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魔女と鬼と恋人と

作者: 小野遠里

 愛し合ったその後で、充希が言う

「今日のはよかったわ」

「終わってから採点するのはやめてくれ」

「ごめん。癖になってる。時に話があるんだけど、いいかな」

「なんだい?」

「彼氏がね、あたしと暮らしたいって、言うの。私の事を愛してるから、ずっと一緒にいたいんだって。いい?」

「別にいいけど・・・ そういう話って、ベッドの中で裸で抱き合いながらするような話だろうか?」

 彼女はぼくにキスしてから、「何か着た方がいいかな?」といった

「それで、いつ引っ越すの?」

「引っ越さない。要る分だけ持っていくつもり。残りはここに置いていくから、鍵を持ってていい?」

「うん。いいよ。好きにしてくれればいい」

「有難う。助かるわ。それでね、今まで、お家賃は身体ではらってたけど、もう払えなくなるの」

「いや、そう云うつもりはなかったが・・・」

「じゃあ、どう云うつもりであたしを抱いてるの?」

「改めて聞かれると答え難いな。とにかく、好きにしてくれたらいいよ」

「有難う。そうするわ」

 そんなふうに言って、翌日、スーツケースに要る物だけ詰めて、彼女は出ていった


 三日後、夜の街を歩いていると、幅広の帽子にサングラスの女性に声を掛けられた

「お兄さん、遊ばない?」

「いいけど、幾ら?」

「三万円。諸物価高騰の折だから」

「高いな」

「あなたの家でもいい。ホテル代が助かるわよ」

「ははは」と笑ってしまった「充希が出てったのを知ってるんだ」

「また変なのに恋してる。魔女って多感だからしょうがないけど」

「どうやって監視してるんだ? 監視カメラなんてないだろうに」

「鳥とか、イタチとか、その辺りね」

「ホテルがいいな。家だと、気分が出ないから」

 ホテルに入って、帽子脱ぐと角が、サングラスを外すと紅い目が現れる。

 鬼である。名は葉月と云う。

 古い知り合いなので今更驚きはしないが、街中に出るのに、角が邪魔だろうと思う。奈良の鹿みたいに切ったりはしないのだろうか? そうきくと、角がないと鬼の力が弱まるのだそうである。それに角のない種族もいて、人との折衝の必要があれば彼らがすると云う。鬼社会にも身分差があるのかときくと、それはないけれど、逆の立場がよかったと云うのはあるらしい

「でも、その角のある君がなぜぼくの折衝係なの?」

「それはあなたと寝る為よ。あなたと私の子供は、星回りが凄くいいの。子供ができたら嬉しいのだけど。鬼ってなかなか妊娠しないの」

「それが望みなら、もっと度々やらないとダメじゃなのか?」

「鬼ってね、満月の夜にしか妊娠しないのよ。人とは違う。寿命が長いから、滅多に子供ができない様にできてるのね」

「だったら、今夜は頑張らないといけないかな」

「ええ、出来たら三度くらいはお願いしたいわ」

 そう云う訳で三度ほど頑張った後で、気になっていた事をきいた

「二十歳くらいに見えるけど、本当は幾つ?」

 葉月は笑って

「女に年をきいてはいけないわ」

 と答えた


 金曜の夜、週末なので酒など飲みつつのんびりビデオを見ていたら、ガチャリと鍵の開く音がして、充希が入ってきた

「どうした? もう彼氏と別れた?」

「まさか、ただ、久しぶりにあなたに会いたいなんて思って。それにお家賃も払っておかなきゃと思って」

「家賃なんか気にするなよ」

「あたしが払うって言うんだから、素直に受け取ってよ」

「いいけどさ」

 そう云う訳でベッドで愛し合った

 裸で抱き合いながらの近況報告になる。いいのだろうか?

