第79話 三匹の会議 その1
「まず私はこの世界の住人ではない。とある人を探してあらゆる世界を旅する放浪者だ。そこのハリー君とは2020年代の東京で出会ったんだ」
アラン・スミシーがハリーを指差して説明を始めた。ハリーはぎょっとしつつ、コクリと頷く。
「どうもハリー君は私をそこのトント君と間違えて声を掛けてきたらしい。聞くに時空転移装置とやらに巻き込まれて仲間と離ればなれになったそうだ」
「…ああ、アラン・スミシーのいう通りだ。てっきりトントと思ったからな」
(確かに同じ黒猫だし、よく似てるな)
「でも中身は全く違うよ」
アラン・スミシーはハリーとトントに向けてニッコリと笑った。それに対してMr.ウルヴァリンは興味津々でアラン・スミシーを見つめ、ダニーは怪訝な表情をしている。
「アラン君?だっけ。非常に興味深いのだが、何故此処へ来たんだい?」
「ちょうどハリー君に出会ったとき、別の世界へ移動するところだったんだ。お困りのようだし、ならばと思って誘ってみたのさ」
「…何というか…信じがたいな。科学的根拠のない、むちゃくちゃな話だ」
「そんなことはないよ、サイクロップス君。科学で解明されていないことなんか山ほどあるんだ。実に面白いじゃないか」
「…Mr.ウルヴァリン。お前さんは科学が産み出した尤もたる存在だろうがよ」
ダニーは頭を抱えるが、Mr.ウルヴァリンは構わずアラン・スミシーに話しかける。どうも当事者であるハリーとトントは置いてけぼりだ。
「あ、あの…すまない。とりあえず自己紹介だけしてくれないか?まだ俺も訳が分かってないんだ」
(そうだな、情報が多すぎて頭の処理が追い付かない)
ハリーとトントの訴えにアラン・スミシーとMr.ウルヴァリンは顔を見合わせた。そしてごもっともとばかりに、それぞれ自己紹介を始めた。
……………………
「という訳でお互い何者かハッキリしたね」
アラン・スミシーは一人納得したように頷く。ハリーとダニーは顔を見合わせつつ笑い合うが、まだ警戒が解けていないのかぎこちない。一方でMr.ウルヴァリンは鼻息荒く興奮している。
「いやー、長生きするもんだ。こんな貴重な経験が出来るなんて」
「AIに長生きもへったくれもあるのか?」
「そこは言わない約束だよ、サイクロップス君」
「…とりあえず此処が俺たち二人が知らない世界であることはよく理解できた。メトロポリスなんて目じゃないくらい発展した世界か…」
ハリーは周りを見回しながら感慨深げにしている。トントはハリーの肩に乗って少し考え込んでいた。
(ハリー、これからどうする?)
「そうだな…まずアリアの無事を確認しないと。後はグランシステリア王国に行く」
(どうやって?)
「…そこなんだよ…アラン・スミシーに頼むしかないよな」
ハリーとトントは相談しながらアラン・スミシーをチラリと見る。アラン・スミシーはMr.ウルヴァリンと談笑して親交を暖め合っているようだ。その横ではダニーが溜め息を付いていた。
「ウルヴァリンというのはアメコミの主人公の名前が由来なのかい?」
「そうなんだよ!ちなみに私はマーベルコミック派でね。そこのサイクロップス君はDCコミック派らしいんだ」
「へー、中々詳しいね。さすが未来のAIは違うな」
「いやいやそれほどでも。ところでアラン・スミシーというのは映画監督の匿名を表す意味だよね?そちらも中々洒落てるね」
「ハハハ、それほどでも」
楽しそうな二匹?に対して周囲との温度差は半端ない。このままでは埒が明かないとトントがハリーの肩から降りると二匹の前に寄った。
(お二人さん、盛り上がってるとこすまない。そろそろ我々は此処から移動しなきゃ行けないんだ。その為にどうしたらいいか相談させてほしい)
「おおー!そうだった。これはウッカリ!」
「ハリー君、トント君。置いてけぼりにして悪かった」
ようやく二匹がハリーたちに向き直る。するとハリーは再びダニーと顔を見合わせた。
「苦労するな」
「お互いにな」
(同感だ)
二人と一匹の間にそれとなく笑い声が上がった。




