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第89話 処刑人

 処刑当日の正午前、グランシステリア王国の城下町の中心部にある開けた広場に設けられた公開処刑場の周りには人だかりが出来始めていた。広場の王宮側には物見櫓が設置され、ヘイトフルらはこの上から広場の様子を眺めている。


 ハリーも物見櫓の中に案内され、アリアたちレジスタンスが乱入してくるのを待つ。ヘイトフルは少し落ち着かないのか、櫓の中でウロウロしていた。



「本当にアリア女王は来るのだろうな?」


「しつこいな。来ると分かっているからこんな舞台を用意したんだろ?」



 ハリーがヘイトフルに対して苛立つような言葉を投げた。ヘイトフルは舌打ちすると、太陽の昇る高さを見た。



「…そろそろ罪人を刑場へ」



 ヘイトフルが衛兵に命じると、衛兵は階下の者に罪人であるアメリアを連れてくるように合図した。


 いよいよ処刑の時が来る。ハリーが広場を見ると集まった民衆らが衛兵たちと押し問答しているのが分かった。

 よく聞くと怒号や罵声があちこちから飛び交っている。下手したら暴徒化した民衆と衛兵たちが真っ向から激突する恐れもある。



「これは…犠牲者を出す前に何とかしないとな…」



 ハリーが小声で呟くと、ヘイトフルが物見櫓からせり出したバルコニーに出た。



「諸君!これよりグランシステリア王国を混乱と恐怖と不安に陥れた元凶、アリア・ボン・グランシステリアの処刑を執り行う。罪人の入場を!」



 ヘイトフルが高らかに宣言するとその声をかき消すが如く、更に民衆からの怒号は強まる。そうこうしている内に絞首台の前に後ろ手に縛られた罪人、アメリアが姿を現した。

 パッと見た限りアリアと姿や雰囲気は似ており、影武者と言われるのも納得である。アメリアは覚悟を決めているのか毅然とした態度で処刑に臨もうとしていた。



「…まだか?アリア女王は何処だ?」



 ヘイトフルはキョロキョロして広場の様子を眺める。が、暴徒化しかけている民衆とそれを押し止める衛兵たちの姿しか見えない。



「どうした?フルヘイト殿、何を待っている?」



 ハリーが煽るようにヘイトフルに話しかけた。ヘイトフルは余裕がないのか、衛兵たちにアリアらレジスタンスを捜索するように命じる。

 するとハリーはヘイトフルの前に立ち、ヘイトフルを睨み付けた。



「茶番は終わりだ。フルヘイト殿」


「何!?」


「アリア!!」



 そういうとヘイトフルとハリーを取り囲んでいた衛兵たちが一斉に鎧を脱いだ。そこにいたのはアリア以下スイッチを含めた親衛隊だった。そのことにヘイトフルは驚愕する。



「な、な、何で…此処に…?」


「ヘイトフル宰相」



 アリアが凛とした声でヘイトフルの前に出て呼び掛ける。ヘイトフルは全身を震わせ、脂汗を流し始めた。



「全て此処にいるハリーのお陰。彼が囮になって貴方の目が向いている隙に衛兵らにすり変わって準備していたのです。そして予め処刑場に入り込み、色々と細工しておきました」


「…ぐっ…な、そんなことが…」



 ヘイトフルはハリーを睨み付けて、憤怒の表情を浮かべる。ハリーはそっぽを向いて、クククと笑った。



「よくも騙したな!ということはジョーカーのことも嘘なのだろう!!?」


「ジョーカーと顔見知りなのと時空転移装置は本当のことだ。が、しかしフルヘイト殿、俺はあんたの味方になるといった記憶はないぞ」


「くぅ…人の足元を見おって…」



 ヘイトフルは屈辱に顔を歪めていたが、気を取り直したのか、突然外の衛兵に向けて叫んだ。



「今すぐ人質を処刑しろ!民衆共が暴徒化しようが、構わん!」


「貴様!」



 ヘイトフルの命を受けた衛兵がアメリアの首に縄を掛け、絞首台の床を開けようとする。が、しかし床が開いた瞬間に首に掛けられた縄が外れ、アメリアごと下に落ちた。



「何!?バカな!」


「いったでしょう…?色々と細工したと」



 往生際の悪いヘイトフルにアリアが畳み掛ける。と同時に興奮した民衆が一気衛兵らを押し返し、処刑場となった広場へとなだれ込んだ。アメリアは待機していたレジスタンスの仲間に保護され、暴徒化した民衆から逃れるように広場を離れた。

 混乱の収拾ができぬまま、衛兵らは民衆らによって袋叩きにされ、武器を奪われていく。民衆らの勢いは増し、物見櫓が一斉に取り囲まれた。



「さっ、どうする?フルヘイト殿」



 ハリーがヘイトフルに暗に降伏を促す。ヘイトフルは唇を噛み締めるとガックリと跪いた。



「…私の負けです…アリア女王」


「ヘイトフル宰相…これ以上の犠牲は望みません。即刻この国から出るように」



 アリアがヘイトフルの前に出て追放を宣言した。ハリーはじっとヘイトフルとアリアを眺める。が、ハリーはヘイトフルの態度に違和感を覚えると、即座に屈んで自身の足元に触れた。



「…残念ですが、アリア女王。私は只では転びませんよ!貴女も道連れです!」


「!!」



 ヘイトフルはそういうと懐から短剣を出してアリアに迫った。親衛隊は「アッ!」と叫び、アリアを庇おうとするが、間に合わない。アリアが覚悟を決めて目を閉じたとき、一発の銃声が響いた。



「えっ…!?」



 誰かしらから声が上がる。アリアが目を開けると胸から血を流したヘイトフルとアリアの横から短筒をヘイトフルへ向けたハリーが立っていた。短筒の先からは煙が上がり、ハリーはヘイトフルの心臓に一点を向けている。



「き、貴様…その物を…いつの間に…?」


「…あばよ。()()()()()殿」



 ヘイトフルはヨロヨロ後退すると、物見櫓からせり出したバルコニーの手すりに持たれ掛かった。そしてアリアらを見て、ニヤリと笑うと手すりに体重を掛けて後ろから身を投げた。


 広場では暴徒化した民衆と衛兵が激突していたが、ヘイトフルが物見櫓から落下したのを見て全員が動きを止めた。そして物見櫓のバルコニーを見上げた。

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