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ココアのような恋物語  作者: 夏輝 陽
プロローグ
3/29

ファーストコンタクト


 黒瀬 唯希はヒロインであり、主人公でもあるので黒瀬 唯希の視点で物語が進むことがあります




 「…っ!本当に、私でいいんですか…?」


 四白眼の目を輝かせて、少女は確認する


 「うん…唯希さんだから、付き合いたいんだ

…嫌かな?」


 と、弱気になるが


 「ううん、全然嫌じゃない…

寧ろかなたさんで良かったって…そう思います」


 夏向はそう告げられた言葉に驚いたような顔をした


 「そ、そんなに驚きますか…?」


 驚いた訳ではないけれど…言われて嬉しすぎたのかそんな顔をしたみたいだ


 「…そんな驚いた顔してた?」


 「うん……ふふっ」


 「え、なにかな?」


 「私も…貴方のこと、大好きです

 その…こちらこそ、私で良ければ…よろしくお願いします———」


 自分に自信が無い夏向でも、自分の事を好いてくれてる事は気付いていた


 返事をオーケーしてくれる事を確信していた


 けど…やっぱり言われると安心するし、嬉しいな


 この子をずっとずっと大事にしよう———そう暖かくなった心に誓った






 ———館内の食事処にて


 「えっと、良かったら一緒に食事しない?」


 あ、ナンパではないです

 …そう口に出そうとしてやめた、説得力ないもの


 およそ三秒ほど間が続き

 上目遣いでギョロっとこっちを見上げ


 「………私でいいんですか?」


 「…もし嫌だったら、別に断っても大丈夫だよ」


 誘っておいて言うのもアレだけども


 「いえ!…ご一緒させてもらって、いいですか?」


 んー、気を遣わせちゃったかも…


 「こっちへどうぞ」


 相席に誘ったのダメだったかなと少し反省し、自分が座っていた席へ案内した






 ぬくい…誰かが座っていた席に座るのは少し苦手


 だけど、かなたさんが座っていた席と思うと嫌じゃない


 自分に似てそうな人だからか、人を寄せつけないくらい人見知りな自分でも嫌に思わない、寧ろ不思議に少し安心する


 「座らせといてなんだけど…その、嫌じゃない?」


 少し伏せたままの顔で、ギョロっと夏向を見る


 「だ、大丈夫ですよ…?」


 「そっか、さっき俺が座ってたとこだから…変なこと聞いてごめんね?少し気になっちゃって」


 こういうとこ少し似てるかも…なんて

 私なら勇気なくて、口にはできないけど


 「心配、しすぎですよ…大丈夫です」


 「はは、そうだよね…よく周りの人からも言われててさ…気をつけるようにしなきゃ」


 「ふふ、気持ちはわかりますけどね」






 ———優しいな唯希さんは


 唯希さんはメニュー表に指さし


 「…今日はざるうどん食べようかな」


 「いいよね、ざるうどん…と言っても俺はそもそも暖かい汁に浸ってる麺は苦手でさ…ラーメンとか別だけど、うどんや蕎麦だとふやふや~ってしちゃうから…それが苦手」


 「変わってますね…私はどちらも好きですよ?」


 「あ、そうなんだ…」


 「はい…」


 自分と同じかなと、だったら嬉しいなと調子に乗った挙句、予期せぬ返事がきた…のでこの話題をブツ切りにしようとしたが


 「…でもどちらかと言うと私も、硬麺の方が好きですよ」


 掘り下げられた


 「あ、そうなんだ」


 「麺が柔らかいとスープをよく吸ってしまって、麺の味が薄くなってしまいますから…」


 「だ、だよね…同じ理由でご飯にスープ掛けるのも苦手なんだ」


 「…ご飯にスープはまた別じゃないですか?」


 そんなガッツリ否定に少し慌てる


 「えっ…そ、そうかも知れないね」


 「………冗談ですよ、私も同じ理由で苦手です」


 くすくすと笑う唯希さん


 「からかわないでよ…」


 笑ってくれるのであれば満更でもないけど


 「あ、すみません…かなたさん、なんだか面白くて…」


 「そうかな…?」


 「ふふ、ごめんなさい…あ、注文してもいいですか?」


 「あ、こっちはもう既に注文してあるから…どうぞ」


 呼び出しベルを押し、駆けつけた店員に注文する


 注文終えるまでの僅かな時間、自分にとっては優しいし話しやすいくて面白い、なんだか不思議な子だなーと注文してる唯希さんの横顔を見てそう思った


 …こっち見る時のギョロ目四白眼の圧はスゴいけど





 私の注文を終え、ふと視線に気付く

 視線の元…かなたさんの方に向き直して


 「私の顔に何かついてましたか?」


