第78話 再会あるいは邂逅
空から羽根の生えた謎の女が降りてきた。この異様な光景にトントは勿論のこと、ダニーとMr.ウルヴァリンも唖然としている。どうも二人にも理解できていない状況のようだ。
「サイクロップス君、これは新手のVRかね?」
「Mr.ウルヴァリン、VRにしたってゴーグルしてないだろ」
二人がやり取りしている横で謎の女性は微笑を浮かべている。ローブを全身に纏っているので分かりにくいが中々の金髪美女、しかもダニーという機械人間と並んでも遜色ないくらいの大柄である。
その美女の腕の中にいるのは顔こそ見えないが、男のようであった。男は気を失っているらしく微動だにしない。
「やっと見つけたよ。えーと…トント君はどちらかな?」
美女の言葉にダニーらは思わずトントを指差す。一方トントは腰を抜かしているのでその場から動けずにいた。一体何をされるのか。トントは美女の次の挙動に震える。
「君がトント君だね?」
(うっ…そうだが、あんた誰だ?)
「君の仲間に頼まれてね。君を探すために方々を回っていたんだ」
(な、仲間だって?それにどうして私の声がわかるんだ?)
トントは美女に疑問をぶつける。すると美女は腕に抱えていた男をゆっくり降ろした。
「心の声を聞くのは造作ないよ。このくらいは朝飯前だ」
トントは自信たっぷりな美女を怪訝な表情で見ていたが、男の顔が見えた瞬間、両目を見開いた。
(は、は、ハ、ハリー!!??)
美女によって横たわらされた男は確かにハリーだった。顔色こそ悪いが、息はしているので生きてはいるようだ。トントは急いでハリーの元へと駆け出す。
(ハリー!!私だ!トントだよ!)
トントはハリーの脳内に必死に呼び掛けた。ダニーとMr.ウルヴァリンもハリーの元へと近づく。
「ふむ。トント君の話を聞いた限り、この男性が飼い主のようだね」
「しかしいきなり空から降ってくるとは…こんなコミックみたいな話あるか?」
「サイクロップス君。マルチバースという言葉があるように色んな世界や宇宙があってもおかしくない。彼等も別の世界いや宇宙から来た存在なのかもしれないよ」
「そうかなぁ…」
ダニーたちが話す横でトントはハリーの体を擦ったり、顔を嘗めたりする。美女もしゃがむとハリーを撫でた。
「どうも此処へ移動する際に意識を失ったみたいだ」
(そんな…どうしたら…)
「大丈夫。そろそろ気づくはずだ」
トントの心配に対して美女は優しく答える。少し擦り続けると、ハリーから呻き声が上がった。トントは目を輝かせて、ハリーの顔を覗き込んだ。
「う、…うーん…、苦しい…此処はどこ…だ?」
ハリーがゆっくりと目を開ける。そしてトントと目が合うと驚きの声を上げた。
「ト、トント…!!?か!?」
(ハリー、そうだよ。私だよ!)
トントはハリーにスリスリして再会を喜ぶ。ハリーはイマイチ状況が飲み込めていなかったが、上体を起こすとトントを抱き締めた。
「夢じゃないよな?」
(それはお互い様だよ)
ハリーとトントが抱き合っている横でMr.ウルヴァリンが目元を拭った。ダニーの方は今一つ理解が追い付いておらず、まだ呆然としている。
「良かったね、トント君。飼い主との感動の再会だよ、サイクロップス君」
「いや…何が何やら…どういうことだ、これ?」
ダニーが頭を抱えていると先のローブ姿の美女が羽根を広げて自分を包み込んで繭状になった。そして羽根の中から光を発すると女性は黒猫の姿に変身した。これにはその場にいた全員が仰天して、一斉に美女が変身した黒猫に視線を向ける。
「フーッ。無事に再会できたようだね」
「………すまない。ちょっと説明してくれないか?全く持って今の状況を理解出来てないんだ」
「………うむ。私からもよろしく頼む」
「……あのぅ…俺も此処に来たばかりでよく分からないから説明してくれ」
(あのぅ…私からもその辺説明してほしいな)
その場の全員から説明を求められた黒猫だったが、嫌な顔をせずに「いいよ」と返す。
「少し長くなるけどね。その前に自己紹介だけしておこう。私の名はアラン・スミシー。以後お見知りおきを」
全員の注目がアラン・スミシーに向けられた。