「彼氏はなにか言ってる?」

「知らない。独占欲の強い男は嫌いだわ」

「ぼくの事を知ってる?」

「まさか、あなたは女友達ないしゲイの男。ここは友達とのシェアハウスてことにしてるのね。時々泊まれるように」

「なんかなあ、まあいいけど」

「彼女出来た? 女に不自由してそうでもないけど、あなたって、あたしより倫理観が強そうだから彼女が出来たらこんなふうにあたしとしてないよね。そうか、鬼娘か。付き合ってるの?」

「うん、まあ」と、葉月と子作りの為に満月の夜に会ってる事を説明する

「なに、それ? あきれる。信じられない。変な人だわ。じゃあ、普通の彼女は居ないのね。その方が、あたしも帰る家があってたすかるけど

 その内にまた、今の彼と別れて、一緒に暮らせたらいいのにね」

「なんだよ、それは。どう云う論理だ」

「知らない。それよりもう一度やろうよ。今度はいかせてね」


 ある夜、会社の仲間たちと飲みにいくことになった

 A君の彼女が友達を四人連れてくるから此方も四人要ると数合わせで連れて行かれた。

 居酒屋で会話が弾む。映画、アニメ、歌、さっぱり分からなくて会話について行けない、茫としているばかりだった

 居酒屋を出て、踊りに行くという。全然趣味でないので、逃げることにした

「帰っていいか」

「ああ、ご苦労さんでした」

「バイバイ」

 と女子連にも言うと、その中の一番可愛い子が「私も帰る」と仲間から外れた

 皆と別れてから、その娘が

「アイスクリーム食べに行きませんか」と言うので、近くの◯ーゲンダッツに向かった

「無口なんですね」

「話についていけなかっただけで、お喋りなぐらいですよ」

「どんな話がいいんですか?」

「魔女とか、鬼とか、なんやかやと」

 まあ、と女子が笑った

「アンリアルなのがいいんですね」

「いや、どちらかというとリアリストと思ってますけど」

「速田さんでしたよね。私の名前は?」

「えっと」

「覚えてないでしょ。森由紀子です。覚えて下さい」

「は、はい。由紀子さん」

 名前を覚えたのがムダにならないように、スマホの番号を交換する

「行きたい処があるんです。付き合ってくれます?」

 ホテルとか? 一瞬考えて、有り得ねえな、と否定する

 肩を抱いても嫌がる風でない。

 このままホテルに連れ込んだら?

 などと考えながら歩いている

「ここです」

 と止まったのが「占いの館」の前だった

 わっ、と心の中で叫んだ。前に充希が働いていたところだ。今は居ないはずだが知り合いはいる

「占いが好きなんです。あなたもそういうの好きそうだから二人のことを占ってもらいましょう」

「あつ、はい」

 と答えた

 常に物事は変な方向に向かうなあ、と思ってしまう。「さだめじゃあ」とチェリーなら言いそうだ

 入って、真っしぐらに、かって充希のいた部屋に連れていかれた。まさかと思うのに其処に充希が座っていた

「よく当たるの。魔女なんですって」

 と由紀子が言った


 なるべく目を合わせないように下を向いていた

「金曜だけ、此処で営業してます」とぼくに云う

「私たちの事を占って下さい」

 由紀子が言うと、充希は黙ってタロットカードを並べ、表返していく

「お二人の相性はとてもいいですね」と言い、ぼくの方を見て、「でもいきなりホテルに連れ込んだりしてはだめです」

「誰がそんな事するんですか」

「あなたです。そう云う雰囲気があります」

 カードを2枚めくる

「相性はいいのだけれど、困難が多いですね。魔女が邪魔するって。あたしそんなことしないよ」

 とカードに文句を言った

 もう一枚めくって、由紀子に言う

「相性はいいから付き合っていいと思います。ただ、難しい処があるから、深い関係になる前に時間をかけた方がいいですね。もし困ったことがあれば、この人に相談しなさい。そう云う意味では頼りになる人だと思います」

