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ココアのような恋物語  作者: 夏輝 陽
プロローグ
7/29

トラウマ


 一緒にゲームできる彼女っていいですよね


 告白したあの日から数年後

 とある旅館の自称ゲームコーナーにて———



 ふたりは対戦格闘ゲーム

 罪の歯車の最新作をプレイしていた


 「なんで勝てねぇんだろう…」


 ポカーンと口を半開きしたまま白目を向いていたバッドガイ使いの夏向〈敗北者〉


 「練習の差…でしょうか」


 冷静にそう答えるバッドガイの女使いの唯希〈勝者〉


 「ディレイを覚えた方がいいですよ…?」


 ある箇所を指しているようだが、夏向はそれに気付かず…


 「鯖召喚する隙を与えるだけだし、ガン突しないと大変な事に…」


 あぁ、どうすればと悩む


 「…鯖を攻撃すること忘れてないですか?」


 もう一つ指摘された


 それには容易に召喚された鯖を消せる巨大な剣を振り回すキャラを思い浮かべるも、使うキャラを変えることだけはしない


 「要練習だな…」


 「…もし、私に勝ち越せたら…ご褒美をあげます」


 「頑張ります」


 「ふふ、頑張ってくださいね」


 よしっ今日は徹夜で練習するのみだ———






 「ネット使うならスマホのテザリング機能を使って繋げばいけますよ」


 「支配人さん、こういうのに詳しいんですね?」


 「おほほ、詳しくならないと旅館経営なんて今時やっていけませんのよ~」


 少し言葉を崩し、笑いながら気さくにそう語る


 「それと、アタシの事は気軽におばちゃんって呼んでくれて構いませんよ」


 そう呼ばれてほしいのかな…と察して


 「で、ではお言葉に甘えて…」


 (以下、支配人をおばちゃんと呼ぶことにする)



 二十一時半を周り、いい時間なので部屋に戻りたいと思いますと告げ、支配人ことおばちゃんと別れ部屋に戻った


 ネトゲ以外なら遊べるか…


 おばちゃんの好意に甘えて、おばちゃんの数あるスマホのうち一つを貸して頂いた


 借りたスマホでテザリング機能を使い、さっきのパソコンにスチームをインストールし、自分のアカウントでサインイン


 そして今も自動で自分の持ってるゲームをあのパソコンにダウンロードしている


 電波はやはり良くはなく、全部ダウンロードするのにかなり時間がかかるので、ネトゲ以外を今尚ダウンロードしている状態だ


 明日の昼前にもう一度パソコンを見に行って、ゲームやれたらやろう…そう決めて今日は早めに寝た———



 ———が、案の定早めに起きてしまった

 しかも朝の四時…日が少し登り始めてきた頃だ


 カーテンを開け、窓の外を覗いた



 緑みどりしていても、よく見ると思ったより綺麗な景色だったので、ついでにお風呂に浸かりながら景色を楽しんだ



 つい二時間程ずっと浸かってしまい、すっかりのぼせ夏向が出来上がったところで、昨日チラッと見て気付いたバルコニーの存在を思い出す


 のぼせ夏向は足取りがおぼつかないまま、涼しい格好に着替え、バルコニーへ向かった



 寝泊まりしている部屋二つ程のスペースで、真ん中にベンチが二つ前後に約4メートル間隔で配置されており、サイドに建物の方と外の方に二つある


 その真ん中入口から奥のベンチに既に先客がいた


 あれ…唯希さん、かな


 他に宿泊客は唯希さんしかいないので間違いない


 支配人や店員の可能性も微々あるが…


 サイドの外のベンチに座ることにした


 このベンチは外側を向いているが、ふと唯希さんの姿が気になって後ろを振り返り見てみる


 ———唯希は座ったまま寝ていた


 顔色は昨日と変わりないので、ただ寝てるだけだと判断し、再び前を見て景色を見る


 夕日が一望できそうだが、残念ながら朝日は建物によって遮っているので日が拝めない


 ただ景色は綺麗だ


 だがそれでも、のぼせたダルさが勝っていた…


 風が気持ちいいので部屋に戻って寝るよりここで寝る判断を取る


 そのまま横になって寝た…



 ひんやり気持ちいい感覚で、清々しく目が覚めると、昨日見知った大分印象に残る人物の、ギョロ目四白眼が僕の目を射抜いていた


 その子が口を開け


 「…おはよう?」


 「…おはよ」


 少し寝惚けながらも反射的に返した


 するとおでこに乗せてあったタオルの存在に気付く


 「あ、のぼせてたみたいだったから…」


 寝てる間介抱されてたみたいだった


 「…ごめん、そういえば俺はのぼせてて…色々やってくれてたんだね」


 寝惚けながらも精一杯のお礼を示すため、唯希の手を握りしめて


 「ありがとう」


 そう口にした


 「んっ…!?あの、手…手を離してください!」


 唯希はギョッと握られた手を見つめながら本気の声を上げ拒絶し、夏向も完全に目が覚めた


 「…あっ!ほ、ほんとにごめん!」


 手を離し、サッと距離を置いた


 「いえ、いいんです…離してくれたなら」


 気まずい空気が流れる


 「…本当にごめん、わざとじゃないんだけど…色々してくれた挙句こんな仕打ちってないよね」


 「いえ!そこまでは思ってないですよ…?」


 「後でお礼するから…ごめんね」


 「ぁ…」


 そそくさにバルコニーから退場し、部屋に戻った


 傷ついたよね…唯希は俺よりも人見知りっぽいし、かなりデリケートな子だ


 どう謝ろうか悩みに悩んだ…




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