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第88話 スティング

 ハリーは衛兵らに囲まれるようにして王宮の中へと通された。その前に簡単なボディチェックを受けたが、さすがに足元の武器までは気づかれなかった。ジョーカーの名を出したことで向こう側も思うところがあったようだ。

 王宮は入り口近辺は比較的シンプルな内装であるが、奥へ行くに従い豪華な内装へと変わっていく。謁見の間に着くと非常に豪奢な玉座が壇の中心に置かれていた。玉座の主はまだ到着していないようだ。



「此処で少し待て。ヘイトフル様がお見えになるはずだ。ヘイトフル様に失礼のないように」


「善処する」



 ハリーに衛兵たちが忠告するが、ハリーは聞き流すように返した。そうして待つこと20分くらいか、玉座の間の横の扉から白髪頭に長い顎髭を生やした中年が姿を現した。中年は小太りで頭のてっぺんは禿げていた。禿を隠すように王冠らしきものを被っている。一目見て胡散臭さと小物感が滲み出ているのにハリーは気づいた。やはりこの男は上に立つべき人間ではない。


「遅くなってすまない。私がこのグランシステリア王国の暫定統治者であるヘイトフルだ」


「俺はハリー・ライナスと申す者。お初にお目にかかる()()()()()殿」


()()()()()だ。早速だが、ハリー君。君はジョーカーと知り合いとのことらしいが、真なのだな?」


「奴とは昔からの知り合いだ。奴のことはよく知っているし、グランシステリア王国のことも聞いた」



 ハリーはヘイトフルに対してハッタリをかましつつ、相手の出方を見た。ヘイトフルは警戒しつつもハリーに興味があるのか、満更でもない表情をしている。



「では聞こう。ジョーカーは今何処にいる?」


「ジョーカーは故郷であるメトロポリスへと戻った。此処にある遺跡の力を使ってな」



 ハリーの言葉を聞いて周りから動揺の声が上がる。遺跡の話が出たことでヘイトフルの表情が強ばった。



「あの…遺跡の秘密を知っていたのか」


「ああ…ジョーカーから根掘り葉掘り聞いた。かくいう俺も遺跡の力で此処へ来た」


「やはり時空転移の門は本当だったか。アリア女王もそのことを知っていて、遺跡に避難したみたいだしな」


「…ジョーカーからの伝言だ。今、メトロポリスにて遺跡の力を利用した時空転移装置を作っている。時空転移装置はあらゆる場所へと繋がることのできる夢の、いや脅威となる装置だ。それを手に入れたらこの世界の、いやこの世の全てを支配できる」


「じ、時空転移装置…だと!?」



 時空転移装置の存在を知らされたことにさすがのヘイトフルも固まる。ハリーはヘイトフルの食い付きを確認すると更に畳み掛けるように続けた。



「時空転移装置は間もなくジョーカーの手中に入る。そうすればグランシステリア王国を手に納めたあんたと組んで更なる力を手にするといっている」


「…ジョーカーが…そんなことを…」


「で、俺が伝言役としてあんたの元へ来た。()()()()()殿よ、悪い話じゃないだろ?」


「…う、しかしまだ私はお前を信用しきれん。本当にジョーカーのことを知っておるのか?」


「ジョーカー…本名はケヴィン・モルトシオネ。メトロポリス出身でマフィアの五大ファミリーの一つ、モルトシオネ・ファミリーの跡取り。五年前の世界大戦にて遺跡の力を持って此処グランシステリア王国へとやってきた。グランシステリア王国にやってきてからはジョーカーを名乗り、王家と繋がりを持った。その際に遺跡の力を調べ上げて、メトロポリスに帰還後に時空転移装置の建造に利用した…」



 ハリーがツラツラと口上の如く述べた。ヘイトフルはゴクリと生唾を飲みつつ、右手を前に出して「その辺で」と止めた。



「もう?ここからが面白くなるのに」


「いや…十分だ。お前とジョーカーの関係はよく分かった。で、これからどうするのだ?」


「アリア女王が明日公開処刑場に現れる」


「!!やはり人質に食い付いたか!」



 ヘイトフルがしてやったりの笑みを浮かべる。ハリーはヘイトフルの様子を見て、更に続けた。



「アリア女王を処刑場へ誘き寄せる算段は整えてある。後はフルヘイト殿。あんたに始末を任せるが、一つ頼みがある」


「…何かね?」


「あの遺跡を解放してほしい。そして遺跡の力を使って俺を一度メトロポリスへ戻してくれ」


「…それでどうする?」


「俺がジョーカーに会ってあんたの返事を確認してから、時空転移装置を使ってもう一度此処へ来る。そのときはジョーカーも一緒だ」


「…!?ジョーカーもか?」



 ハリーは躊躇いなくコクリと頷く。ヘイトフルは少し唸ると、了承の返事をした。



「交渉成立だな」


「信じていいんだな?明日アリア女王が処刑場に現れること、そしてジョーカーが時空転移装置とやらを手中に納めたことについて」



 ハリーは右手を前に差し出し、任せろとヘイトフルに約束した。

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