 それだけ言うと、なにか有りますか? という風に由紀子の顔を見た

「この人と付き合っていいのですね」

「いいです。ホテルに誘われたら断りなさい。それさえ気をつければ、いい関係になれそうですね」


「なんなんだ、あれは」

 占いの館を出るなり、ぼくは唸った

「よく当たるんですよ。前から困ったことがあると相談しに行ってます。助けてもらってます。でも今日は変な感じでしたけど」

「そうですよねえ。ホテルへ行くな、行くな、と。人を変態みたいに」

「別にホテルに行ったから変態とは言えないけど」

「じゃあ、行ってみます?」

「何処に?」

「ホテルに」

「ふふふ。止めておきます。魔女さんが行っちゃいけないと言ってますから」

「そうですねえ」

「アイスクリーム食べに行きましょう。好きなんです」

「そうしましょう」


 帰ると、魔女がいた

「なんなんだ、あれは」

 と、占いの館を出た時と同じことを言いたかった本人に言った

「なんなんでしょうねえ。ホテルへは行かなかったよね」

「行かなかったよ。アイスクリーム食べて帰ってきた」

「それでいいの。ややこしいのね。あの娘はお姫様。でも、あなたは王子様じゃなくて、騎士、ナイトなの。だから寝てはだめ。あの娘になにか困ったことが起こるはずだけど、あなたが助けられる。その結果お姫様の愛を受けられるかどうかは、あたしにはわからない。魔女か魔法使いか、何かが関係すると思う。あたしじゃないと思うけどね」

「ややこしいんだなあ」

「そうみたいね」

「こんなんばっかりや」

「さだめね」

 充希は気楽に言ってるが、そもそもは充希に出会ってからのことなのだ

 違うと充希は言うのだが

「あたしと出会ってからではなくて、あたしとの出会い自体があなたの運命だったのよ。あの娘とホテルに行けなくて欲求不満が溜まったら、あたしが相手してあげるからいつでも言ってね」


 それから、由紀子とぼくは何度もデートして、キスくらいはするようになった。ドライブに映画に食事、そろそろホテルに誘ってもよさそうな時期だけど、それは我慢していた

 そんな風にしている間に由紀子の体調がおかしくなってきた

 異常なくらいに痩せてきて、鬱に、無気力になっている

 息をするのも苦しそうだ

「大丈夫?」

「お医者に行って、色々検査したけど何処もおかしくないって」

「でも、しんどそうだよね」

「ええ、なにか、ものすごく疲れた感じなの」

 充希が言っていた、なにか困ったことが起こるというのがこれだろうか?

 しかし、ぼくに何が出来るのだろう

 これが呪いか何かであれば、充希に頼めば何とかなりそうだが・・・

 呪いの可能性も全否定はできないな、そうか、充希に電話すりゃいいのかと気づいた

「なあに?」

「由紀子の様子が変なんだ。見てやってくれないか」

「いいわよ。いま何処?」

 

 半時間ほどで充希がやって来た

「飛んできたよ」

 と充希が言った

「箒は?」

「車だけどね。今晩は。由紀子さん、辛そうね」

 由紀子が充希を見て、力なく驚いた

「魔女さんだ。なぜ?」

「うん。現代医学がダメなら、魔女に頼るしかないなあ、て思ったんだ。いつも言ってるように、ぼくはリアリストだからね」

「知り合いなの?」

「君と行った時に知り合った」

「そうなの?」

 と、疑わしそうに言った

 返事は省略して、「どう?」と充希にきいた

「呪われてるね。その所為だわ」

「頭に蝋燭立てて、五寸釘で人形を叩くやつ?」

「其れとは違って、もう少しネチッこいやつね」

「治せる?」

「勿論。でも、此処には呪いの元がないから、多分、彼女の家ね。行きましょう。こっ酷く呪い返ししてやるから」

「タクシー呼ぶか」

「彼の車できてるから、それで行けるわ」

 由紀子の手を取って立ち上がらせる

「もっと別の理由で行きたかったけど、先ずは君の健康を取り戻さなくては」


 茶店の前に車があった。長身のハンサムが運転席にいる。これが彼氏か、雲泥の差だな、と卑下してしまう。しかしながら、もっと驚いたのは、そのイケメンが「由紀子さん!」と叫んだことだった

「知り合いなの?」

 と今度は充希が驚いた

故郷(くに)が一緒なんだ。幼馴染みで。暫く見ない間に、大人になって、綺麗になったなあ」

 とイケメンが言う。

「うわっ、こいつが王子様なのか、魔女もナイトももう用済みのコンコンチキンなんだわ」

 充希が耳元で呟いた

「どうする?」

「お姫様を助けるしかないよね」

「そうだね」

 

