い炊きボタンは……あ、これって、シチュー実験できるんじゃない? 出来そうだよね?

 お湯を粉みたいにイメージしてブルブル……。


「シチューブルブル」


 ……温かくならない……。イメージできたし、魔力が流れた感覚はあったからいけたと思ったんだけどなー。

 ……ん? あれ? なんか……。


「少しだけ、あったかくなってる?」


 これって、成功してるんじゃない?

 温度計を見たら2度くらい上がってる。

 浸かりっぱなしだったから変化に気づかなかったみたい。

 ……あ、ちょっと熱いかも。温度下げたい。それも魔術で出来ないかな?

 氷魔石があるんだから、氷魔術だってきっとあるよね。でも、物を冷たくするってどうするんだろう?


「……難しい。想像できないね」


 魔術はイメージ。想像できないものは魔術にできない。

 でも、シズカさんは魔術の種類は無限大って言ってたよね……これって単なるわたしの想像力不足?

 想像できるもの……その中で冷たいもの……。

 ……冷凍庫の氷、かな。

 あれを浴槽にドバっと入れたら、温度が下がるんじゃない?

 焔と一緒だよね。手のひらを上に向けて、冷凍庫の氷をイメージ……。


「氷」


 ザパッ!


 おおー、出てきた!

 量は冷凍庫の氷が10個くらいだけど、出てきた!

 ……これって製氷皿の量だよね。

 そっか、冷凍庫にある氷をイメージしたからだ。

 お湯の量に対しては少なすぎて効果ないけど、繰り返せば……。


「アウレーリア!! いつまで入ってるの!!」


 ……時間切れだね。これ以上お母さんを怒らせたらお説教が始まっちゃう。


「いま出るよー」


 魔術、いいね。なんでみんな使わないのかな? こんなに便利なのに。

 ……例えば、このドライヤーも魔術で代用できるんじゃない?

 これは風魔石だけのドライヤーだけど、火魔石を加えた温風ドライヤーも売ってる。

 温風をイメージして手から出す……。

 ……ん? あれ? 温風のイメージができない? なんで?

 ドライヤーのイメージじゃダメなのかな?

 ドライヤー、温風機……ダメだね。想像できない。


「……物じゃなくて、自然とか?」


 自然……暑いところの風……乾燥してた方がいいよね……。

 ……砂漠、なんてどうかな?

 家族旅行で行った砂漠。暑くて喉が凄くかわいた。

 砂漠に風が吹いて、わたしを吹き抜ける……ん、いけそう。

 ……どこから出そう? 手から出すのはイメージできないね。空中からは無理……天井からも無理……足元……あ、いいかも。足元から上に向かってフオーって感じ。いいね。

 足元から出る砂漠の風をイメージ……。


「砂漠の風」


 フワッ


「あ、出来た」


 風は弱いけど、間違いなく温風だ。

 髪が少し持ち上がる程度の風だけど、乾かすには十分かな。


「フンフンーフフッフンー♪」


 便利だねー魔術って。魔石いらずじゃない?

 もしかして、生活魔術とかってあるのかな?

 きっとあるよね。だって種類は無限大だもん。

 使ってる人は見たことないけど、みんな自宅では使ってるのかな?

 火が出せるし、風も出せる。氷が出せたんだから水だって出せるはず。生活が凄く便利になるよね。


「お母さーん、もう寝るね、お休みー」

「はい、お休み」


 あー、疲れたー。ベッドが気持ちいい。

 ……今日は色々あったなー。

 でっかい組織にいって、おいしいご飯食べて、魔術を教わって、温泉に入って、お小遣い貰って、魔動車に乗って……。

 ……振り返ると物凄く濃い1日だね。先週のプール事件より濃い一日だよ。

 進路も決まったし、さっちゃんとの友情も深まった。


「さっちゃんと一緒に就職かー……」


 ちょっと前は社会人になりたくないって思ってたけど、さっちゃんと一緒に働けるならありだよね。

 ……道場も就職もさっちゃんとずっと一緒。

 夢のようだね!


「うわーー! 嬉しすぎるーー!」


 興奮したら暑くなってきた。

 送風機のスイッチを入れてっと……。

 ……これも魔術でもっと快適に出来るんじゃない? 夢の冷風機の再現! ……は無理だね。

 ドライヤーと一緒だ。自然じゃなきゃダメだ。

 砂漠の反対……これは冬でいいかな?

 冬の風……風邪ひきそうだから無理だね。

 風じゃなくて、空気……冬の空気をイメージ……いけそう。

 部屋全体を包む、冬の空気をイメージ……。


「冬の空気」


 出来た! 明らかに空気が冷たくなったよ! 涼しい!

 ……でも、ものすごいめまいと頭痛がしてしてきた。なにこれ、キツイ……あ、れ……ねむ、け、が……。



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