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第75話 トントと奇妙な二人

 一方でトントもまた時空転移装置の光の球体に飲まれた際、ハリーとアリアからはぐれてしまった。衝撃で意識を失ったトントはとある道端に倒れているのに気づいた。視界の先に街路樹とアスファルトで舗装された車道が見える。


 トントが立ち上がって辺りを見回すが、全くもって見知らぬ土地であった。考察するに都市部から離れた郊外の住宅街のど真ん中のように見える。良くも悪くも雑多なメトロポリスにはない何処か長閑な光景が広がる。



(ハリー?アリア?どこにいるんだ?)



 トントは周囲を散策しながらハリーたちに呼び掛ける。しかし近くにハリーたちがいるような形跡はなく、次第にトントは不安と焦燥感に駆られてきた。トントから脂汗が滲む。



(バカな…二人はどこだ?此処はどこなんだ?)



 トントが当てもなく歩いていると見たこともないような流線形の車や遥か上空を飛ぶ飛行機が視界に入ってきた。これにはトントも驚いて思わず足を止める。



(…なんだありゃ?…あんなもの…メトロポリスで見たことないぞ…!?やはり、此処はメトロポリスじゃない…。あの時空転移装置は眉唾物じゃなかったのか)



 トントは嫌でも見知らぬ土地にやって来たのだと自覚した。トントは足を止めて呆然とする。



(…どうしたらいいんだ?このまま此処で一生…)


「此処にいたのか!」



 トントが絶望していたとき、突然声を掛けられた。トントは驚いて辺りを見回した。が、何処にも声の主はいない。トントが首を傾げていると目の前に何か降ってきた。トントが衝撃で吹っ飛ぶ。

 気を取り直してトントがゆっくりと立ち上がると、視界に全身に青色の光沢が目立つ機械人形が現れた。いやよく見ると人形ではなく、人間のようだ。目には細長いバイザーを着けている。



(な、なんだコイツは!?人間…なのか?)


「やっと見つけたぞ。何処をほっつき歩いていたんだ?ミス・ジェーンが探していたぞ」


(え?え?何?私のこと?)



 目の前の機械人間に話し掛けられトントは更に混乱する。トントの戸惑いを余所に機械人間はトントをヒョイと持ち上げた。



(何?誰?私を何かと勘違いしてないか!?)


「おいおい、どうしたんだ?今日は妙に無口じゃないか」


(いやいやあんたこそ誰よ)


「…待てよ」



 機械人間は少し考えるとトントを降ろして目のバイザーに手を当てた。するとトントを眺める目のバイザーが光出した。光が止まると機械人間は溜め息を付いてトントの前にしゃがんだ。



「すまん、他人の空似だった。お前さんは生体反応があるから俺の相棒じゃなかったな」



 機械人間は納得したのか立ち上がると、何処かへと向かおうとする。



(…今のは一体何だったんだ?)



 トントが呆然としていると、不意に横から自分ソックリの黒猫が横切るのが見えた。



「おーい、サイクロップス君。呼んだかね?」


「そんな所にいたのか?Mr.ウルヴァリン!」



 先程の機械人間がトントの前を横切った黒猫に話し掛ける。というか黒猫と会話している。何だ?自分とは違って会話できる黒猫がいるのか?此処は本当に何処なんだ?


 周囲からの情報量の多さにトントは頭がフラフラしてきた。トントの横では機械人間と黒猫が会話を続ける。



「ミス・ジェーンが探してたぞ。そろそろ会議の時間だろ?」


「…?ああ、そうだった。いい天気だから散歩してたらスッカリ忘れてたよ」


「おいおい、また怒られるぞ」


「大丈夫。ストームなら上手く立ち回ってくれるさ」


「いや…そういう問題じゃないんだが…」



 機械人間は黒猫の言葉に頭を抱えた。黒猫は機械人間にまあまあと宥める声を掛けて、機械人間の肩に飛び乗る。



「ところでサイクロップス君。ジョンは元気かね?」


「ジョン…?ああハリーのことか。ま、元気にやってるよ。というか、そろそろ名前を覚えてくれよ。またナターシャに怒られるぞ」


「大丈夫だよ。ジョンも私に反応くれるから」


「だからそういう問題じゃないんだが…」



 トントは機械人間と黒猫の会話に思わず顔を上げた。聞き間違いではないはずだ。確かに機械人間はいった。「ハリー」の名前を。


 トントは急いで機械人間の足元にすがり付いて頭を擦り付ける。人違いかもしれない。しかし、トントにとっては藁にもすがる思いだ。すると黒猫がトントの様子に気づいたらしく機械人間から降りるとトントに近づいた。



「…?君は何だ?」


「あー…さっきMr.ウルヴァリンと見間違えたんだ。人違いならぬ猫違いだった」


「ふむ…サイクロップス君。どうやら何かこの猫は何かを訴えているみたいだよ」


「ん?どういうことだ?」



 機械人間が首を傾げると、黒猫がトントの目をじっと見つめた。黒猫の目が怪しく真っ赤に光る。トントは蛇に睨まれた蛙のごとく微動だにできない。その内に黒猫の目の光は消えて元の状態に戻った。



「…よし、これでいい。何か頭に思い浮かべてくれたまえ」


「?誰にいってるんだ、Mr.ウルヴァリン」


「目の前の黒猫君だよ。脳波を読み取る装置をストームに頼んで内蔵してもらったんだ。所謂実験段階だけど、役には立つはずだ」



 そういうと黒猫はトントを見てニッコリと微笑んだ。トントは顔をひきつらせながら適当に「此処はどこだ?」と頭に浮かべた。



「此処?此処は2052年のアメリカ、ロサンゼルス近郊だよ」


(!!!!??)



 トントの頭に浮かんだ質問について目の前の黒猫が答える。これに対し、トントは腰を抜かすかのごとく驚いて固まってしまった。

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