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第73話 ソイツの名はアラン・スミシー

「すまない…余りにも情報が渋滞し過ぎて頭の整理が追い付かない。少しずつ聞かせてくれ」



 ハリーが頭を抱えて目の前のアラン・スミシーに問い掛けた。アラン・スミシーはニッコリ笑って「どうぞ」と答える。



「あんたのことについて言いたいことは山ほどあるが、キリがないから止めとく。とりあえず此処がどこなのかだけでも教えてくれ」


「此処?此処は西暦2020年代の日本の首都、東京。のやや外れかな。少し雑多ではあるが、世界から見ると比較的治安はいい方だから安心してくれ」


「ちょっと待て…西暦?日本?東京?何だ、そりゃ?」


「おいおい…話は通じるのに年代や地理については全くなのか…こりゃ中々複雑だな。所謂パラレルワールド的なやつから来たのかな」


「パラレル…なんだって?」



 ハリーは聞いたことがない地名に首を傾げる。自分がいた世界とは似て非なる世界。ヘンリーのいっていた物資転移の法則はやはり事実だったのか。



「ところで君は何者だ?差し支えなければ教えてくれないか?」



 アラン・スミシーがハリーに尋ねる。ハリーはどうせ信じてくれないだろうと言い掛けたが、そもそも喋る黒猫の方が信じがたい存在なので少し考えてから話し出した。



「俺はハリー・ライナス。メトロポリスのダウンタウンにて私立探偵をしている。訳あって人探しをしていたんだが、何の因果か巻き込まれて此処に飛ばされてきたんだ」


「なるほど…その様子を見るに君は異世界転生者(チート)というよりも異世界転移者(ビジター)みたいだな。実に興味深い。その辺詳しく教えてほしいな。どうやって異世界からやって来たのか」


「いや…チートだのビジターだのよく分からんが…とにかく自分の意思じゃないんだ。本当に巻き込まれただけで…」



 アラン・スミシーの食い付き具合にハリーは圧倒されつつ、何とか平静を保とうとした。とりあえずアラン・スミシーにこれまでの経緯について簡単にではあるが説明する。とは言うもののアラン・スミシーへの警戒心はあるので決定的になるような事象に関してはボカシを入れた。



「時空転移装置ねえ…私も長いこと旅をしているけど、そんなもの聞いたことがないな。何でも物質転移を可能にする素粒子がその鍵何だって?」


「そうだな。本当にたまたまなんだが、ソイツを研究して装置を作り上げたのは俺の親父だったらしい。何というか運命の巡り合わせなのか、只の不運なのか…俺としてもどうしていいか分からないんだ」


「君の親父さんが?随分酔狂な人だな」


「いや自分の親父と知ったのもついさっきのことだったんだが…」



 ハリーは深い溜め息を付いてアラン・スミシーに愚痴を溢した。アラン・スミシーはふむと顎に前足を当てて考え込む。



「今、離ればなれになった仲間を探している。皆無事だといいんだが…」


「仲間というのは、私と間違えたトントという猫のことかい?」


「そうだな。それと異世界から来たという「亡国の女王」様だ」


「君も中々貴重な体験をしているね。一生に一度いや転生しても体験できるか分からないよ」


「いや、俺としてはもうこりごりなんだが…」



 興奮するアラン・スミシーにハリーは半ば呆れつつこれからのことを思案する。どうやって此処から元の世界へ戻るか、そしてアリアとトントを探せるか。時空転移装置のようなものがない以上、今のハリーにはどうすることもできない。



「はー…仲間と再会できず、元の世界に戻れない以上、俺は一生この世界で暮らさないといけないのか…」


「心配いらないよ。この世界は便利なもので溢れ返っている。当面の生活に不自由はしないはずだ」


「いやそういうことじゃない。俺にも向こうの世界での生活があるし、仲間の心配もある。此処に大人しく留まっている場合じゃないんだ」



 ハリーはアラン・スミシーに懇願するように訴える。するとアラン・スミシーが焦るハリーの顔を見てニヤリと笑った。



「ハリー君、君はとても運がいい」


「は?どういうことだ?」


「今、私と出会えたからだよ。私なら君の力になれる」



 アラン・スミシーがハリーにゆっくりと近づいた。ハリーは首を傾げつつ、アラン・スミシーの顔をじっと眺めた。

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