 由紀子のマンションに着いて、部屋を見渡して、充希が

「これだね」

 と大きめのコケシを指さした

「どうするの?」

「こうするのよ」

 とキャンドルを二本立てて、クリスタルの椀を前に置き、中にお香を入れて、火を点けた

「ヘカテーよヘカテーよ、何たらかんたら・・・・・・・」

 呪文を唱えると、火が大きく燃え上がった

 充希が奇妙で残忍そうな笑みを浮かべた

「どうなった?」

 ぼくがきくと、充希はコケシを取って、代わりに小さな木の人形を置いた

「向こうで倒れてると思う。あたしの相手をしようなんて百年早いわ」

 別に充希の相手をしようなんて、向こうは考えてなかったろうが、まあ、いい

「これ、誰に貰ったの?」

 充希が由紀子にきいた

「先月かな、おじさんが送って来ました」

「おじさん? おじさんが何故?」

 ぼくが言うと、今まで黙っていた充希の彼氏が口を開いた

「由紀子さんの家は大地主でね、お父さんが大分前に亡くなって、財産は由紀子さんとお母さんが相続したんだ。おじさんが財産を狙ってるって話が前からあったけどなあ」

「ふーん。おじさんとかは故郷に居るの?」

 充希がきくと、「さあ?」と彼氏と由紀子が首を振った

「だったら、様子を見に行きましょう。呪いを送ってる場所はわかるから」

 と再び車で走り出した


 着くと、そこは大きな屋敷であった

「どうしよう。なんか、どでかい屋敷だから、変なのが一杯居そうに思える」

 ぼくがやや怖気づいて言うと、皆が笑った

「出直そうか」と彼氏も言う

「由紀子さんが心配だ」

「あたしはいいの?」

 充希が唇をとんがらせる

「君は大丈夫そうだ」

 と彼氏が言った。なぜか由紀子の肩を抱いている。由紀子が凭れ掛かっている。

 終わりだ、終わりだ、所詮ナイトで終わるのか、とそんな気がした

 充希がベルを押すと、扉が開いて、なんか大人数が出てくる。ざっと見て、二十人ばかりいそうだ

「をい」と充希に言う「魔法でぶっ飛ばせるのか?」

「どうかしら、呪術師もいるみたい。逃げたほうがいいかな」

 充希が一歩下がり、彼氏と由紀子が二歩下がる

「無責任な」

 ぼくが笑うと充希も笑った

 ぼくは、手提げ鞄から、前に鬼娘に貰った盾を取り出して構えた

「まだ持ってたのね」

「当然だ。剣の方は家だけど」

 敵が近づいてくる。鉄砲を持ってる奴までいる。やや不利かな

「手伝いましょうか?」

 声がして、横合いから葉月が現れ、突然、ぼくにキスした

 彼女の前で何をするんだ! という感じである

「明後日の晩よ。忘れないでね、三回よ」

 帽子は被っているが、サングラスをしていないので赤い目が不気味に光っている

 背後で彼氏と由紀子が震えている。向こうの敵と、前の味方と、どちらを怖がっているのか、やや疑問である

「あの二人、連れてこない方がよかったね」

 ぼくが言うと、充希が頷いた

「手を上げろ」と親玉らしきが叫んだ「撃つぞ」

「撃てると思ってるのかしらね」と充希が言い

「撃てないの?」と葉月がきいた

「撃てないけど、鉄砲を押さえてると他の術が使えなくて困ってたの」

「そうなのね。なら、全部、私がのしちゃうから」

「それからどうしよう。首ちょん切るのもあれだし」

「『鬼』てハンコをおでこに押しておくわ。そうしたらもう半分くらい廃人になってしまうから」

「その線で行こうか」

 話が纏まって、葉月が歩き出した

「撃て!!」と親玉が言うと、カチャカチャという虚しい音がこだました

 葉月がくるくる舞ながら、次々に倒していく。鉄砲を持ったのが全部倒れて、充希が自由になり、逃げ出そうとしている数人を転ばしてしまう。全員が倒れたところで、葉月が掌を男達の額に当てていくと、額に一瞬『鬼』の文字が浮かんで消えた

