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第68話 宣戦布告

「何がおかしい!一大スキャンダルだ?ふざけるな!あんたのせいで俺もマリアも…人生をめちゃくちゃにされたんだぞ!」



 激昂したハリーがヘンリーの胸倉を思わず掴む。対してヘンリーは平然とした態度でハリーを見つめていた。アリアがハリーとヘンリーを引き剥がそうと間に割って入る。



「やめて、ハリー!こんなことをしても意味がないわ!」


「くっ…こんなクソヤロウが実の父親だと?だったらそこら辺の飲んだくれが父親だった方がよっぽどマシだ!!」


「中々言ってくれるじゃないか、ジュニア」


「俺をジュニアと呼ぶな!」



 ハリーはヘンリーを突き飛ばし、トントの移動鞄を持つと後ろへ向き直った。そして深呼吸して少し落ち着くとアリアに向けて呟いた。



「もういい。これ以上奴と話すだけ無駄だ。いこう、アリア」


「何処へ?」


「…時空転移装置のとこだ。今はあんたを元の世界に戻さないと…此処にあるのか知っているか?」


「ええと…確か隣の棟だったと思う。ジョーカーに案内されたとき、渡り廊下を通ったはずだから」


「よし、いこう」



 ハリーがアリアと共にヘンリーから去ろうとすると、いつの間にかヘンリーと同じ黒いローブに身を包んだ一団が自分たちを取り囲んでいることに気づいた。ハリーとアリアが揃って振り返るとヘンリーが余裕の笑みを浮かべて歩み寄ってくる。



「何処へ行こうというのだね?お二人さん」


「…やっぱり簡単には通してくれないわよね」


「本来であれば抹殺対象だったのだが、グランシステリア王国の王位継承者と私の息子ということで、もし私の仲間になるなら命だけは助けようと考えていたのだ。此処に来て折角のチャンスを棒に振ることはあるまい」


「誰が貴方の仲間になんかなるもんですか!」


「随分勝ち気なお考えですな、アリア女王陛下。今置かれた状況をよくご覧なさい」



 ヘンリーが右手を上げるとハリーたちを取り囲んだ一団が一斉にローブを投げ捨てる。ローブの中から先日ハリーたちを襲った影たちが現れた。

 影たちは両手の籠手から鋭い鉤爪を射出させる。影たちの目は不気味に光輝き、まるでリバーサイドパークで対峙したケヴィンを彷彿させる。



「『ジョーカー』とアンブロアのお陰だ。まさかの副産物だが、此処までの傑作が出来上がるとは思わなかったよ」


「副産物…?」


「あの素粒子の力だよ。物質転移だけでなく、特定の薬物と合わさると人体強化に効果があることが分かってね。私としては想定外だったが、結果としては万々歳だよ」



 ヘンリーが満足げに笑う。ヘンリーの後ろから影たちが前に出てきてハリーとアリアに更に迫った。ハリーとアリアは背中合わせになって影たちを見据える。



「さあどうするかね?この場で八つ裂きにされたいかね?」


「チッ…白々しいヤロウだ。端から俺たちを生かして帰すつもりはない癖によ」



 ハリーがヘンリーを睨んで悪態を付いた。アリアも影たちの隙を念入りに観察して、突破口がないかを考えている。



「さあ答えは?」


「「ノー!」」



 ハリーとアリアが同時に叫ぶ。ヘンリーはやれやれと首を振ると、影たちに二人を襲うよう合図を送った。

 と、その時執政院の外から凄まじい爆音が響いた。ビルの分厚い壁に覆われていても耳を塞ぎたくなる程の大きさである。



「!?何事だ!」



 爆音に驚いたヘンリーは影たちに一旦攻撃を止めさせ、外の偵察に何名かを送る。ハリーとアリアも耳を塞ぎながら、音の正体について思案した。



「し、執政議長…!緊急事態です!」



 先程偵察に送った影の一人が慌てふためいて報告に戻ってきた。影の慌てようから重大な事が外で起きたと予想できる。



「て、敵襲です!」


「敵襲だと!?何者だ?」


「それが…モルトシオネ、スカルスノフ、蔡一門と思われるマフィアの連合軍です!既に完全武装で執政院のビルを取り囲んでおります!」


「何だと…?奴等が…バカな…!」


「先程の爆音は執政院のビルの正門にロケット砲が撃ち込まれたものと思われます!」



 思わぬ展開にヘンリーの顔が歪む。まさかの事態に驚いていたのはハリーとアリアも同じだった。



「本当に…仕掛けてきやがったのか…」


「これって…これからどうなるの…?」


「血で血を洗う…執政院とマフィアの全面戦争の始まりだ…!」



 ハリーは顔面蒼白になりながらアリアに説明した。

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