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第72話 ハリーと見知らぬ黒猫

 メトロポリス執政院全体を覆っていた時空転移装置の光に飲み込まれたハリーは意識を失い、何処かへと落ちていく感覚がした。


 死ぬ?


 よくは分からないが、光の中では五感を全く感じない。無の世界といった方がいいのだろうか。少なくともヘンリーのいっていた通り時空転移装置は本当に完成していたようだ。


 アリアは…トントは…無事なのだろうか…


 ハリーは朦朧とする中でただ二人に向けて必死に呼び掛けていた。



 ……………



「…う、…うう…」



 ハリーは激しい頭痛を覚えてゆっくりと目を開いた。ボンヤリと見えてきた視界の先には雲一つない青空と回りには雑多な建物が並んでいる。頭痛だけではなく全身に痛みが走るが、ハリーは徐に体を起こした。


 良かった。目も見えるし、声も出せる。体は何とか動かせるようだ。が、此処はどこだ?


 ハリーが周囲を見渡すとそこは雑居ビルが立ち並ぶ人気のない路地裏だった。ハリーは路地裏のど真ん中で倒れていたようだ。

 ハリーは服に付いた泥や埃を払うと、ヨロヨロと立ち上がった。


 どうやら時空転移装置の暴走によって生じた光に飲まれて別世界とやらに飛ばされたみたいだ。正直信じがたいが、アリアやケヴィンの話を聞くに自分の置かれた状況も彼らと同じだと言わざるを得ないだろう。



「アリアは?トントは?」



 ハリーは二人の姿を探すべく、当てもなく路地裏を歩き始める。少し経った頃、人気のある大通りが見えてきた。多くの人や車、バスのようなものが確認できる。しかし…



「?何だ?あの文字は?それにアジア系か?…皆やたらと小さい板みたいのを持って歩いているみたいだが…」



 ハリーの視界に入ったのは黒髪をしたアジア系の人々がメトロポリスと同じような街並み…いやそれ以上に発展した街を行き交う様子だった。それに街に飾られた看板は見慣れぬ文字が並び、所々漢字が混じっている。これはもしや…



「…ジ、ジパング?…まさか!」



 ハリーは驚いて街を見回す。自分と同じような人々もいるが、圧倒的にアジア系が多い。しかし極東の地であるジパングがメトロポリス以上に発展している話などハリーは聞いたことがない。やはり此処は自分の知る世界ではないのか。



「アリア…トント…どこにいるんだ?」



 現在の状況に混乱しつつもハリーはとにかく二人を探すことにした。歩き始めて少し経った頃、ハリーの目の前を一匹の黒猫が横切った。



「トント!」



 ハリーは黒猫に向けて呼び掛ける。しかし黒猫は振り返ることなく、一目散に路地裏へと走っていく。ハリーは黒猫を追い掛けて、もう一度呼び掛けた。



「トント!どこへ行くんだ!?」



 ハリーの呼び掛けを無視して黒猫は狭い路地を抜けていく。もしかしたら他人の空似というやつなのか?ハリーは疑心暗鬼になりつつも、一縷の望みを懸けて黒猫を追い続けた。



「トント!」



 ハリーは路地の行き止まりまで只管追ったが、そこに黒猫の姿はなかった。ハリーは愕然として膝を付く。



「トント…やはり見間違いだったのか…」



 ハリーは深い溜め息を付いて立ち上がろうとすると、背後から声が響いた。



「私に用かね?」



 ハリーがハッとして振り返ると先程追っていた黒猫が立っていた。ハリーは目を丸くして周囲を見回す。が、人らしき影はない。



「私をずっと追い掛けていただろ?でも私はトントなんて名前じゃないよ」



 ハリーの目の前の黒猫がハッキリと喋った。ハリーは驚きの余り腰を抜かした。



「しゃ…喋った?猫が…?脳内じゃない…直に話し掛けてきた…?」


「…私が見るに君はこの世界にいるべき人間ではないな。何者だ?」



 黒猫はハリーを睨み付けて警戒しながら歩み寄る。ハリーは呆然として言葉を返すことができない。


「敵か、敵じゃないか。それだけでも教えてくれ」


「…俺は、さっき初めて此処に来たんだ…そもそも此処がどこかも知らないし、あんたが何者なのかも分からない…」


「…ほう…なるほど…もしかして君は異世界転生者(チート)かな?」


「はあ?」



 黒猫の言葉にハリーは更に目を丸くした。異世界転生者(チート)って何だ?

 ハリーが口をパクパクさせていると黒猫がハリーの足元まで来た。



「ふむ。まだ状況が把握できていないか。ま、敵じゃないなら自己紹介くらいはしておくとしよう。私はアラン・スミシー。訳あって黒猫の姿をしている。君と同様私も本来此処にいるべき存在ではない」



 黒猫ことアラン・スミシーがハリーを見てハッキリと語った。

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