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1話 アウレーリア


 この世界は平和だ。

 領主同士の結束が固いので、領地間の争いが起きず、お互いを尊重して助け合っている。

 領内の治安も良く、大きな犯罪は滅多に起きない。

 その為、領民全員が不自由のない暮らしが出来ており、教育機関もしっかりとしていた。

 小学校には6年間、中学校に3年間、高校には3年間無償で通え、お金を払えばより専門的な教育が受けられる大学に通う事が出来た。

 この制度により、領民全員が一定の知識と教養を身につける事が出来ており、平和で、文明レベルも高く安定している。


 これは、そんな世界に暮らす少女の物語……。


 早朝のとある子供部屋。小学校に行く準備をしている少女がいた。腰の中程まで伸びた赤色の髪を丁寧にとかし、可愛らしい服を着飾り、可愛らしい髪留めを着け、鏡を見ながら自身の格好を確認。満足げに頷くと、鏡に向かって赤い瞳をウインクした。


「今日もわたしは可愛い!」


 ちょっと自意識過剰で元気一杯の女の子。

 名前はアウレーリア。10歳。現在小学4年生。


「行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい。転ばないようにねー」


 母親に見送られて小走りで学校に向かう。

 通りの人から挨拶をされて挨拶を返す。いつも通りのいつもの日常。


「嬢ちゃんおはよう、今日も元気だな!」

「おはよう、ジョンさん! 今日もお仕事頑張ってね!」

「ありがとーな。嬢ちゃんも学校頑張れよ!」


 途中で友達と合流する。


「さっちゃん、おはよう!」

「おはよう、アリアちゃん」


 アリアとは私のあだ名。友達や親しい人達はみんな「アリアちゃん」と呼ぶ。


「さっちゃん」は2歳年上の幼馴染みの大親友で、今は6年生の12歳。本名はザナーシャ。


 小さい頃に本人が「ザ」は可愛くないと言っていたので、わたしが「サナーシャちゃん」と呼んだら喜ばれた。そして、いつの間にか「さっちゃん」と呼ぶ様になっていた。


「アリアちゃん、また新しい髪留めを買ったんだね」

「うん、可愛かったからつい買っちゃった」

「似合ってて可愛いけど、衝動買いはいい加減控えた方が良いよ。お小遣いは大切に使わないと」

「分かってるけど、つい、ね。さっちゃんはお財布の紐が固すぎるよー」


 女の子はみんな可愛い物が好きだと思う。つい買っちゃうくらい。でも、さっちゃんは大人びていて節約や貯金が大好きなのだ。


「今日は学校が終わったらバイトしようかなー」

「また、民兵のお手伝いをするの?」

「うん。他のお仕事よりたくさん貰えるし」


 ここでは8歳からアルバイトが出来る。

 畑作業や商店の手伝いなど色々あるけど、民兵のお手伝いが一番お給料が良い。

 民兵とはいっても、わたしは何でも屋さんだと思ってる。

 護衛に始まり、害獣駆除、森での採集、荷物の配達、ペットの世話、汚物の処理……多くは専門職で追いつかなくなった時に民兵にその仕事が回される。

 だけど、子供には安全に配慮した比較的楽な仕事が与えられる。前回は公園掃除のお手伝いだった。


「勉強も頑張らないと駄目だよ。前回の社会学のテスト、確か5点だったよね」

「凄いでしょ! 領主様の名前と種族名にマルを貰ったんだよ!」

「……アリアちゃん、怒るよ」

「ごめんなさい」


 わたしとしては頑張った。

 100点満点中1問正解の5点でもわたしは頑張ったと言える。いつもは0点だもん。

 先生と両親から、最低限、領主様の名前と種族名を覚えなさいと叱られたから頑張って覚えた。

 領主様の名前は「レクシール・ラフィスセレン」。

 わたしの住んでるラフィスセレン領の女性領主様。

 実際に会った事はもちろんない。授業で似顔絵を見た事があるだけ。

 周囲の大人達は、慈愛の女神だとか女神の化身だとか、やたらと「女神」と言う敬称をつけて表現する。

 ……そんなに凄い領主様なのかな?

 美人さんなのは似顔絵を見たので分かる。龍族だから凄い力を持っているのも間違いないんだと思う。でも、「女神」は大げさ過ぎない……?

 大人になって、社会人になれば凄さが分かるのかな……。

 そんな事を考えていたら、いつの間にか学校に着いていた。


「さっちゃん、また放課後ね!」

「うん、一緒に帰ろうね」


 ホームルームが終わり、1時間目が始まった。

 わたしの数ある天敵の一つ、社会学だ。

 ……朝一番から社会学なんて辛過ぎる。もう帰りたい。とりあえず、寝て過ごそう……。



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