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第95話 メトロポリスの最も長い一日 その4

「ふざけるなああああ!!!雑魚共が!生意気なああああ!!!!」



 ケヴィンは怒りに任せてエリックを囲むモルトシオネの構成員たちに突っ込んでいく。構成員たちはケヴィンに向けて躊躇なく掃射した。先程と同じく銃弾を浴びてもケヴィンは怯むことなく、目についた構成員から血祭りに上げていく。



「どけ!!雑魚共!!何がモルトシオネだ!ドン(親父)の権力を傘に着ただけの無能共が!!!」



 ケヴィンの手当たり次第の攻撃によって仲間が次々と倒れる中でも構成員たちは逃げること無く、攻撃を続ける。その内にケヴィンは自分の身にあることが起こっていることに気づいた。



「な、何だ…これは?」



 ケヴィンがふと自分の右腕を見ると掌には大きな穴が開き、指は掃射の影響で何本か失っていた。痛覚が無くなったせいで自分の体が既に戦える状態ではないことにケヴィンは気づいていなかったようだった。


 ケヴィンは呆然としながらも、尚も自身に攻撃を続けるモルトシオネの構成員たちを見て我に返った。そして再び怒りを増幅させると残った左手や両足を駆使して構成員たちを蹴散らしていく。



「くっ…このままでは共倒れになる…お前たち、一旦退くんだ!ケヴィンは俺が仕留める!」


「ボス!我々は貴方と一蓮托生です!モルトシオネはこの程度では倒れません!」



 エリックの一時撤退命令に対して、残った構成員たちはエリックと共に戦うことを選択した。一人また一人とケヴィンの手で倒されていく中でもエリックの前に立ち、構成員たちは必死に抵抗を続ける。



「クソがあああ!!何故だ!?何故退かん!!?雑魚の分際でええええ!!」



 善戦していたものの、ついにケヴィンによってモルトシオネの構成員の最後の一人が倒される事態となった。既に満身創痍ながらもケヴィンは自動小銃を構えるエリックの元へ近づいていく。



「今度こそ…終わりだ、義兄弟。モルトシオネはこれで滅びる」


「そうかな?俺がいる限りモルトシオネは滅びんよ。俺を支えてくれた構成員たちの為にも、そしてドンの為にも、俺は絶対に此処で死ぬ訳にはいかん。特にお前みたいな不義理なクソヤロウの手に掛かる訳にはな、義兄弟」



 エリックはケヴィンを煽るように返す。ケヴィンの目は不気味に赤く輝き、禍々しい黒いオーラを再び発し始めた。

 エリックが自動小銃の引き金を引こうとした瞬間、ケヴィンが素早く動き出しエリックの自動小銃の持つ左腕を掴んだ。



「何ィ!?」


「残念だな、俺の勝ちだ」



 ケヴィンはニヤリと笑うとエリックを左腕ごと持ち上げ、左腕を握り潰しに掛かった。エリックの左腕がミシミシと鳴り出し、エリックは苦悶の呻き声を上げる。



「ぐ、ぐああああ!!!」



 エリックの左腕は完全にへし折られ、あらぬ方向に曲げられた。と同時に自動小銃も手から落ちる。更にエリックが前のめりに倒れるタイミングで追い討ちを掛けるようにケヴィンはエリックの腹部に膝蹴りを入れた。エリックは悶絶してそのまま地面に臥した。



「これでトドメだ!!」



 ケヴィンが地面に倒れるエリックの頭を踏みつけて力を加え始めた。エリックの首もとからミシミシと音が聞こえる。

 ところがケヴィンが勝利を確信したとき、突然ケヴィンの背後から何者かが羽交い締めを仕掛けてきた。不意打ちにケヴィンが動揺して後ろを振り返る。その際にエリックの頭から踏みつけている足を外して、後方へ下がってしまった。



「な、誰だ!?後ろから俺を押さえるのは誰だ!!」



 ケヴィンは羽交い締めにする後ろの人間を振り払おうと暴れるが、後ろの人間は凄まじい力でケヴィンをしがみつき離れまいとする。ケヴィンが後ろの人間の正体を見ようとする前に、地面から頭を起こしたエリックが叫んだ。



「ガーランド!?」


「…エリック様、申し訳ございません…私としたことが不覚を取りました。しかし、ご心配には及びません…この、不届き者を…この手で…必ず、仕留めます……」



 ケヴィンを押さえていたのは先に倒れていたガーランド・スカルスノフだった。ガーランドはケヴィンによって腹部に穴を開けられながらも、最後の力を振り絞ってケヴィンにしがみついてきたのだった。



「き、さ、ま…スカルスノフ…このくたばり損ないがあああ!!」


「その言葉…そっくりそのまま…お返ししますよ…ケヴィン…」



 ガーランドはそういうと口に何かを咥えてピンのようなものを抜いた。ケヴィンはガーランドが咥えたものを見て驚愕する。



「なっ…!?まさか貴様!!」


「今度こそ…ドンに…あの世で…詫びなさい…ケヴィン…。安心なさい…私も…一緒、で、す」



 ガーランドが呟いたと同時に爆発が起こった。至近距離から爆発をモロに受けた影響でケヴィンは四肢のほとんどが吹き飛ばされ、地面に倒れ込んだ。



「な、ガーランドの野郎…手榴弾を持ってやがったか…まさか本当に自爆するとは…」



 ケヴィンが息を荒くして顔を上げると目の前にエリックが立っていた。エリックの右手にはドンの形見である仕込み杖が握られている。



「ケヴィン…」


「エ、エリック…貴様、まだやる気か…?」


「本当にこれで終わりだ。せめて最期は俺の手で介錯してやる」



 そういうとエリックは仕込み杖を抜いて刃をケヴィンの首に当てた。ケヴィンはエリックの目を怨めしそうに見つめる。



「エリック…義兄弟…地獄に逝きやがれ…」


「お前が先だ、ケヴィン。ドンとガーランド、そしてモルトシオネの仲間たちに詫びてから地獄に落ちろ」



 エリックはケヴィンに吐き捨てるようにいい放つと、迷わずにケヴィンの首をはねた。ケヴィンの首は血飛沫を上げながら遥か向こうへと無様に転がっていった。



「…ドン…今度こそ、終わりましたよ」



 その場で膝を付いたエリックは仕込み杖を置いて呟く。そして天を仰いで一人涙を流した。それは養父、義兄弟、盟友、そしてファミリーの大半を失ったことへの哀悼だった。

残り5話の予定です。

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