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第85話 彼女が戦う理由

 ハリーとトントはアリアから時空転移装置の暴走で離ればなれになった後のことを聞くことになった。


 ハリーたちと同じく光に包まれたアリアが目を覚ましたとき、グランシステリア王国の近くにあるこの森に一人いたのだという。アリアは当初の目的通りグランシステリア王国に帰ってきたのだが、王国はクーデターで乗っ取られており、しかも自分が指名手配されていることを知った。

 やむを得ずバレないようにローブで身を隠し、情報収集を続ける内にかつての自分の部下だった親衛隊と再会を果たした。

 親衛隊との情報交換により、グランシステリア王国の惨状を知ったアリアは秘密裏にレジスタンスを結成。


 レジスタンスは他に地下活動を続ける抵抗勢力と組んで現王国の支配者に戦いを挑むようになった。最初こそ小さい組織だったが、現王国に不満を抱く民衆の支持を得ることで徐々に王国を脅かす存在になっていったのだという。



「…なるほど。何となくレジスタンスのあらましは分かったんだが、一つ分からないことがある」


「何?どうしたの?」


「このごく短時間で此処まで組織をまとめあげられたのかということだよ。幾らあんたが元女王様とはいえ、手際が余りにも良すぎる気がしてね」


「?何をいってるの?私が此処に帰ってきてからもう一年は経つわよ?」


「…はい?」



 ハリーとトントの頭に特大のクエスチョンマークが出た。ハリーとトントにとってメトロポリスの時空転移装置に巻き込まれてからグランシステリア王国に至るまでの体感時間はおよそ数時間程度である。にも関わらずアリアにとってはハリーたちと再会するまでに一年経過していたのだという。



「どういうこと?」


「いや、俺の方が知りたいんだが…どうやら時空転移装置の暴走で何かしらのタイムラグが発生したみたいだな。だからあんたと俺たちでは時の流れに差が生じていたようだ」


「じゃ、ハリーたちにとっては時空転移装置の発動はついさっきの出来事だってこと?!」


「…そのようだな」



 アリアが驚愕して立ち尽くす。アリアを周りのローブに身を包んだ親衛隊が心配そうに宥めた。その内の一人がハリーを睨み付ける。



「貴様、アリア様の命の恩人だから大目に見ているが、これは明らかな不敬罪だぞ。これからは口の利き方に注意するんだな」


「う…善処する」


「スイッチ!やめなさい!彼等に危害を加えることは私が許しません!!」



 アリアはスイッチと呼んだローブの者の一人を叱りつけた。スイッチは慌ててアリアの前に跪いて赦しを請う。



「…大変失礼しました、アリア様。つい…」


「謝るなら彼等に謝って。今はいがみ合っている場合ではありません」


「ハッ…」



 スイッチはハリーたちに向き直って頭を下げた。ハリーは慌てて気にしていないと返した。



「それよりアリア、今王国に捕らえられているのは何者なんだ?さっき影武者とかいってたが…」


「彼女は私の侍女だった人よ。彼女のお陰で私はメトロポリスに逃れることができたの。そういう意味では命の恩人よ。でも…」


「今回捕らえられて処刑が決まったって訳か」


「そう…彼女としては影武者として使命を全うするつもりだと思う。でも私は何としても彼女を救わねばならない」


「それは命の恩人だからか?」



 ハリーがアリアに問い質した。アリアはコクリと頷く。



「それだけじゃないわ。彼女はそこのスイッチの恋人でもあるのよ」



 ハリーは驚いてスイッチを見る。スイッチは少し固い表情を浮かべてアリアの話を聞いていた。



「スイッチも彼女も昔から私に仕えてくれた仲。家族以上の関係でもある。だからこそこんな形で彼女を失いたくないのよ」


「アリア様…これくらいで」



 スイッチがアリアを制して首を横に振った。アリアが驚いてスイッチを見る。



「アリア様…アメリアの心配をいただくのは大変恐縮です。しかし、あくまでもアメリアの役割は貴女様の影武者。影武者としての使命を全うするのはアメリアにとっても本望のはずです。それを情に絆される形で貴女を危険に晒してはアメリアの努力が無となってしまう」


「しかし…」


「アリア様。こういう事態になった以上、私もアメリアも覚悟していました。だから今は耐えるのです。例えアメリアを失おうと貴女が無事であれば、きっとグランシステリア王国を再建できます。だから…耐えて…ください」



 スイッチは必死にアリアを説得するが、誰よりも動揺しているように見えた。ある意味アリアに向けている言葉は自分を納得させるためのようでもある。二人の様子を見てハリーがフゥーと溜め息を付いた。



「…盛り上がっているところ申し訳ないが、確認させてほしい。本来の俺の目的は二つだ。一つはアリアの無事を確認すること。二つ目はグランシステリア王国へ帰すこと。この二つは今、達成した」


「…それで何がいいたい」


「…報酬の件だ。確かメトロポリスでアリア、あんたと契約を結んだときに報酬はまたでいいといったよな?」


「…確かそうだったと思う」


「よし。じゃあ俺たちをメトロポリスに帰してくれ。それが俺たちの求める報酬だ」


「そうね…この件はハリーたちには関係のないことだから巻き込んではいけないわよね」


「でもその前に別の目的ができた。俺たちもこのレジスタンスに混ぜてくれ。さすがに影武者とはいえ、あんたの身内を見殺しにしたままメトロポリスに帰るのは夢見が悪い」


「えっ!?それって…」



 アリアたちから驚きの声が上がった。

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