第81話 グランシステリア王国への道
ハリーとトントの意思を確認したアラン・スミシーは再び羽根を広げて自身の体を包むと、女性の姿に戻った。
「…本当にいいんだね?向かった先で何かあったとしても後悔はなしだよ?」
「…承知の上だ。覚悟はとっくに出来てるさ」
(私もハリーに同じだ。我々コンビなら何とかなる。そんな気がするんだ)
「フフッ、君らは本当にいい仲だね」
アラン・スミシーがハリーたちを見て楽しそうに微笑む。対してMr.ウルヴァリンは残念そうに項垂れていた。
「はあー…折角貴重な友が出来たのに、もうお別れなんてつれないなぁ…私も一緒に行けたらなぁ」
「無茶いうなよ、Mr.ウルヴァリン。彼等には彼等のやることがあるんだし、遊びで此処に来た訳じゃないんだぞ」
ダニーはMr.ウルヴァリンを窘めつつ、ハリーとアラン・スミシーに握手を求めた。
「ホンの僅かな時間だったが、中々興味深かったよ。もう会うことはないかもしれないが…道中気を付けてな」
「…本当にありがとう。こんな状況じゃなきゃ観光も悪くはないんだが…とにかくトントを保護してくれて助かったよ…」
(こちらこそ世話になった。ハリーと再会できたのも君らのお陰だろう)
「そういってもらえると嬉しいよ」
「うむ。ダニー君にMr.ウルヴァリン君。君らと出会えたことは私にとっても貴重な経験となった。私は放浪者だから、いつかまたお目にかかるとしよう」
ダニーが笑ってハリーらを激励する。Mr.ウルヴァリンはトントに握手を求めた。
「トント君、達者でな。私以外に「喋る黒猫」に出会えるなんて本当に嬉しかったよ」
(…まー、あんたの場合はロボットだからちょっと違うけど…またいつか会えるならハリーの言ってたように観光したいな)
「おおー!是非ともその時は案内させてくれよ!!」
機嫌が直ったMr.ウルヴァリンは満足そうにトントの背中を撫でた。トントはくすぐったそうにしつつ、満更でもない笑顔を見せた。
「…さ、諸君。準備はいいかな?」
アラン・スミシーは羽根を大きく広げてハリーたちに声を掛けた。ハリーとトントはアラン・スミシーの前に出る。
「ああ、頼む」
「よろしい。では…」
そういうとアラン・スミシーは此処に来たときと同じようにハリーをお姫様抱っこした。ハリーは恥ずかしそうにしつつ、トントに自分の腕の中に来るように促す。トントは困惑しつつもハリーの腕に収まった。
「ではダニー君、Mr.ウルヴァリン君。しばしのお別れだ」
「ああ、あんたも達者でな。アラン・スミシー」
「アラン・スミシー君。今度戻ってきたら是非とも私を訪ねてくれたまえ!」
「Mr.ウルヴァリン君。その時を楽しみしてるよ」
アラン・スミシーはダニーらに別れを告げると、羽根を羽ばたかせ、一気に上空へと飛び上がった。声を上げる間もなくハリーたちの姿は雲の向こうへと消えていった。アラン・スミシーの急激な上昇速度にダニーらは思わず呆気に取られる。
「…何というか感慨もなく、あっという間に行っちゃったな」
「…サイクロップス君、私は今、最高に感動しているよ」
「はあ?」
「自分と同じ容姿をした「喋る黒猫」に出会えたんだ。しかも二人だよ?おまけに異世界転移者と来た。これはストームやサラ・コナーに自慢すべきではないかね!?」
「…やめとこう…また怒られるぞ…」
興奮するMr.ウルヴァリンに対してダニーは溜め息を付きながら冷静に突っ込む。しかしながらハリーたちが向かった上空を見て、胸の中で一期一会の友たちにエールを送っていた。
……………………
(まだなのか!?想像以上にキツイぞ、これ!)
トントがハリーの腕の中でアラン・スミシーに声を掛けた。対してハリーは早くも意識が朦朧としつつある。だが、それでもトントを離すまいとしっかりと抱き締めていた。
「もうすぐだ!そろそろ光の渦が見える!」
アラン・スミシーの言葉と共に、遥か上空に光の渦が姿を現した。
(これが…異世界へ繋がる光の渦…なんて神々しく美しいんだ…)
光の渦を目にしてトントがポツリと呟く。アラン・スミシーは速度を緩めることなく、光の渦へと飛び込む。
「さあ、君らの仲間のいる場所へいくぞ!!」