 私の身体的特徴については、周りから散々言われてきたので理解はしているけど…やっぱり変な目で見られるの嫌だなぁ…と思い、冷たく言い放った


 「ううん、なんだか不思議な子だなーって思って見てただけだよ」


 「ふ、不思議です…か?」


 「俺って普段人見知りだけど、何故か唯希さんにだけ…不思議な気持ちになる、と言うか」


 「…不思議な気持ちってなんですか」


 変なことを言いますね、かなたさん


 「んー…言葉にできるなら、不思議なんて言わないと思う」


 「それもそうですけど…正体が気になりますね」


 「…別に隠したりしてないよ?」


 「わかってますよ」


 半目になってジトーって睨みつけてみた


 「疑ってる?」


 「違います、言葉足らずでわかりにくいですよって」


 んーっと唸ったあと、かなたさんは少し赤面しながら


 「…唯希さんと話してて優しくて面白いし…可愛なー不思議な子だなーって」


 「…自分で言うのもなんですけど可愛くないですよ」


 周りから散々からかわれてきた自分に対して可愛いだなんて言われても、ただのお世辞だろうと思い平然とする…ちょっぴり嬉しいのは内緒


 「…結局その不思議な子っていうのはどういう意味なのでしょう」


 話題作るのは苦手なので、掘り下げてみた


 「んーなんだろうね…あっ、安心するに近いような?」


 「安心する子?」


 「みたいな?」


 「…なるほど」


 わかりません

 こんな私に安心感を抱くなんて…


 「あ、ざるうどん来たみたいだよ」


 店員がざるうどんを盛っている皿を私たちのいるテーブルに並べ、厨房へ戻って行った


 「…かなたさんの頼んだものは?」


 「…俺はさ、先に注文していても一番遅くに来ること多いんだ」


 悲しい男だ


 かなたさんのざる蕎麦が来るまで、手を付けずに待った———



 食事中は会話という会話は無く、食べ終えた二人は席を立たず座ったまま、お互い相手の行動を伺っていた


 唯希はギョロっと夏向の目を捉える

 夏向は内心ビクッとしながらも顔や身体には出さないように抑え


 「部屋に戻らないの?」


 「いえ、あの…ひとつ伺いたいことがありまして」


 「え、なにかな?」


 「こんなにお話したの、久しぶりですし、嬉しかったです」


 「…俺も、同じだよ…ここ暫く誰とも会話しなかったし、会話して楽しんだの、久しぶりだった」


 やっぱり似た者同士なのかな…夏向の耳には届かないくらいのボリュームで呟いた


 一歩夏向の方へ近づき


 「あの…私の目、嫌ですか?」


 「え?い、嫌ではないよ」


 「そ、そうですか…」


 何か他に思うような事はあるかも知れないけど、嫌じゃないならいいかな


 「えと、もし宜しければ、ライン交換…しませんか…?」


 …異性とは女の子より緊張する対象、だけどかなたさん相手なら緊張どころか、寧ろ仲良くなりたいと思った


 だから、かなたさんともっとお話したくライン交換を申し込んだ


 これには夏向も動揺し、返事がくるまで数秒が過ぎ、落ち着きを取り戻して


 「———俺で良ければ、交換しましょう」


 敬語でお返事がきました


 早速スマホを取り出し、私のバーコードを読み取らせて、お互いラインのフレンド登録をした


 「男友達はともかく、女の子と連絡先交換したの、初めてだ」


 「…私も男の人の登録したの、初めてです」


 同性の女の子ですら一人しか交換してもらったことないけど


 「そうなんだ…積極的だったから、結構してるんだなって思ってた」


 言われてみれば積極的だった


 「…普段は誰からも拒絶して、ます」


 「………」


 「かなたさんが、特別…なのかも」


 イタズラっ子みたく微笑んでみせた

 あ、大丈夫かな私の顔…調子乗ったなぁ


 「いや、その…ズルい」


 「ズルい、ですか?」


 「…なんでもない」


 「?」


 効果アリかな?とか思ったところ、何で誘惑まがいな事してるんだろうって自分を見つめ直す


 「…初めて、仲良くなりたいなってそう思えたから?」


 「…え?」


 「あっ、何でもありません」


 口に出てしまっていた…

 たまに思ったこと口にするこのクセ、いい加減直したい


 「俺…俺も、もっと仲良くなりたいなって思う」


 かなたさんが口元を片手で覆う


 「恥ずかしいなコレ…」


 恥ずかしさが伝染し、コクっと頷くだけに留めた



 お互い気持ちが知れ、同時に席を立ち、軽く別れを告げてから部屋に戻った


 名残惜しいと思いながらも、さっきライン交換した相手に早速トークを開始した———




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