 結局ぼくは何もしていない。ワトソン役だったなと思うがネットに公開はできないだろう

 屋敷に入ると、もう敵はいなくて、ただ祭壇を設えた部屋に数人が倒れているだけだった。僧形の者が二人、背広姿が一人。呪い返しの所為だろう。まだ生きているようだが、「当分廃人ね」と充希が笑った

 背広姿が由紀子のおじさんだった

「こちらも生きてる。廃人迄はいかないけど、当分だめね」

「ハンコを押しておくわ。悪さをしたら私にわかるから」

 と葉月が掌を額に当てた


 その夜は由紀子のマンションまで送って、もう大丈夫だというのでそこで別れた

 翌日に電話すると、「お陰様でよく寝られた、よかった」という。「会おう」と言うと断られた。それから数日、電話して、元気になったと言われるが、会うのは断られる、そんなのを繰り返した。魔女と鬼と呪いと云ったぼくの周りの現実が恐ろしかったのだろう。無理もないと思うし、充希はもう何も起こらないはずだと言うので、いいか、仕方ないかと、電話するのを止めた。ナイトの務めは終わったのだ 


 十日ほどしてスマホが鳴った。由紀子からだった

「会いたい。会ってくれます?」

「もちろん、いいよ」

 待ち合わせの場所に行くと、由紀子が待っていた

「御免なさい。気持ちの整理がつかなくて」

 と、俯き加減に話した

「わかるよ。現実というのは時に受け入れ難いものなんだ。特にぼくの周りの現実は」

「そうですよね。魔女に鬼に呪術師って、信じらんないって感じで、あれからずっと震えてました。でも、あなた達が守ってくれなかったら死んでたんだと思うと、逃げててはいけないって」

「会えて嬉しいよ」

「私も嬉しい・・・

 充希さん、魔女って言うから、普通に魔女なんだって思っていたら、あんな魔法が使えるなんて、魔女って凄いんですね」

「あいつは特別らしいけど」

 顔を上げてぼくの目を覗き込むようにした。嘘はつかないでね、て感じで

「わたしと一緒に占いの館に行く前から、知り合いだった?」

「うん」と頷いた。今日は真実に近い処で話そうと思った

「三年くらい前に恋愛相談であそこに行って知り合ったな。それから恋人になったけど今は君の幼馴染と暮らしてる」

「それから、あの赤い目をした女性、鬼なのよね」

「うん」

「あなたにキスしたわ」

「うん。鬼だからなあ。何するか分からん」

「そうなの? いいけど、よくないけど

 充希さんを予約したの。お礼が言いたくて。これから占いの館に行きましょう。一緒に来てね」

「いいよ」と占いの館に向かった


「いらっしゃい。元気そうでよかった」

 と充希が言った

「ありがとうございました。お礼が言いたかったけど、怖かったんです。もう、あなた達の現実を受け入れられたと思います」

「よかったのかな? 占ってみるね」

 とタロットを並べる。一枚づつめくりながら、にこやかに言う

「あなた達はうまくいくようよ。よかったわ。あたしもよかった」

「なんだい、そのあたしもよかった、は?」

「彼氏を幼馴染に取られるじゃないかと心配してたの」

「ありえない」と由紀子が言う

「充希さんみたいな綺麗な人いないもの」

「あら、ありがとう。あなたも可愛いわよ」

 互いに褒め合って、いい雰囲気になる

「今度、四人で食事に行きましょか」

 などと、由紀子が言う

「いや、それは許して欲しいな。大勢は苦手なんだ」

 慌てて断った。由紀子と充希が同一空間にいる状態は、ぼくの神経をすり減らすのだ


 占いの館を出て、食事をして、夜の街を歩いた

「どこ行こう。アイスクリームか、ホテルか、どっちがいい?」

 冗談のように言うと、由紀子は

「どっちでも」と答えた

 えっ、なら行く処は決まってるな、とその方向に歩き始めた



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